求めてもいない地獄のまくあけ
ちょっとエッチでロリコンなものが書きたくて書きました!
不定期で更新する予定ですので、過度な期待はしないようにお願いいたします。
ことの始まりは、まるでライトノベルの出だしのようなことだった。偶然にも、朝の登校中に車に轢かれそうになっていた小学生の女の子を救ったのだ。代わりといっては何だが、僕は車に轢かれてしまった。轢かれた瞬間までは鮮明に覚えていたのだが、それ以上のことは覚えていない。ただ漠然と、死ぬのかと思っただけだった。
思えば女子はおろか、友達もできなかった人生だったけど。二次元に生きた毎日はそれはもう楽しかったと言えよう。もしも生まれ変わるなら、そんな二次元の世界に行ってみたい。そう願った。願ったのだ。
それが全ての原因。いや、その小学生を助けたことこそが全ての原因だったのだ。
因みに。僕自身、異世界転生ものは好きではない、転移ものも同じくだ。勿論それでも面白い作品があるのはわかっているが、もしいざ自分の身に起こってみろ? ここが異世界か~とか言ってる暇ないから。パニックにならない主人公たちの順応能力の高さは異常だからね?
本当。ありえない。
そんなありえない出来事が、なぜか僕に起こっている。
「童貞さん!」
「……」
頬が引きつる。目の前の小学生に童貞と言われなんという気持ちになっているのか、自分でも正直わからない。というより、気持ちがギリギリ着いて行っていない感じが、さらに気持ち悪さを醸し出している。
彼女は俺が助けた小学生の女の子。名前は朱里というらしい。そしてここは……なんと言ったらいいものか。宇宙の中のような、それなのに足が付き、空気もある。そんな夢の中を彷彿とさせる空間……いや、夢だ。きっと夢なんだこれは。
「童貞さん童貞さん。どうしました? 高校生にもなって彼女の一人も作れず、キモオタのレッテルを張られて一人寂しく青春を謳歌している童貞さん。顔キモいですよ」
的確に心を抉って来るんだけどなんなのこの子!! オタクだからって馬鹿にしていいとでも思ってるの!? 駄目だからね! オタクだって人間なんだよ! 人の心があるんだから! もっと繊細に扱ってください!
泣きそうになる心を必死に堪え、僕は朱里に向き直る。
「とても月並みなことを君に聞くけどいいよね?」
「土下座するなら考えます」
んんんんんっ!!!!!! なんだこのガキ超ムカつくんですけど!! なんの悪びれもなく人のこと馬鹿にしやがって。これだから成長してないリアル子供は嫌いなんだよ! 親の顔が見てみたいね!
「どうしたんですか童貞さん? 顔引きつってますよ?」
にんまりと愛されフェイスで笑顔を振りまく朱里だが、引きつってるのはお前のせいなんだよ。クソ。だが子供相手にキレてもカッコ悪いだけだ。ここは紳士に大人な対応を――。
「うわ~。視線だけで孕ませそうなキモさですね~」
「あああああああぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!! もう限界だクソ野郎! なんでそう的確に人のを怒らせるようなことが言えるんだお前はぁぁぁ!!! オタクだって人なんだよぉぉぉ!!!」
「そのキレかた意味不明ですね童貞さん。でもいいでしょう。それくらい幼女にキレられるなら、この先生きていけると思いますよ」
「ああ! なんの話だ!」
「これから住む、童貞さんの世界の話ですよ。ではお近づきのちゅー……」
朱里が急に抱きついてきたかと思えば、僕の服を掴んでピョンピョンと飛び跳ねている。何してんだこいつ?
「ちょっとしゃがんでください童貞さん」
「その童貞さんってのやめるなら、しゃがんでやるよクソガキ」
「じゃあなんて呼べばいいんですか? 童貞さん」
「名前呼べ。浅木昭晃だ」
「じゃあ昭晃お兄ちゃんですね童貞さん!」
「だから童貞さんっていうんじゃねぇよクソガキ!!」
本当にこいつと会話が成立しねぇ!
「じゃあクソガキって言わないでください」
朱里はぷくーっと頬を膨らませる。やはり子供と言うだけあってほっぺはぷにぷになのだろう。餅みたいに伸びてる。可愛いだなんて絶対に思えないけど。
でもそうだな。僕が名前で呼ばれるのに、僕がクソガキって言ってたら何も解決しないな。
「わかったよ。朱里でいいか?」
「朱里様って言えよ童貞昭晃お兄ちゃん」
「お前はクソガキで充分だなクソガキ」
こいつとは根本的な部分でそりが合わないみたいだな。
「とりあえずしゃがんで!」
「ああもうわかったよ!!」
服を引っ張られるのは嫌なので、仕方なくしゃがむと、そのままほっペにキスされる。嫌悪感に背筋がゾワリと逆立ち、サッと立ち上がって朱里と距離を取る。
「おま――」
なにっ! ……すげぇ眩暈が。なんだこれ?
突然の酩酊感に足が覚束なくなり、そのまま意識を手放した。
~~~
目を覚ますと。そこはガチで雪国なんですけど!?
えっ!? 何!? マジ寒いんですけど! 俺はいったいどうなったの!?
雪は降っていないものの、一面は銀世界。太陽の照り返しが眩しく、起き上がった僕はその眩しさに目を細めた。
「何が本当にどうなってるんだよ?」
体が震え、寒さで手足の先が悴む。このままここにいたら寒さにやられてしまう。
不意に、僕の顔を覗く人が居た。もちろんそれはあのクソガキ。
「おはようございます。童貞お兄ちゃん!」
「昭晃お兄ちゃんだこのクソガキ」
朱里は、こんな雪の中だと言うのになぜか紺のスクール水着にマフラーというミスマッチな格好で現れた。寒くないのかこいつ。
「寒そうですね。お兄ちゃん」
「ようやく童貞を外したか。ああまあ寒いよ。でもお前の方が寒そうで見てられないんだが」
「ええまあ寒いです」
ガタガタと震えていた。服を着ろ服を。
「うい~、ちょっと失礼」
朱里は急に僕に抱きついて来て「ぎゅっとしてください」、とか訳のわからないことを言ってきた。とりあえず目の前に風邪をひかれても面倒なのと、僕も寒いので人肌は正直助かる。こんな奴でもだ。
世に言うアスナロ抱きという抱き方に落ち着いた僕たちは、妙な格好のまま状況確認をする。
「なんでこんなに雪なんだ?」
「今この世界が冬だからでは?」
「なあ……本当に僕はどうなったんだ? いろんなことが起こり過ぎてもうついていけないんだが」
「ここはいわゆる、お兄ちゃんが居た世界ではなく、異世界です」
「そうか~、ここが異世界か~」
あ~世の中の主人公の皆さん、先ほどはディスってごめんなさい。ここが異世界か~ぐらいは、普通の人でも言えるみたいです。
「もう異世界でもなんでもいいよ。なんか諦めたよ。それで、僕にどうして欲しんだよ?」
「私と結婚してください」
「ああ結婚――」
はぁ……結婚?
「いやそれ犯罪だから!」
「おや、童貞の癖に私の求婚を断るんですか?」
「誰だって断るわそんなの! まだ捕まりたくねぇもん!」
「安心してください。ここの人たちは、お兄ちゃんを除けば皆幼女なので!」
なんか不穏な一言が聞こえた気がしたが……。
「なんつった?」
「お兄ちゃん以外、皆幼女ですよ?」
「冗談だろ?」
「まっさか~。冗談な訳ないじゃないですか。童貞お兄ちゃん♡」
ニッコリの笑う朱里の対して、引きつった笑みを浮かべる僕。
どうやら僕は、とんでもない場所に来たみたいだ。