第4話 嘘を見抜く力
ミリアムがアリアドネを指さすと、アリアドネは流れ星が先端についたような杖でエレナをさした。
「あれは嘘のほろこびだっぴ!あれを引き抜けば嘘が暴けるッピ。繕えば嘘を補填出来るッピ。ミリぽむ、どうするッピ?」
「どうするって……そもそもそのミリぽむって何よ。」
「ミリぽむはミリぽむだッピ!今ならあいつの嘘が暴けるッピ!」
「どうすればいいのよ?」
「糸を手繰り寄せるんだッピ!女神アテナ様からいただいた加護、嘘のほころびを見抜く力ならそれが出来るッピ!」
「よくわからないけど、やってみるわ。あいつにこれ以上、いいように使われたくないもの。」
ミリアムはそう言うと、空中に漂う虹色の糸を掴むイメージをした。
【嘘のほころびを見抜きました。
証拠はミリアムの濡れた体。】
と、空中に文字が現れる。なにこれ?と首をかしげつつも、これを使ってエレナを追い詰めることにした。
「みんなはエレナが悲鳴を上げて、すぐにここに駆けつけたのよね?」
「そうですが……突然何を?」
「みんな。私の体に触れてみて欲しいの。私がやったんじゃないってわかると思うから。」
それを聞いたエレナがハッとする。
「そこまでおっしゃるのであれば……。アン、お嬢様の体に触れてみなさい。」
「わ……わかりました。」
そう言われて、若いメイドがミリアムに近寄って体に触れた。
「つ、冷たい!?まるで氷のようです!」
「なんだって?」
「それも、一度お湯にして冷めたものではありません、一度も温められていない、井戸からくんだそのままの温度の水です。」
「エレナ、どういうことだ!?」
「そ、それは……。」
「エレナは私にお湯を持ってきてと言われて、腹がたったんでしょうね。わざと私の頭から水をあびせかけたのよ。いつも冷たい水でも私が文句を言わなかったのにね。」
「違います!たまたま今日はそうで……わざとじゃないのにお嬢様がいいがかりを……」
そこにアンが不思議そうに言う。
「……私、前から不思議だったんですよね。エレナさん、いつも、お嬢様が、お嬢様がって言うし、お嬢様はたしかに癇癪持ちですから、エレナさんの言う通りなのかなって思ってましたけど……。5歳のお嬢様に、大人を転ばせる力なんてあるんでしょうか?」
「それはそうだな……。まさかエレナがわざとお嬢様に?」
「わ、私は被害者で……。決してわざとじゃ……。」
「だったらなぜすぐにお嬢様の体を拭かない?たとえ貴族の方々が我々従者に嫌がらせをしたとしても、耐えるのが従者だ。ミリアムお嬢様はまだ幼いから、しつけの意味で注意はするが、大人であれば黙って体を拭くのを優先すべきだろう?」
そう別の従者に言われて、アンはハッとしたようにバスタオルを持ってきて、ミリアムの髪や体を拭いた。
「そういえば、エレナがキッチンにお湯を貰いに来ているのを見たことがないわ……。」
「まさか本当にいつも冷たい水をそのまま?」
「お嬢様に指摘されて、ごまかす為にわざと?」
従者たちがエレナをじっと見つめる。
「今だッピ!ほころびを引き抜くッピ!」
アリアドネにそう言われて、ミリアムは手繰り寄せていたほころびの糸を引き抜いた。
虹色の光が弾けて、ほつれていった。そしてエレナが、突然自分でもびっくりした顔をしたかと思うと、
「…………す、すみませんでした!私がわざと落としました~!」
と、勝手に白状したかと思うと、ハッと自分の口を押さえて、「え、私今何言ったの!?」とパニックしている。
「私の専属メイド、エレナから変えてちょうだい。……そうね、アンがいいわ。いいでしょう?侍女長。」
その場に来ていた侍女長にそう言うと、かしこまりました、と侍女長は頭を下げた。
「……エレナ、あなたには話があります。」
「待って、誤解なの!さっきのは違うのよぉ〜!」
そう叫びながら、エレナは部屋の外へと引きずられて行った。
「ミリアムお嬢様、お風邪を引かれてしまいます。お風呂で温まりましょうね。今お風呂の準備をいたしますから、まずは濡れた服を着替えましょう。」
アンが優しくそう言ってくれる。
「やったね!ミリぽむ!」
アリアドネが嬉しそうにそう言って空中を飛び回った。
この加護、チートすぎだわ、とミリアムは思った。嘘を暴くだけじゃなく、本音強制引き出し機能付きだ。
これならもう、誰もミリアムを悪女に仕立て上げられない。予定外に5歳に戻る羽目にはなってしまったけれど、そもそもの悪女という風評を変えるには、小さい頃からやり直す他ないのかも知れない。
この際、第3王子との婚約自体もなくすことが出来るかも知れない。ミリアムは人生をやり直す決意を固めるのだった。
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