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悪女の針仕事〜そのほころび、見逃しません!〜  作者: 陰陽@4作品商業化(コミカライズ・書籍・有料連載)


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第5話 加護縫いの力①

 数日後、ミリアムは自分の部屋で刺繍に集中していた。新しい専属メイドのアンが優しく世話をしてくれるおかげで、あれから特に嫌がらせをされることもなく過ごしている。


 エレナはあのままクビになったようだ。確か巻き戻り前は、癇癪持ちでメイドをいじめるミリアムお嬢様に健気につくしたメイド、として、男爵家の令息に見初められ、貴族になっていた筈だが、もうその未来は望めないだろう。


 エレナの件が片付いた後、屋敷内の空気は少しずつ変わり始めていた。従者たちの視線が、以前のように冷たくない気がする。


 巻き戻ったことで落ち着いたミリアムは、当然癇癪などを起こさない為、従者たちの見る目が変わりだしていた。


 しかし家族の態度はまだ変わらない。もともと貴族は自分で子育てをしない為、関わる機会が少ないので、変化を見せる機会がないのだ。


 2人いる兄も、男の子なので一緒に遊ぶ会がなく、また、長男は既に後継者教育が始まっている為、更に接する機会がなかった。


 特に父親のジョスラン・フォン・ローゼンハイデン公爵は、ミリアムに対して冷淡だった。長男であるアレクシスを立派な後継者にすることと、自身の仕事にしか興味がない。


 前世でも、ミリアムが国外追放させられる時、誰もかばってはくれなかったことを思い出す。だが今世ではその関係を変えていきたかった。


 過去のループでは、父親はいつも体調が悪く、咳が止まらず、屋敷の執務室に引きこもりがちだった。


 本来登城して仕事をしなくてはならないところを、体調の問題で辞退し、領地の仕事のみしていた為、代わりに母親のアンナソフィアが王宮の仕事をしている。


 ミリアムが悪女と呼ばれ、噂が広まるにつれ、父親は守ってくれるどころか、遠ざけるような態度を取っていた。


 そこにきて、現れた聖女に少し体調を回復してもらったことで、一気に聖女信望者となり、ミリアム追放に一役買ったのだ。


 だがよくなったと思ったのは表面だけの話で、咳がでなくなっただけで、体調そのものが治ったわけではなかった。


「父様の体調……あの咳、毎回同じよね。私が追放されてから、結局悪化して亡くなったって、風の噂で聞いたっけ。時期こそ毎回多少違うけど……。」


 ミリアムは独り言のように呟きながら、針を動かした。アリアドネが傍らで浮かんで、ピンクのリボンを揺らながら、ミリアムの顔を覗き込んでいる。


「ミリぽむ、どうしたッピ?怖い顔してるッピよ〜?」

「父さまの体調のことよ。冷たい人だけど、家族なんだから、死んで欲しくはないし、どうにかしてあげたいの。少しはマシな関係にしたいし。」


「それで加護縫いをしてるッピ?」

「試してみるいい機会かなって。」

 加護縫いは、刺繍に強力な加護や祝福を込められる力だそうだ。


 ルーパート王国で刺繍を売っていた時に、何度もその図柄は目にしている。図柄そのものにも力があり、加護縫いの力を発動させやすくするもの、らしい。


 だから実際には加護縫いの力がなくとも、素晴らしい刺繍には力がこもるとして歓迎されているし、加護縫いともなると更に値段が跳ね上がるのだ。


 この国で加護縫いを出来る人間はいないから、体調をよくしようと思うと、貴族であれば医者か、教会の祭司に頼るか、聖女の力に頼るしかない。


 だが、医者にはかかっている筈だし、教会の祭司にも頼んでいることだろう。それを出来るお金はあるのだから。


 それでもよくならなかったものが、少しだけでもよくなれば、奇跡を信じるのも無理のない話だろうな、とミリアムは思う。


 今回は特別に、父親の体調を良くする祝福を込めてみることにした。病気を癒すような、温かな回復の祝福を。


 一気によくしてしまっては、おかしいと思われてしまうから、加護ではなく、祝福にすることにした。


 神や精霊の力は、寵愛、加護、祝福の順で人々に力を与えるとされている。加護の力は強すぎるので、加護縫いと言っても、売られている大半は祝福が込められたものらしい。


 ミリアムは自身に割り当てられているお金から、上質なシルクのハンカチをアンに購入してもらった。


 デザインはシンプルに、ローゼンハイデン公爵家の家紋を基調とし、そこに回復の祝福の図柄を縫い付ける。


 針を刺すたび、淡い金色の光が糸に宿るような感覚があった。


 そもそもどの国でも、令嬢が初めて刺繍したハンカチは、幸運や勝利の象徴で、家族や恋人への贈り物にされるのだ。


 貴族たるもの、娘が初めて刺繍したハンカチを断る筈がない。どんなに娘に興味がなくとも、それは受け取ってくれるだろうと思った。


「これで父さまの咳が少しでも楽になればいいんだけど。」

 完成したハンカチを丁寧に畳み、アンに頼んでプレゼント包装をしてもらった。


 ミリアムは侍女長を呼び出すと、父親の執務室へ届けてもらうよう頼んだ。直接会ってもらうことは難しいからだ。


 その日の夕方、執務室でローゼンハイデン公爵は書類に目を通していた。長年原因不明の咳に悩まされ、顔色は青白い。



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