表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/17

お買い物の時間

 朱里(あかり)に連れられ、付いた場所は大型のショッピングモールだった。駅近くに設計されている割には、雪のせいなのかあまり賑わっていない。ショーウィンドウにも、今が夏なんだということを思わせる水着を着た、子供のマネキンが並んでいる。

 そのちぐはぐさ加減が、少し可笑しく思えた。


「ガラガラだね」


 中に入る前に百合香(ゆりか)ちゃんがそう呟いた。その気持ちはわかるが、突然の大雪で外に出る方が普通じゃないと思う。大抵は必死になって冬ものを引っ張り出して、暖を取るものだ。


「まずは家具類から揃えましょうか。ここニ○リがあるんで」

「僕の世界にもあったぞその名前。もしかしなくても、名称自体は同じだったりするのか?」


 異世界だからといって、全てが全て違う訳ではないのかもしれない。名称が同じなのは、正直助かる。


「そうですね。比較的お兄ちゃんがいた世界と変わらないと思いますよ? ただ幼女しかいないってだけです」


 それが一番の問題だとは思うけど。この年頃の女の子しかいないから、皆姿の割にはしっかりしているのかな。きっと教育の方法もかなり違っていうのだろう。


「……百合香ちゃん」

「なんです?」

「百合香ちゃんはどこまで勉強が進んでいるのかな?」


 唐突な質問に、百合香ちゃんは首を傾げたが、少し考えた後に「数学Ⅰまでかな」と言った。年上としての尊厳が守られて少しだけ安心する。どうやら、百合香ちゃんくらいの年齢では、中学一年生の問題をやっているようだ。


「ちなみに私も同じです。よかったですね、お兄ちゃん」


 僕の考えを見抜いてか、朱里はニンマリと笑顔を見せた。こいつは勉強云々よりも、その勘の鋭さをどうにかしてほしいところだ。


 中に入ると、当たり前だが暖房が入っていた。いくら着こんでいたとしても、比較的薄着に入る部類しか着ていない僕たちなので、外はかなり寒い。

 寒暖差が激しいので、指先が意識を持ったみたいにジーンと震えていた。滞っていた血がちゃんと指先まで向かっている証しだろう。ただ僕はこの感覚が好きではない。


「さすがに熱いね」

「くっついているからだと思いますけどね。早く離れなさい」


 朱里がマフラーを外して、自分のものを百合香ちゃんに巻いていく。完全に顔が隠れてしまった百合香ちゃんは、「熱いよ~」と言いながら笑っていた。ただ現状その大きなマフラーをどこか別の場所に置くことはできないので、百合香ちゃんはこのショッピングモールを出るまではその姿と言うことになる。

 最悪、僕が腕に持っておくか。


 自分のマフラーを腕に持って。百合香ちゃんのは彼女がぐずるまでは放置することに。

 中に詳しくない僕は、大きな案内図の所に行き、このショッピングモールの中に何が設備されているのか確認した。

 思ったより僕のいた世界と酷似していて、飲食店も服屋も書店も同じ名前だった。


「とりあえず3階にいきましょう。ニ○リがあるのはそこなので」

「おう」


 朱里がエスカレータに向かうので、その後ろについて行く。買い物なんて久しくしていなかったので、少しだけ楽しみだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ