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【episode3 〜初対面の刃〜 】

 コロシアムから出たハルトとミルは、一人の女子生徒に呼び止められた。

「貴方達が噂の転入生ね? 」

 ハルトは何も反応しない。


 その女子生徒は、スカイブルーの綺麗な長髪、頭の左上には赤い花を着けている。どんな人間なのかは分からないが、ハルトはその女子生徒が普通の生徒と同じ実力ではない事は感じることが出来た。

「人に名前を聞くときは、まず自分から名乗るもんじゃねえのか? 」

「ええ、そうね。……私はイシュダル。この学園の生徒会長よ」

 ハルトの問いにイシュダルはあっさりと返答した。

「俺は香月ハルト。で、こっちは」

「ミルだよー! 」

 ミルはハルトの言葉を遮って自ら名乗る。



「ハルト君にミルちゃんね。……さっきのコロシアムでの戦闘、観させてもらいました」


 初日からいきなり説教か?

 勘弁してくれよなぁ……


 しかし、イシュダルからはハルトの予想とは違う言葉が発せられた。

「シュベルツ学園史上最大の逸材を手に入れてしまったわ。ねぇハルト君、ミルちゃん……警衛隊に入らない? 」


 警衛隊とは、シュベルツ学園及び、学園都市シュベルツ全体を管轄とする違反や犯罪を取り締まるグループの名称である。学生が多い学園都市では軽はずみに違反や犯罪が起きることが多い。それを取り締まるためには強い力を持ったシュベルツ学園の中でも、更に強い力を持った生徒だけが選ばれる。その力を恐れるが故、学園都市の秩序は保たれている。


「……なるほど! だけど、何で私とハルトを警衛隊に? 」

 ミルはイシュダルの説明に頷きながらも問いかけた。

「さっきも言った通り、貴方達の実力をこの目で見たからよ。あの動きは只者じゃないわ。しかも、貴方達が倒したあの六人は全員三年生。つまり最上級生なのよ。それをいとも簡単に倒すなんて……一体貴方達は何者なの? 」

 イシュダルは右手を顎に添えて質問して来た。


「何者かって聞かれても俺達に答える義務はねえよな? 」

 ハルトは素っ気ない返答をした。そう返答されたイシュダルは、クスッと笑った。

「確かにそうね。なら、いずれ聞かせてもらうわ。……警衛隊のこと、考えておいてね」


 最後にイシュダルはハルトに向けてウインクして去って行った。隣のミルはハルトの顔を覗き込んでムスッと少し怒っている。

「何よあの女! ハルトは私のものなのにー! 」

「おい、誰もお前のものじゃねえぞ」

 ミルの頭を軽く叩いてツッコミを入れる。

 するとそこへ、


「おー! やっと見つけたぞ! 」


 と二人組の男女がハルト達の下に慌てた様子で走って来た。

「アンタ達、一体誰よ? 」

 その二人はどちらも息を切らし、膝に手をつけて呼吸を整えている。


 呼吸が落ち着くと、二人は何故かミルに握手を求めた。

「貴方が噂の転入生ね!? あの三年生達も貴方が倒したんでしょ? 」

「俺達の班に入ってくれないか!? 」

 突然迫られたミルは対応に困っている。自分の存在を無視されているハルトは、その状況に苛立っていた。


「おい、俺も一応転入生なんだけど」

「あらごめんなさい、すっかり忘れていたわ。オーラが全く感じられなかったから」

 女子生徒から屈辱的な一言を言われ、ハルトはその女子生徒を睨みつけた。

「お前みたいな女に俺は負けねえよ」

「何よ? やる気? 」


 睨み合っていると、もう一人の男子生徒が二人を止めに入った。

「あーごめんごめん! この子は基本的に男子にアタリが強いから! 」

 ハルトは構わず女子生徒を睨み続ける。すると、

「……だから止めてくれないかなー? 」

 とハルトの肩を笑顔で叩いて来た。表情は笑顔だが、その瞳の奥は笑っていない様だ。

 ハルトは戦闘に自信を持っているが、今はこの男と争っていても得がない。そう判断し、2歩後ろに下がった。


「分かってくれて嬉しいよ! ……俺は戦闘教育科二年、第11班、副隊長のレオルだ! ……ツバサ、俺から紹介しようか? 」

「いいわよ。それくらい自分でするわ」

 ツバサと呼ばれた女子生徒はミルには笑顔、ハルトには鋭い目付きで自己紹介をした。

「戦闘教育科二年、第11班隊長ツバサ。隊長と言っても、まだ第11班は二人だけだけど」


「俺達は今日から戦闘教育科二年に転入した。俺は香月ハルト、こいつはミルだ」

「よろしくねー! レオル! ツバサ! 」


 人懐っこいミルはすぐに二人の名前を呼んだ。人間関係において、ミルの性格はハルトとは対極だ。

「おう! よろしくな! 」

「きゃあー! ミルちゃん可愛いー! 」

 ツバサはミルに抱き着き、お互いの頬を擦り合わせている。


 すると、

「第10班並びに第11班、第二実習室にて模擬戦を行う。直ちに第二実習室に集合せよ」

 と校舎からの放送が聞こえて来た。


「あーやっぱりアイツらと戦わないといけないか」

「泣きごと言っても仕方ないわ。……ごめんねミルちゃん。私達、これから模擬戦やらないとだから。また女子寮で会おうね! 」


 ツバサとレオルは嘆き、そして校舎へ向かって行ってしまった。


「模擬戦か……」


 ハルトの呟きを聞いたミルは、ハルトの顔を覗き込んだ。

「ハルトー、観に行きたいの? 」

「いや、観に行きたいんじゃなくて自分がやりたいって感じだな」

 少し微笑んでミルに答えた。

「……じゃあ観に行こーよ! まずはこの学園のレベルを測らないとだからね! 」

 ハルトの気持ちを見透かしているミルは、ハルトの左腕を引いて第二実習室へと向かって行った。

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