第三十八話 聖杯の伝説
シェエラザートの予言詩録
最終章『終わりの時』
終わりの時、遠からず
四の首と三の翼と六の尾を持つ赤き鳥
甘い蜜の約束された地より飛び立ちて
美しき破滅を舞う
天も落ちず地も沈まず
全ては何事もなく平静を装い
時は常したかに思える
されど神の下僕たる七つの星の処刑人
眩む光と共に静かに降り来たりて
無慈悲に斧は振り下ろされる
七つの星の断罪は絶対の審判
その黒曜の斧、鋭く砥がれ
見えざるを裂き
在せぬを断つ
我ら、座してその時を待つか
我ら、立ち上がりその時を拒むか
いずれにしても事は成らず
然し我らは動く
故に我らは動く
その時、来たるに備えて
全ての種よ
汝らが旧き流れの真実を忘れ
汝らの盲目が全てを死に導いたとしても
全てを責むな
全てを悔いるな
汝らは己の思うままに振る舞ったのだから
最終詩『聖杯の伝説』
太古より続きたる呪われた螺旋の運命
道を踏み外したる血脈への裁き
それすなわち崩壊への道標
輪廻の環を乱す亡者ども
全母なる反母に導かれ
我らの時を盗む
偽りなき六組の罪人たち
円卓の中央は骨の皇帝
世界を惜しみ時に抗する
世界樹は外なる闇に浸りて
内なる光を穢し
精霊塔は内なる光を浴びて
外なる闇を清め
常に寄り添う双頭の蛇が如く
互いの尾を喰らう
一度は、目覚めず
一度は、成らず
三度目で結末は訪れる
半身は天使で半身は悪魔
聖杯の名を持ちたる切り札
どちらに転がりたるか
それも廻りたる運命
終わりの時
すでに針は刻みだして
止めること敵わず
逃れること能わず
全ては再び流れ始め
我らは廻る宿命から解放される
全ては再び流れ始め
我らは錆びた宇宙の一部となる




