第38話 ランディー王子のお願い
「あなたは女神アテナさまから聖女についているよう言われたのでショ?私はこの子についているよう、言われたノヨ。女神アテナさまのメッセージを伝える為にネ。」
ちょっとツリ目っぽい真っ黒な目をして、色が違う以外は、アリアドネとまったく同じ格好の喋るぬいぐるみなので、姉妹なのは間違いないのだろう。
「じゃあ……ランディーさまも、アリアドネが見えてるってことですか?」
「うん、僕には女神アテナの祝福があるからね。」
「見えてる気がしてたのは、気の所為じゃなかったッピ……。それで、女神アテナさまは、なんと言ってたんだッピか?」
「時をつむぐには、最後は手助けをしてはいけないとおっしゃっていたワ。聖女が自分1人で加護縫いの境地にたどり着かなくてはならないト。だから今回は手助けを控えるように言ったノヨ。」
「だから最初の時と同様に、マダム・アビゲイルがいらっしゃらなかったのね……。」
ミリアムはようやく合点がいった。
「僕がお願いして下町に行ってもらっていたからね。僕が工房を用意しなければ、マダム・アビゲイルはあの場所に本来いる人ではないから。」
「それで、聖女を育てて、結婚することで、国を守ろうとしているということですか?」
「いや、君には僕を守って欲しいんだ。」
「──ランディー殿下を守る?」
「言っただろう?僕は死ぬたび時間が巻き戻っている。そしてそれは……僕が誰かに殺されるからなんだ。」
にわかには頷き難い話だ。
「私ならそれが出来ると?」
「女神アテナさまはそうおっしゃった。僕を守る力のある聖女を誕生させる方法があるのだと。君を僕の巻き戻りにつき合わせてしまったことは申し訳なく思っている。」
「本当ですよ!私前回の人生で良かったのに!今からでも戻して欲しいくらいです!」
ミリアムは頬を膨らませた。
「だけど、君のその刺繍の腕は、加護縫いの聖女だからこそ、僕がマダム・アビゲイルに頼んで育ててもらったものだ。加護縫いの聖女に選ばれなければ、君は僕に存在を気付かれることもなく、困窮していた筈だよ。」
「それはまあ……ありがとうございますですけど……。」
だが刺繍の腕はランディー王子の助けばかりではない。ミリアム自身の何十年もの努力があって身につけたものでもある。
ましてや何度も巻き戻ることで、何度も苦しめられたのだ。だから素直にお礼を言うのはちょっと釈然としなかった。
「僕の聖女、どうか僕を救ってくれ。そしてこの巻き戻りから解放してくれないか。」
「ランディー王子が生き延びれないと、ひょっとしてまた巻き戻るってことですか?」
「ああ、女神アテナからはそう言われた。僕は《《特異点》》という存在らしい。僕を起点に時間がひとつにまとまるのだそうだ。」
「特異点?初めて聞きました。」
「僕は未来へ時間を進めるためには、死んではならない存在なのだそうだ。未来へ時をつむぐために必要らしい。」
「はあ……すごい加護ですね。」
「だから僕が死ぬたび時間が巻き戻る。僕をあのタイミングで死なせない為に。僕が死なない為には、君の力が必要なんだ。」
「私が協力しなかったらどうなるんですか?確かに嘘を見抜く力はありますけど……人殺しと対峙するなんて、やっぱり怖いです。」
「その場合はあなたから力を取り上げて、他の子を聖女として育てることになるわネ。」
パイドラーがあっさりと言う。
「また途方もない時間はかかるけれど、しかたないワ。この子がやらないのなら、女神アテナさまに報告して、今すぐ新しい聖女をたてマショ。それがいいワ。」
「え?そ、その場合、またランディー王子がなくなられて巻き戻った場合、私、加護縫いは出来ないまでも、刺繍の腕は残るんですよね……?」
「残らないワ。あなたは上達しない刺繍を延々売り続けるのヨ。時間が巻き戻るたびに。でも安心しテ。記憶も残らないカラ。」
「ぼ、僕はどうなるんだッピ!?ミリぽむと別れることになるんだッピか!?」
「それはそうネ。新しい聖女についてもらうことになるワネ。」
「ちょ、ちょっと待って下さい!いくら記憶がなくなっても、延々苦しむことが確定してるじゃないですか!わかりました!聖女、やらせていただきます!」
「ありがとう。こんな年齢の女の子に頼むようなことじゃないけど、僕も今回の巻き戻りで終わりにしたいんだ。」
「まあ、それには同感です。」
「じゃあ、僕と婚約してくれるかな?僕の聖女さま。」
「それはひとまず両親に相談してからにして下さい……。私もすぐには決断出来ないので。」
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