進まなくては
テーブルの向こう側には皇太子。今部屋には私達2人しかいない。緊張して顔をよく見れなかったが改めてよく見ると端正な顔立ちをしている。ダークブラウンヘアに優しい緑色の瞳で鼻筋がスッと通っている。これはどんな女でも惚れる顔だ。微笑まれるとこっちが恥ずかしくなる。こっち見ないで!
「先ほどは失礼しますしました。いきなり2人きりにしてくれと。少々驚いてしまいまして」
「いえ。こちらこそ、びっくりですよね。いきなり帰ってきたら嫁だとか言われて。私も何がなんやら…」
「フェリクスから聞きました。父が勝手に召喚の儀を行ったのことですね。私は反対していたのですか…王宮を留守にしている間にしたらしくて…本当に申し訳ありません」
彼は頭を下げた。驚きだ。皇太子が頭をさげるなんて。
「頭をあげてください。確かにいきなり連れてこられたけど皆さんよくしてくださいましたし」
「それなら良かった。何が不自由なことがあったら遠慮なく言って下さい。」
皇太子良い人じゃん!何かしらの文句を言われても仕方ないと思っていたがこっちの心配までしてくる。
「でも、あの、結婚というのはちょっと……皇妃とかそういうのも私には無理です。」
ついに言った!ここわ流されてはいけない。しっかり自分の意思は伝えないと。
「はは、そうですよね。」
良かった。話のわかる人で!
「でも、それではみなは納得しないでしょう。」
確かにただの結婚じゃない。国の運命がかかってるんだ。納得するはずがない。
「そこで提案があるです。」
提案?
「はい、なんでしょう」
「知らないもの同士相手を知る必要があります。私と生活してお互いをよく知るのは」
お互いを知ることは必要だと思う。
「でも、それでも無理だった場合はどうするんですか?」
そう聞くと彼は困ったように笑った。
「まだ、考えてません」
そんなんでいいの?
「いい考えを見つけるのも含めて一緒に暮らしてほしいのです。」
「分かりました。」
悩んでばかりじゃ良くない。彼は私と向き合おうとしてくれる。私もかれに応える義務がある。できる限りのことはしよう。
「ありがとうございます」
爽やかに笑う皇太子。
こんな人と一緒に過ごすなんて身が持つだろうか…
読んでいただきありがとうございます。