優しさが辛い
本本本本…机の上には大量の本が置かれている。確かに勉強したいと言ったけどこんなるとは思わなかった。どうやら花嫁さん修行をすると捉えられたらしい。家庭教師やマナー講師も呼ばれている。私はどちらかと言えば余り勉強が好きな方でもないし読書家でもない。
勉強したいなんて言わなきゃ良かった。が、すでに遅い。みんなすごく喜んでる。すごい笑顔でこっち見てる。
「流石です。巫子様!もう、巫子としての意識をお持ちとは!」
ほらこんなと言う。やっぱりやめますとは言えない。だけどちゃんとこの世界や国についての知識はついた。
ウィルド帝国。この世界の列強の1つであり多くの魔法使いを抱えている。貴族と平民の階級制度がある。あまり隣国と仲はよろしくないらしくいざこざも絶えない。
また何百年に一度異世界から巫子を召喚している。巫子の召喚は難しく事故も多い。だか確実に国を安定に導けるのでこの国の人は巫子を切望している。皇帝の支持率にも繋がる。
「一人の犠牲はみんなの幸せか…」
崇められてる分犠牲というと違うのかもしれないけどやはり気分は良くない。誘拐当然のことをされている。
「巫子様、お勉強ははかどっていますか?甘いものをお持ちいたしました。」
エドラさんがお菓子を持ってきてくれた。ここにきて良かったことはお菓子が美味しいことだ。それにエドラさんの淹れてくれるお茶もとても美味しい。このおかげで私は落ち着いていられるんだと思う。
「ありがとうございます。エドラさんの淹れてくれるお茶とっても美味しです。」
「身にあまる光栄です。」
優雅な立ち振る舞いに惚れ惚れする。歳は私の母と変わらないくらいだ。でもすらっとして軽やかな動きは貴族なんだと改めて実感させられる。いいな〜淑女って感じ。私には真似できなそうだ。
「お勉強は順調ですか、巫子様。」
「げ、フェリクスさん…」
せっかくいい気分だったのに…見たくない顔が…
「今ちょうど休憩中でして…」
だから早く出てけとは言えない。
「あまり無理をなさらないでくださいね。無理をして体調を崩されると今後の予定に差し支えが出ますので。」
労られてるのか嫌味を言われてるのどっちなんだろうか。
「机に向かっているだけでは退屈でしょう、どうでしょうダンスの練習もされては」
「まぁ、素敵」
ダンス?体を動かしたりするのは好きだからその提案は嬉しいけどこの場合ダンスとは私が踊ったことのあるダンスではない。社交ダンスの部類に違いない。
「分かりました。」
「おや、聞き分けのいいようで」
いや、やれやワレって顔で見てますよ。
一通りのレッスンを受けてみたが軽く汗をかけて楽しかった。
「巫子様はダンスが上手ですね。」
「体を動かすのは好きなんです。」
「まぁ、やっぱり宰相様の考えは当たっていたんですね。」
宰相?どういうことですかエドラさん。
エドラさんが言うには突然勉強を始め周りは喜んでいるがフェリクスさんだけは、彼女はそんなこと好かないでしょう。ストレスが溜まり体を壊すのは目に見えてます。ダンスでもやらせれば疲れて落ち着くでしょう。
とのこと。見透かされていたとは、
「パーティーまで大人しくしてろってことですかね。」
「きっと宰相様なりの優しさですわ。」
確かに彼のおかげで良い気分転換になった。フェリクスさんが良い人なの悪い人なのだろか。
でもみんなは私に良くしてくれる。それは私が巫子だからでもあるが優しくしてくれる人たちを悪くは思えない。
いやいや、ダメでしょ、絆されちゃ。私を勝手に連れてきた人だよ、皇太子と結婚しろとかいう人たちだよ。
皇太子に会えばこの気持ちはなくなるだろう。はっきり言うんだあなたとは結婚出来ないと。
あともう勉強は止めよう。