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悪女の針仕事〜そのほころび、見逃しません!〜  作者: 陰陽@4作品商業化(コミカライズ・書籍・有料連載)


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第29話 一人目の正体

 ミリアムが指を指したのは、レックス男爵家のマリアンナ令嬢だった。

「な……なにをおっしゃっているのか……。」

 困惑したように微笑むマリアンナ令嬢。


「──その名前、嘘ですね。」

 ミリアムがそう告げる。嘘?と周囲がざわざわしだす。


「なにを根拠にそのような……。」

「こ、根拠?」

 そう言われると困る。嘘を見抜くスキルが反応したからそう言っただけなのだから。


「待てよ……レックス男爵家のマリアンナ令嬢だと?確かに辺境にそのような令嬢はいるが、まだ12歳か13歳の筈だ。」

 そこにローゼンハイデン公爵がつぶやく。


「わ、わたくし、大人っぽくて……。」

「どう見てもデビュタント後ではないか。マリアンナ令嬢はあなたの年ではない。今年長女のデビュタントに付き添った、レックス男爵から聞いたから間違いはない。」


「わ、わたくしがその長女ですわ!」

「ではなぜ、そのような嘘を?」

「そ……それは、こっそり恋人に会いに来ていたので、知られるとまずいので……。」


「妹君の名を名乗れば、取り調べを受けたことが家に連絡は行く。名乗ったところで意味はないだろう。家族に知られないよう取り繕いたいのであれば、なぜ妹の名を名乗る必要があるのだ。」


「そ……それはその……。」

 その時、糸がひときわ輝き揺らめいた。

「──長女の名前は?」


「え?」

 ミリアムの問いかけに、マリアンナ令嬢と名乗った女性がかたまる。


「あなたご自身のお名前です、お名前はなんとおっしゃいますの?」

「えと……その……ユリアンナですわ。」

 ひくついた顔で女性が答えた。


「今年デビュタントだった、マリアンナ令嬢の姉の名前は、マーガレット嬢だ!この女をとらえよ!」


 アンナソフィアの指示で、警備兵たちが一斉に動くと、マリアンナ令嬢を名乗った女性は、チッと舌打ちをしてこの場から逃げ出したが、すぐに取り押さえられた。


「ちくしょう!なんで姉妹でそんなに違う名前をつけてんだよ!」

 急に乱暴な言葉になる女性。


「未だッピ!」

 アリアドネの言葉に、ミリアムはゆらめく糸を引き抜いた。


「なんだ?これは……ブローチに、財布?なんでこんなにたくさん?まさか……。」

「きゃあっ!私のブローチですわ!」

「お、俺の財布もだ!」


「そうだよ!あたしはケチなスリさ!貴族の集まるところでスリを働いてたんだよ!」

 女性が叫ぶ。


「あなたが放火をしたのではないのですか?スリをしやすくする為に。」

 年配の警備兵が女性に念をおす。


「知らないよ!確かにやりやすかったけどね!火事にあたしは関係ないさ!」

「別室に連れていき、引き続き取り調べてくれ。」

「はっ!」


 年配の警備兵の言葉に、女性は引っ立てられて行き、盗まれたものは証拠の為にいったん警備兵預かりとなり、厳重に本人確認したのちに返却、ということになった。


 糸を引き抜いたのだから、本当のことを話している。たまたまスリで身分をいつわっていたので、糸が反応したようだ。


「残りは2人ね……どちらが犯人なのかしら?それとも、両方とも?」

 ミリアムはじっと2人の女性を観察した。


 アレクシスを遠ざけてまで刺繍を燃やした。つまりこれがお目当てのオスマン伯爵夫人の刺繍であると知っていた、または見抜く手段を持っていたということである。


 前世でミリアムは家族と共に来ていなかった。だから本来ならアレクシスはこの場にいないのだ。犯人には予定外だったことだろう。


 なのにアレクシスを、ローゼンハイデン公爵家の令嬢ミリアムが呼んでいたという嘘で遠ざけられたということは、貴族ではないスリとは違い、入口で名乗りもしていない自分たちが、ローゼンハイデン公爵家であると知っていた貴族ということになる。


 なのであのスリは犯人ではないと確信出来る。念のため取り調べを受けるようだが、恐らく何も出ないであろう。


 好奇と、疑念と、畏怖が入り混じった空気。貴族たちが、残された2人の中に犯人がいると見て、じっと見つめている。


 クリスティアンが腕を組み、低く唸った。「……けどよ、なんでこの刺繍なんだ?確かに凄いけど、それだけだろ?優勝は絶対お前の……。」


 とまで言ったところで、アレクシスに口を塞がれた。

「しっ。誰の作品なのかは、言わずに審査する決まりだよ。忘れたの?」


「わ、わりぃ……。」

 とモゴモゴ言っている。


「おそらく、これはオスマン伯爵夫人の刺繍作品なのですわ。オスマン伯爵夫人は毎年刺繍大会で優勝されてこられましたから、そこに嫉妬した人がいたとしても、不思議ではありませんわ。」


「確かにそうね。オスマン伯爵家自体は、歴史も浅くて産業も豊かではないけれど、オスマン伯爵夫人の刺繍大会の功績で、王妃さまのお茶会に呼ばれたりしているもの。」

 とアンナソフィアが言う。


「だったらどうしてこの作品なのかしら?優勝を防ぎたいのであれば、今回はこの作品ではなく、奥の個室に展示されているミリ──大作を狙わなくては意味がないわ。」


「そうだな、燃やしたところで別の作品が大賞を取ってしまっては、意味がない。」

 アンナソフィアの言葉に、ローゼンハイデン公爵がうなずく。


「オスマン伯爵夫人の作品を燃やせれば、なんでもよかったのでは?今までの作品の傾向から、あの大作はオスマン伯爵夫人のものではないと見抜いたのでは?」


 アレクシスがそう提案する。

「おい、なんでこの作品を燃やしたんだよ?作者に恨みでもあったのか?それとも誰かに頼まれたのかよ?」

 クリスティアンが乱暴に尋ねる。


「そんなので答えるわけ……。」

 そう呟いたミリアムだったが、2人の女性から揺らめく糸が、一層光るのが見えた。



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