まだ、死にたくないです。
「私は22年生きてるけど監禁なんか生まれて初めてだよ。異世界に飛ばされるのもはじめてか。人生ないが起きるかわからないね。
ねぇ、デニス君」
「…………」
答えたくれたっていいじゃん。ここに連れてこられて1日が経過してる。危害が加えられる様なことはないが暇でしょうがなかった。監視としてデニスという青年がドアの横に立っている。18か19ぐらいだ。伊吹変わらないぐらいだ。時々話しかけるが頷きはしてくれるものの喋ってくれる気配はない。悲しいね。
だけど彼のおかげでこの国の大体を知ることができた。皇帝が国を治め貴族や騎士、魔法使いがいる。まるでおとぎ話の世界で夢じゃないかと疑った。小さな窓からは昔のヨーロッパの様な景色が見える。綺麗な景色だ。そして私以外にも飛ばされた子がいること。その子は国を繁栄させるための巫子として連れてこられたらしい。それって誘拐じゃんと言いそうになったが国のためと考えれば小さな犠牲なんだろう。せめて私も巫子だったらな。
「私は巫子ではないからこんな扱いか。しかもなんで来たって思われてるよ。私が知りたいよ。そんなこと」
「……………」
「まだ、死にたくない…」
「…………………」
彼に聞いても怒りをぶつけようとしても無駄なのはわかってるでもこうでもしないと耐えられない。私は彼を睨み彼は無表情で私を見ている。部屋の中は妙な沈黙が続いた。
「あまりデニスを虐めないでくれないか」
沈黙を破ったのはロベルトという男だった。私をここへ連れてきた人物で部下からは元帥や伯爵とか呼ばれていた。私の父とそう変わらない年だろうが大柄で筋肉質な体型でそして厳つい顔つき、しわが厳つさに拍車をかけている。
「腕はもう大丈夫かね」
「痛みは引きましたよ。青タンができたけど」
ここに連れてこられている途中彼に腕を掴まれていた。彼はあまり強く掴んでいなかった様だが体格の違いから私にはもの凄い痛みが腕にきた。痛いと訴えて腕を確認してみると赤く腫れ上がっていた。周りの兵士もびっくりしていた。すまない、そんなに強く掴んだつもりはなかったんだがと、謝ってきた。
「あの時はすまなかった。女だから手錠もいらんと思い素手でやってしまった。」
手錠の有り難みがここにきてわかった。こっちに飛ばされて一生ないだろうということばかり続いている。
「腕を心配してきたわけじゃないんでしょ」
「あぁ、お前の処分が決まった。一緒に来てもらう。」
血の気が引いてくのがわかった。一体私は今どんな顔をしているのだろう。2人の顔からは哀れや同情の表情が見える。
今度はちゃんと手錠を付けてくれた。罪人のようだ。腕を掴んでくれても構わないって言ったら掴んでくれだろうか。そんなことよりもどう命乞いをするか、考えることが多すぎて頭が回らない。同時に怒りも湧いてきた。
感情的になったら終わりだ。落ち着け自分。
連れてこられたのは玉座があり、そこには王が座っていた。周りにも大勢の人、はじめ見た人達がいる。
「まだ、死にたくないです。」
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