チェルン
帝国の城では王に兵士が報告を行っている。
「今回のセーラの神殿への襲撃ですが!ゾンナ将軍が倒され腕輪の奪還失敗となりました!」
「それでおめおめと逃げ帰ってきたわけか!」
玉座の横の細身の男が声を張り上げる。
「申し訳ございません!」
「もうよい!下がれ!!」
兵士は急いで部屋を出ていく。
細身の男は激怒しているようだ。
「次は僕が行こうか?」
部屋の隅の暗闇から声がした。
「おお、お前か。お前になら任せられる」
細身の男が声を和らげて言う。
「この僕にお任せください」
小柄な男がそこにはいた。
鎧は着ず、市民のような服装をしておりフードで顔が見えない。
「では」
一礼すると、小柄な男は闇へと消えた。
不穏な動きを見せる帝国。
一方のミューズでは
朝食をすませた4人は冒険者ギルドへ向かった。
大きな建物に老若男女問わず多くの人々が出入りしている。
「どへーすごい人だな」
「朝は新しい依頼が出されるからね。特に人が多いの」
「私にもできる仕事あるかなー」
人ごみの中、奥の受付へと歩いていく。
新規受付の前のについたところ、一人の受付嬢が声を掛けてきた。
「あら?チェルンじゃない。めずらしい」
「ええ。ハンナ。ちょっとこの子たちに仕事を紹介したくて。私が保証人になるから」
「まじめなあなたが保証人ならなんも心配ないわね。ちょっと待ってて」
受付嬢のハンナが後ろから分厚い髪の束を持ってきた。
「子供たちでもできそうな依頼となるとー。農作業、お店の手伝い、探し物ってところかしらね」
「ぴったしじゃない?」
チェルンが三人の方を見ながら言う。
「農作業………」
リューイは嫌そうな顔をしている。
「お店の手伝い!」
シュエルは嬉しそう。
「探し物ねー」
リンはしかめっ面で腕組みしている。
「それでお願い、ハンナ!」
「わかったわ。ここに必要事項とサインを頂戴」
「わたしは研究所にいてるから。仕事が終わったら直接私の家に帰っていていいからね」
申し込みをささっとすませるチェルン。
「さぁあなたたち!しっかり働くのよ!」
チェルンは三人に振り向き発破をかける。
「うぇーい」
「はい!」
「はー」
三人が返事をする。
リューイは年寄り夫婦の畑の手伝い、シュエルは道具屋の手伝い、リンは研究所で探し物の手伝いをすることになった。
最初は戸惑いもあったが、三人はすぐに仕事に慣れ問題なく初日の仕事を終わらすことができた。
三人とも次の日も手伝いに来てほしいと誘われるほどの手際の良さだったようだ。
夕方、ギルドで初日の報酬をもらった三人。
辺りも暗くなってきた中、三人でチェルンの家に向かっている。
「リューイ、ちょっと土まみれ過ぎない?そこの水で洗ってから帰ってきたら?」
「たしかに、チェルンになにか言われるかもな。先に帰っててくれ」
「はーい」
リューイは水場へ向かった。
「うわっこんなとこまで土が入ってら」
水で土を落としているリューイ。
何気なく周りを見渡すと家に向かっているであろうチェルンを見つけた。
「あ、おー」
リューイが声を掛けようとしたとき、チェルンが誰かにぶつかった。
コケるチェルン。
ぶつかったのは三人組の魔術師たちだった。
「あら、落ちこぼれのチェルンじゃない。魔術を使えない魔術師がなんでまだこの街に?」
「魔術も使えないのに無駄に頑張って。ナルスタシア様が優しくしてるからって調子に乗ってない?」
「魔術師の格が下がるのよ。いい迷惑だわ」
三人は口々にチェルンの悪口を言っている。
「あなたたちには関係ないでしょ。ほっといて」
チェルンは言い返す。
「ふんっ。じゃあね落ちこぼれさん」
三人は去っていった。
荷物を拾っているチェルンのもとにリューイは駆け寄った。
「大丈夫か」
荷物を拾うのを手伝うリューイ。
「嫌なとこ見られちゃったわね」
ばつが悪そうに言うチェルン。
「お前、魔術が使えないのか?」
ふーとため息をつくチェルン。
「ちょっと話さない?」
街の外れの小さな丘へ向かう二人。
夜空には星が綺麗に輝いている。
そばの石に腰掛ける二人。
「聞いた通り、あたしは魔術が使えないの。なんでかわからないけどね」
「けど魔術師なんだろ?」
「ナルスタシア様が認めてくれたから一応ね、けど魔術が使えないのに魔術師を名乗るのはおかしいって人が多くてね。まぁ当り前よね。」
リューイは黙っている。
「こんな仲間嫌になったでしょ?」
チェルンは気丈にふるまっているが、声が震えている。
「全然!余計にチェルンでよかったって思ったぜ」
リューイは笑顔で答える。
「なんで!?」
チェルンは驚く。
「だって、あんな奴らにいじめられてるのに負けてないなんて、俺らの仲間にぴったしだぜ!」
「けど魔術が使えないんだよ」
「あきらめてないだろ?」
チェルンが胸を抑え俯く。
「………うん」
「ギルドの受付のねーちゃんもチェルンなら心配ないって信用してたしな。見てる人は見てるんだよ。ナルなんとかもチェルンなら力になってくれるって。まぁすでにいっぱい助けてもらってるからな!」
笑いながらリューイがいう。
「あきらめてなけりゃいつか魔術は使えるぜ。絶対な」
リューイはまっすぐチェルンを見ている。
チェルンが顔を上げる。
その目からは涙が流れている。
メガネを外し、涙をぬぐう。
「子供のくせに生意気ね」
チェルンが笑った。
「メガネ外すとすげえ美人じゃねえか!」
「もう!生意気!!」
二人は笑いあっている。
落ち着いた後二人は家に戻った。
「遅い!何してたの!?」
シュエルがぷんぷん怒っている。
「おなかぺこぺこー」
リンがげっそりしている。
「なかなか綺麗にならなくてなあ」
ガハハとわらうリューイ。
「ごめんごめん、すぐに夕食準備するわね。シュエルも手伝って」
チェルンがシュエルと台所へ向かう。
就寝前、チェルンがリューイのところにやってきた。
「今日はありがと」
「んあ?なんもしてねえよ」
「けど……ありがと」
「ん?なんだ?」
「なんでもない!おやすみ」
「?おやすみ」
リューイは初日の労働の疲れもありすぐに寝ることができた。




