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風呂場の攻防戦

「それだけは譲れない」

「い~や譲って頂きます。なんでですか? 幼女と一緒にお風呂に入る絶好の機会じゃないですか? それも裸で! 肌と肌を擦りつけて! そんないやらしく夢のある空間に今あなたは行こうとしてるんですよ!?」

「どこのセールスマンだお前は? それにそんなことしたらR-18だろうが。一般じゃなくなったら全ておじゃんなんだよ。ギリギリを攻めろギリギリを」

「そっちこそなんの話しをしてるんですか?」


 俺が捕まるか捕まらないかの話しをしてるんだよ。


「私は婚約者ですよ? 一緒にお風呂に入るのに、何の問題もありません。むしろS○Xだって可能なんです!!」

「大きな声で女の子が恥ずかしいセリフを吐くじゃない!」


 ずっと思ってたけど、お前とか百合香ちゃんとかオープンすぎるぞ! もうちょっと慎みを持ってくれ!


 僕たちがはそんなやりとりをしつつ、脱衣所の前で腕の引っ張り合いをしていた。片や入るのは遠慮したい僕と、片や入るのを促す朱里(あかり)。相手は幼女なのでハッキリ言って、僕の方が力は強いし簡単に引き剥がせるのだが、そうすると朱里が怪我しそうでとても怖いので、なるべく振り払わないようにしている。

 そのせいで無駄な攻防戦を繰り広げるはめになったがな!


「じゃあわかりましたよ。この水着のまま入りましょう。お兄ちゃんは全裸ですが」

「それが一番の問題だろうが。どこの風俗店だよ」

「えっ? 入ったことあるんですか? 汚らわしい」

「年齢考えろ、未成年だ」


 まあ僕はそんなお店とは無縁だろうけどな。そもそも行きたいとも思えないし。


「別にいいじゃないですか裸を見られるくらい。私は今この瞬間にでも一糸纏わぬ姿になってもなんら問題ありません。むしろちょっと興奮します」


 今こいつが百合香ちゃんと友達な理由の一端が見えた気がする。真顔で何言ってんだこいつ。


「それにお兄ちゃんの一物が見れるなんて……よだれが」

「それ以上、僕を変な目で見るなこの変態!」


 朱里の視線が僕の股に集中していたので、体を捻って見えないようにする。

 百合香ちゃんが強烈だったから忘れてたけど、こいつもこいつで変態だったのを忘れていた。ただの結婚厨じゃなかった。……結婚厨ってのもそれはそれで変人だけど、まあそこは目を瞑ろう。

 今は俺の貞操が大事だ。


「万が一にでも一緒に入ったとしよう。お前は何もしないと誓うか?」

「普通そういうのって女が男にいうセリフですよね?」

「茶化すな。できないなら一緒には入らん」


 朱里がぐぬぬ…とでも効果音がでそうな程、黙ってしまった。恐らく次の一手を考えているのだろう。だが僕は、絶対に無防備な状態では入りたくない。キスくらい事故を装ってしそうなんだもん。俺のファーストキスがこんな幼女だなんて認めない!


「わかりました。その条件を飲みましょう。ただし私は裸でいいですよね!?」

「駄目といいたいところだが、お前のなら別に裸を見てもなんとも思わんからいいぞ」

「なんでそう男っておっきい胸が好きなんですかね~。小さくたって需要はあるんですよ?」

「ロリコンとかにな」

「お兄ちゃんはロリコンでしょうが」

「断じてロリコンではない」


 そもそも、お前くらいの子供なんて、いいとこ妹ぐらいにしか思えん。そんな奴に欲情するか。


「まあいいでしょう。一緒にお風呂に入れるのなら、今回は目を瞑ります」

「今回限りだからな」

「次回はもっと親密になったときに行いましょう!」

「だから今回限りだって!」


 お前が駄々こねるから、しかたなく入ってやるだけなのに。一度入ってしまうと、こうやって調子づくだなこいつ。今度から気を付けよう。


 結局、僕の条件を飲むことで、朱里とは一緒に入ることとなった。

 なんだかんだいって、僕って甘いのかな~。

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