新しい力(なかま)
リューイたちは二日ほど被害にあった家などの復興の手伝いをしていた。
あくる日、四人はナルスタシアに研究所の所長室へ呼び出された。
相変わらず散らかっていて、煙たい部屋だ。
「わるいねぇ。色々助けてもらって」
ナルスタシアは煙草をふかしながら言う。
「いえ、少しでも力になれてよかったです」
シュエルが答えた。
「お礼と言っちゃぁなんだけど、ほれ」
ナルスタシアはなにか布の袋を投げた。
リューイがそれをキャッチし中を確認する。
「金だ!」
「こんなにー」
リンが袋をのぞき込んで言う。
「あんたたちの旅に役立ててくれ」
ナルスタシアは笑っている。
「ナルスタシア様、………本当にお世話になりました」
チェルンは涙ぐみながら深々とお辞儀をしている。
「これからだよ。しっかり活躍してあたしの名を広めてくれ」
ナルスタシア大きく笑っている。
「はい!」
チェルンも笑っている。
「ところで次の行先は決まってるのかい?」
「次はドザールに行こうと思います」
シュエルが答えた。
「砂の国か、なにやらきな臭いところだから気を付けなよ」
「大丈夫だぜ!おば……!?おねーさん」
リューイはなにか言いかけたが、鋭い視線を感じて言い直した。
「そうかい。まぁあんたたちなら大丈夫だろうさ。今日中には出発するのかい?」
「必要なものを揃えて昼までには出発しようと思っています」
チェルンが答える。
「あんたたちの旅を無事を祈っているよ」
四人は挨拶をすませ部屋を後にした。
そこから食料や衣服類など必要なものを買い揃え、街の門へと向かう。
「おまえ家はどうすんだ」
「しばらく空けるって手続きをしたから当面の間はそのままで大丈夫。そのうち帰ってこれるでしょ」
「短い間だったけど色々ありましたね」
「名残惜しー」
少ししんみりした空気になる。
「さぁ!ここからは山越えもあるんだから気合入れていくわよ!」
「なんかやる気マンマンだな、チェルンは」
「それじゃあ、改めてチェルンさん!よろしくね!」
シュエルはチェルンに手を伸ばす。
「こちらこそ!よろしく!」
二人は握手を交わす。
「おーい!早く行こうぜ!」
リューイはすでに先に行っている。
「協調性のないやつ!」
チェルンは笑っている。
しまらない出発となった四人だった。
「今日中には山の麓まで行くからね」
出発して数時間、早くも疲れが見えだしたリューイたち。
「それってあとどれくらいだよ」
「今で半分ってとこかしら」
「もうむりー」
リンはリューイの鞄に入っていった。
「あ、ずりぃ」
ここまでは特に何もなく進めている。
よく利用される街道なだけあって、人もちらほら見かける。
ミューズを出てからしばらくは原野が続き、山の麓近くになってくると木々が増え始める。
「森が近くなると獣やモンスターも出てくるんだから、気を引き締めて」
そういうチェルンも少し息が上がっているようだ。
「さすがにモンスターが出てきたら、これ光るだろ」
リューイは腕輪を見ながら言う。
「まぁ今はチェルンさんもいるし大丈夫でしょ」
「またチェルンさんって呼んだ。チェルンで良いって言ってるでしょ」
「ご、ごめんなさい。なんかまだ慣れなくて」
「シュエルは俺以外には”さん”とかつけるよな」
「リューイにはいらないでしょ」
「なんでだよ!」
「シュエルはなんかお姉さんって感じね。弟かいた?」
チェルンがそう聞くとシュエルは一瞬表情が強張った。
「シュエル?」
チェルンは声を掛ける。
「え、ああ!弟はいませんよ。それよりほら見て!」
シュエルは前方を指さした。
リューイたちの行く先は雨雲で覆われていた。
「雨!」
リューイが嬉しそうに声を上げる。
「なんでうれしそうなの」
チェルンは呆れている。
「どこかで雨宿りが出来そうなところは」
シュエルはあたりを見渡す。
「あの大きな木の下へ行きましょう」
四人は少し先にある大きな木へ走った。
木のところへ着くころには雨が強く降っていた。
「ギリギリー」
「これじゃあ、今日中には山の麓までは厳しそうね」
「今日はここで寝泊まりですか?」
「そうなるわね」
「まじか」
「テントを組み立てるからみんな手伝って」
四人は協力し合いテントを組み立てた。
「テントも意外といいもんだな」
リューイはテントの中でリラックスしている。
「ナルスタシア様からたくさんお金をいただいたから良いテントが買えたの。普通だったらこんなのじゃないわ」
「見た目より広いー」
リンはテントの中を飛び回っている。
「これは結界の魔術が施されている。雨もしのげるし獣とかの侵入も防げるの」
チェルンは入口を閉めながら言う。
「ここでみんな一緒に寝ることになるけど、リューイ。変なこと考えないでよ」
「んなこと考えねえよ!」
なんだかんだ、みんな初めてのテント泊でテンションが上がっているようだ。
簡単な夕食をすませ、早朝出発に備えてすぐに寝ることとなった。
みんなが寝静まった後、シュエルはまだ寝れずにいた。
瞼を閉じていても寝れない。
はあっとため息が漏れるシェルン。
今でも忘れることのできない思い出。
楽しかった家族の思い出。
「ネルロ……」
シュエルは小さく一言いうとまた瞼を閉じた。




