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ロザ・ファモリナ救国記  作者: 榎並 稜生
Chapter:1 ロザ・ファモリナ
3/3

File:2 宿場町

前回更新よりかなり間があいてしまい申し訳ありませんでした。

文章も前回よりかなり劣っていますが、どうかお目こぼし頂けるとありがたいです。

文章力が復旧し、時間が出来たときに必ず修正いたします。

 宿場町に着いたのは夜も更けた頃だった。

 それからすぐに泊まる場所を探し、俺とフィズ一行は受け入れてくれた宿屋に入った。

 俺はとりあえずシャワーを借りて汚れを落とし、備え付けの服に着替えた。

 その後割り振られた部屋に行き、そこで……


 俺が全てを話し終えると、フィズは小さくため息を吐いた。


「それは災難だったね……申し訳ないけど僕はその『地球』に戻る術を知らない。聞く限りこの世界とは全く別の世界のようだし……大きな街に行っても『地球』のことを知っている人がいるとは思えない。せめて樹形世界の一つなら『ナスティエルト』から送り返すことも出来たかもしれないけど」


「ナスティエルト? 樹形世界?」


 俺の問いに対してフィズは頭を掻きながら答えた。


「少し説明がしづらいんだけど……頑張ってみる。この『ロザ=ファモリナ』と別の世界に行き来する術自体は存在するんだ。それが北極と南極にある『世界接続器・ナスティエルト』なんだ。『ナスティエルト』は巨大な塔の形をしていて、遙か宇宙まで繋がっている。その内部を通り抜けることで別の惑星……つまり別の世界に移動することが出来る。樹形世界というのは『塔により接続された世界』を外から見ると木の形に見えるはずだ、ということから呼ばれ始めた。残念ながら実際に目で見て確認出来る訳ではないんだけど。『ロザ=ファモリナ』は宇宙誕生の地ともされていて『メインシャフト』とも呼ばれる北極側の『ナスティエルト』には全ての世界の『ナスティエルト』が接続されている。だから、湧一の世界……『地球』にも巨大な塔があれば、『ナスティエルト』で接続された樹形世界の一つであることが分かる。でも、『地球』にそんなものは存在していない。つまり、ロザ=ファモリナと全く繋がりのない樹形図からはじき出された、またはそもそも全く違う概念だった世界ってこと。『地球』はここで指す『異世界』じゃなくてむしろ『異次元』と言ってもいい存在なんだと思う」


 最早どうにもならない事は承知していたが、ここが別の星である可能性も消滅してしまった。

 それに既に『世界を接続する機械』があるのだから地球に転移する、つまり異次元に行く機械が作られている可能性も低い。

 神の思し召しでもない限り、ここから脱出し地球に戻ることはほぼ不可能だろう。



 まあ、仕方ない。

 俺はあくまでもただの人、ただの中学三年生なのだ。

 世界を移動するなどという異常事態に対処する能力は皆無だ。


「やっぱり、戻れないんだな」


 質問に対してフィズは小さく、しかし深刻に頷いた。


「もし帰れるとしても数ヶ月から年単位の時間がかかることは間違いないだろうね。そして残念だけどその間ずっと面倒を見ることは僕にはできない」


「分かってる。都市についてからも迷惑を掛けるわけにはいかない。かなり大きいみたいだし、仕事はいっぱいあるだろうから、何か探すよ」


 了解の返事か手伝ってあげる、などの返事を予測していた俺には次の言葉はある種予想外だった。


「そのことなんだけど……僕たちと一緒に来ない?」


「どういうことだ?」


「この世界は今大規模な内戦の最中でね、どの都市もよそ者には風当たりが厳しいんだ。アーガス=ルミナあたりから来たならまだしも、どこの馬の骨とも知らない人がふらふらとたどりついたところで良くて脱走者、犯罪者、最悪敵のスパイだと思われる。仕事を探すのは至難の業だと思うよ」


 大規模な内戦……フィズのトラックに銃や弾丸が積まれていたのも治安状況の悪化によるものなのだろうか。


「つまり、俺は都市に来て早々牢屋にぶち込まれる可能性もある、と?」


「うん。湧一みたいに肌が白いと尚更ね。今から行く都市……リア=メディスは一部の人を除いてほとんど日焼けしてるから。でも、それらのデメリットを回避できる方法が一つだけある」


「それが、フィズについて行くってことか?」


 フィズは頷き、説明を再開した。


「そう。僕たちはリア=メディスの治安維持軍とは結構関係が深いし、よそものってだけで連行されることはまずなくなると思う。でもこれだけだと街の人からは決してよくは見られない。僕たちの仕事を手伝って貰えれば、それも回避できる。仲間だと認識される。勿論給料も出すし住む場所も確保する」


「その仕事、というのは一体何だ?」


 そこまでメリットだらけなのは明らかに怪しい。

 そもそも治安維持軍なんてものと親しい時点で怪しい。

 しかし黒い仕事なら街の人から仲間だと認識される、というのもおかしい。

 一体どんな仕事なんだ?


「傭兵。雇われの兵隊だよ。まあ僕たちの場合は専属契約型、なんて呼ばれて実質的には正規軍と大差ないんだけどね」


 傭兵。

 それは現代日本ではまず聞くことのない、しかしよく知られている単語だ。

 金で動き、金に生きる兵隊。

 金が尽きればいとも簡単に寝返り、新たな雇い主の下で戦う。

 最近では民間軍事会社(PMC)と名を変え第五次中東戦争やイラク戦争の時に大々的に利用された、と聞く。


 まあ傭兵の定義なんてどうでもいいが、それはつまり人を殺す仕事、というわけだ。

 大規模な内戦が起きているということだから、どちらかの陣営について戦うことになるのだろう。

 得体の知れない所で、得体の知れない奴のために殺し合いをする。

 そのことに俺はどうも現実感を持てなかった。


「勿論今すぐ決めないといけないわけじゃない。それに、湧一が戦争とは離れた仕事に就きたいのなら、僕も斡旋することくらいはできる。もし入ると決めたとしてもすぐに戦場に放り込む訳でも無い。一ヶ月程度は訓練の時間を取るよ。ただ一つだけ覚えておいてもらいたいのは、少しでも裕福な暮らしをしたいなら傭兵を選ぶべき、ってこと。多分今探して見つかる普通の仕事は調理場での雑用とか店の掃除の仕事ばっかりで、当然給料も低いから住むところもかなりランクが低い場所になると思う。傭兵になれば傭兵専用の、少し上等な街区に優先的に入居できるから」


 やっぱり、無難な仕事で多く稼ごうとするのは無茶だ、ってことか。


 俺はこの世界に来たばかりで、資格もなければ住民票もない(そもそも制度があるのかも分からないが)。

 そんな奴がここで生きていこうと思えば、やっぱり何かを犠牲にしなければならないのだろう。


「考えとくよ。正直色々ありすぎて頭が混乱してる」


「分かった。今日はもう遅いしね。明後日にはここを出発して、僕たちの所属する自由連合の首都、リア=メディスに向かうことになる。この町を出ればリア=メディスまで休憩できるような場所はないから、十分に休んどいてね。この周辺は完全に自由連合の領域だから敵に攻撃されることはないだろうし、多分予定通りに到着すると思う。じゃあ、おやすみ。僕も部屋に戻るよ」


 リア=メディスか。

 聞く限りでは相当大きな都市のようだが、どれくらいの規模なんだろう。

 この世界での一般的な都市の大きさが分からないが、トラックがあることからしても産業革命は既に行われているだろうし百万人規模の都市だとは思うが……


 フィズが出て行った後、宿の部屋でそんなことを考えながら俺は眠りに就くのだった。



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