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悪女の針仕事〜そのほころび、見逃しません!〜  作者: 陰陽@4作品商業化(コミカライズ・書籍・有料連載)


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第25話 新たな芸術家認定?

 別荘にいる間に、ミリアムの作品が完成した。テーマは建国神話だ。

 まるで1枚の絵のように、刺繍でそれを再現してみせたのだ。


 刺繍大会の締め切りがあった為、従者を使って、本邸に戻るよりも先に、刺繍が大会本部へと届けられた。


 そして今日、ミリアムたちは刺繍大会の会場へと足を運んでいたのだった。

「ほんとに女ばっかだな〜。」

 頭の後ろで腕を組みながら、クリスティアンがつまらなさそうに言う。


「だから、クリスティアンにはつまらないかもしれないよ?って言ったじゃないか。」

 胸にアリアドネを抱っこしながら、アレクシスが言う。


 日頃アレクサンドラを抱っこしているが、さすがに刺繍大会の会場には連れて来られない。なんとなく寂しくて落ち着かないと言ったアレクシスに、アリアドネが、なら僕を抱っこするといいッピ!と言った為だ。


 実際にはローゼンハイデン公爵家の人間以外にアリアドネは見えていない為、10歳になる男の子が、ぬいぐるみを抱っこしているという光景は、家族の誰にもわからないが。


「ミリアムが優勝するところを、家族が見に来ないでどうすんだよ。」

「そうだぞ、アレクシス。ミリアムの晴れ舞台なのだからな!」


「お父さま、声が大きいですわ……!まだ私が優勝すると決まったわけではありませんのよ?審査は今日が最終日なのですから!」


「ミリアム以外に誰が優勝すると言うの?お母さまは自分の役職をかけてもいいですよ。優勝はミリアムに決まっています。」

 アンナソフィアも堂々と宣言する。


 おかげで周囲の貴族たちからチラチラ見られて、ミリアムは気が気ではなかった。

 会場に入ると、寄付を求められる為、ローゼンハイデン公爵が代表して寄付を行う。


 順番に、一通りゆっくり見て回った。どれも素晴らしいものばかりだったが、やはり目玉はオスマン伯爵夫人の刺繍だった。


 突き当りの壁いっぱいに、巨大な作品が展示してある。だが、今のミリアムには、あら、こんなものだったかしら?と感じた。


 過去に5歳を経験したのは一度だけだ。その時に見た刺繍には、もっと心奪われた記憶だったのだが、今のミリアムにはとても物足りなかった。


 最後がミリアムの刺繍だった。名前がつけられているわけではないが、これまでの展示品の中にはなかったので、最後の展示だと思うしかない。……そもそも展示されていないのでなければ。


 なぜかひとつの部屋に独立して展示されているらしい。角を曲がってその部屋に行こうとすると、ガヤガヤとざわめいていた。

「な……なんだ?この人混みは。」


 ローゼンハイデン公爵が驚く。

 広い部屋ひとつに、刺繍ひとつの筈が、部屋の中にはたくさんの人混みでごった返していた。とても刺繍に近付けない。


 なんとか人混みをかきわけ、前に進むと、一応時間制限を設けて、一番前にいる人たちは時間が来たら場所をどくよう、警備兵たちが指示をしているようだった。


 刺繍と人々の間には柵がもうけられ、これ以上前に近付かないように、距離がもうけられていた。


「これが噂の新進気鋭の芸術家の作品か。」

「これが本当に刺繍なの?素晴らしいわ……。まるで1枚の絵のようね。」

「糸で絵を描くなど、考えてもみなかったことだ。この人は本当に天才だ。」


「これはなんという芸術と呼べばいいのだろう。とにかく新しいスターが誕生したことは間違いない。」

 人々は口々にミリアムの刺繍を褒めていた。


 ミリアムはすっかりあてが外れた。以前見た展示では、刺繍の前に警備兵なんていなかったし、こんなに人が集まったりもしていなかったのだ。これではミリアムの刺繍に人が近付いて、作品を燃やすのは不可能だろう。


 オスマン伯爵夫人の作品は、あくまでも【刺繍として】素晴らしいものだった。

 だがミリアムの刺繍は、もはや芸術作品の域に達しており、素晴らしい画家がいると評判になっていたのだった。


 評判が評判を呼び、警備兵を雇わなくてはならないほどに、人々が大勢つめかけたのだ。


 ミリアムは列から外れると、オスマン伯爵夫人の作品の前に戻った。ミリアムは前世の教訓を活かし、周囲に目を光らせた。


 あの火事は、人がいなくなった隙の犯行だった可能性が高い。前回の大会当日も、会場は貴族たちで賑わった。それでもミリアムの作品の展示室ほどではなく、人がいなくなる時間が都度存在する。


 無記名の作品が並ぶ中、オスマン伯爵夫人の作品は静かに輝いていた。ミリアムの作品がなければ、まちがいなくこの作品が優勝だったであろう。


 しばらく見ていたが、何かがおこる気配はなかった。少し肌寒い廊下にずっと立っていると、トイレに行きたくなってきた。そこにアレクシスがミリアムを探しにやって来た。


「ミリアム、だめじゃないか、家族と離れて1人になっちゃ。いくら貴族ばかりの場所とはいえ、何があるかわからないんだから。」


「アレクシスお兄さま!ちょうど良かったわ!私少しここを離れますので、戻ってくるまでこの刺繍を見はっていて下さいな!」

「あっ、ちょっとミリアム……!」


 アレクシスに刺繍の監視を頼むと、ミリアムはみっともなく見えない程度に小走りに、トイレへと急いだのだった。


 一息ついてオスマン伯爵夫人の刺繍の展示の場所へと戻ろうとすると、突然悲鳴が響いた。急いで角を曲がると、前世と同じく、オスマン伯爵夫人の作品が燃えていた。



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