勉強させてください
部屋に連れて行かれた後、私は宰相のフェリクスさんから詳しい説明を受けた。私は巫子として召喚され皇太子と結婚しこの国を繁栄させる役目があるらしい。それが巫子の一番の務めであり、他にも祈りだとかいろいろあるらしい。
「結婚以外の巫子の務めはします。」
結婚とか冗談じゃない私はまだ18だ。それに皇太子と言えど知らない相手と結婚なんで無理だ。
「結婚が大事なのです。子を成し巫子の力を持った子が王になりこの国を治める。これが我々が求めることなのです。」
こんなやり取りが数回続いた。しかも元の世界には帰れないらしい。
「結婚なんて嫌です。なんで私がそんなことなきゃいけないんですか!」
怒りと涙が混じる。家族に会いたい。友達に会いたい。元の世界に帰りたい。そう思うばかりだった。
宰相は何やら忙しそうに出て行ってしまった。彼がいなくなると涙が止まらなくなった。
「巫子様、目が腫れてしまいますよ。お使いください。」
女官長のエドラさんがハンカチを差し出してくれた。ここに来てから側にいてくれる。わたしのお世話係りだ。
「ありがとうございます。私これからどうなんですか」
エドラさんはこれから私のお披露目パーティーがあると言った。それは皇太子との婚約披露パーティーでもあるらしい。
「皇太子様は今地方を訪問しております。帰ってくるのは3日後、パーティーはその2日後のことです。」
皇太子…どんな人だろう。結婚を断る最後の望み。出来れば話のわかる人ならいいな。侍女や女官たちの話から察すると人望はあるらしい。しかし問題がある。皇太子は私が召喚されたことを知らないらしい。どうやら王様が勝手にやったことだ。皇太子はどんな反応をするだろう、帰ってきたら父親が勝手にお嫁さん召喚していたなんて。私なら怒る。皇太子からはいい噂をよく耳にしたが流石にこんな事されたら怒るだろう。怒りが私にも向けられることは避けられることはないはずだ。ハッピーエンドには程遠い結末は目に見えてる。どうする私。逃げようにも一日中私の周りには誰かしらいる。逃亡は不可能だ。柔道経験者だが堅いのいい騎士や兵士たちを一気に相手するほどの力もない。どうすれば…まだ私はここについて知らないことが多すぎる。まずは敵を知るべきだ。
「あのエドラさん…」
「なんでしょう」
勉強させて下さい。
読んでいただきありがとうございます。