第39話 フィリップ王子との邂逅
「それはそうだね。わかった。まずはマダム・アビゲイルとともにご挨拶に伺わせていただくよ。この国での僕の保護者代わりだからね。そこに王妃さまの書状を持っていけば、問題はないだろう。」
とりあえず、今回こそフィリップ王子との婚約は絶対にしたくないとは思っていたが、まさかルーパート王国の第一王子と結婚することになるとは。
だがランディー王子との婚約があれば、いくらなんでもフィリップ王子との婚約が進むことはないだろう。王妃さまも後押ししているようだし、とミリアムは思った。
ガゼボに2人連れ立って戻ろうとした時だった。庭に戻ろうと、迷路のような生け垣を出ようと歩いていると、突然迷路の曲がり角の先からフィリップ王子が現れたのだ。
「……ゲ。」
思わずそんな言葉が小さく口をついてしまうミリアム。
「なんだお前?見ない顔だな!」
ランディー王子を見て、腰に手を当てて不遜な態度を貫くフィリップ王子。遠くでフィリップ王子を探す従者の声がする。
あなたは第3王子だし、アンバスター王国より大国のルーパート王国の第一王子よこの人は、とミリアムは内心ため息をついていた。
フィリップ王子の傍若無人ぶりは、小さい頃からのことだ。本来第3王子など、王太子のスペアの関係から大した扱いにはならないものだが、フィリップ王子は違った。
かなりの難産で生まれたらしく、可愛がられ、心配された結果、いつの間にかこんな風になってしまったらしい。もともとの性格もあるだろうが。
そしてそのまま大人になった結果、ミリアムと婚約破棄をしたというわけだ。
「お?お前はローゼンハイデン公爵家の娘か!兄さまのところで、アレクシスが姿絵を飾っていたから知っているぞ!」
ととんでもないことを言い出した。アレクシスは第一王子の友人として、時折城に上がっている。だが当然、アレクシスの為の部屋が用意されているわけではない。
つまり、第一王子の部屋で、アレクシスがミリアムの姿絵を飾っていた、ということなのだ。アレクシス兄さま、何して下さってるの!?と、ミリアムは羞恥で叫びだしそうになった。
「お前の悪評は聞いていたからな。まさかそんなにかわいがってると思わなくて、そう言っただけなのに、あいつすっごく怖かったぞ!目だけで殺されるかと思ったんだ。」
アレクシス兄さま、グッジョブです、とミリアムは口に出さず思った。将来のアレクシスは、宰相候補として、誰彼問わず絶対零度の氷の貴公子と呼ばれていた。
その目線の冷たさは、ミリアムも思い出して震え上がるほどだ。それに、アレクシスは黙っているタイプではない。恐らくフィリップの知らないところで、それとなくフィリップが嫌がることを仕掛ける筈だ。
それを思うと、ちょっと声を上げて笑いそうになってくるのだった。
「ふふっ……あっと、いっけない。」
思わずフィリップを見て笑ってしまい、小さく声が漏れて、口元をおさえるミリアム。それを見たフィリップが、思わず頬を染めたかと思うと、大きく目を見開いた。
「……なんだよ、全然話と違うじゃないか。おい、お前!今度の俺の婚約者候補選定パーティーには来るんだろうな!僕が選んでやるから、おめかししてくるんだぞ!」
「──はあ?」
ミリアムは地の底を這いそうな声を出し、思わず眉根を潜めてしまい、貴族令嬢として正しくなかったと慌てて表情を取り繕った。
「大変申し訳ございませんが殿下、私、当日パーティーには参加いたしませんので。」
「なんでだ!?貴族の令嬢は全員参加になっているだろう!?それに僕が選んでやるっていってるじゃないか!」
「いえ……大変心苦しいのですが、おこたえいたしかねますので。」
「なんでだよ!」
癇癪を起こして、ダンダンと地面を蹴って地団駄を踏むフィリップ王子。
これを学生時代にもやっていたのよね……と、ミリアムは呆れながら思い出していた。
「これは命令だ!僕の婚約者候補選定のお茶会に来るんだ!」
なんで今さら執着するのよ、もうすぐあなたには聖女アイリーンが現れるんだから、とミリアムは呆れてため息をついた。アイリーンの家が没落し、アイリーンは修道女になっていることも知らず。
そこに、ランディー王子がスッと前に出て会釈をした。
「お初にお目にかかります。ルーパート王国第一王子、ランディー・ルガル・フォスターと申します。」
「あ……?お、おう……?」
さすがにルーパート王国の名前は知っていたらしく、勢いを削がれたように、フィリップ王子が少しのけぞった。
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