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悪女の針仕事〜そのほころび、見逃しません!〜  作者: 陰陽@4作品商業化(コミカライズ・書籍・有料連載)


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第18話 フィリップ王子との婚約の打診

「わかんねえ……。」

「防御の加護なら、矢も魔法もほとんど通さない。運の加護なら、味方全体に幸運が降り注ぐ。……つまり、強い加護縫いの妃を持つということは、国の軍事力を飛躍的に上げるってことなんだ。ルーパート王国は、そうして大国になった国なんだよ。」


 クリスティアンの顔が、みるみるうちに青ざめていく。

 膝を抱えた手が、わずかに震えた。ミリアムが?そんな特別な存在だとでも言うのか?


「……じゃ、じゃあ、もしミリアムが本物の加護縫いの使い手だったら……。」

「うん。ルーパート王国からしたら、喉から手が出るほど欲しい人材だよ。」


 こともなげにランディーが言う。

「強い加護縫いが出来て、しかもアンバスター王国の筆頭公爵令嬢。……もう、どの王子の母親も黙ってられないでしょ。政略結婚の最上級候補。いや、むしろルーパート王国にとっては、生きた資産って言った方が正しいかもね。」


 クリスティアンは膝を抱えたまま、唇を強く噛んだ。

 ……またかよ。俺の影が、ますます薄くなる。そう思った。


 ローゼンハイデン公爵はミリアムにデレデレで、膝の上に乗せてご飯を食べさせてやったりする。


 アレクシスは猫と一緒にミリアムと笑い合い、普段の冷たい仮面を外して、まるで別人のように優しい顔をする。


 アンナソフィアまで、ミリアムの刺繍一つで若返り、家族の中心に立っている。

 自分には、見せない顔。


 そして今度は、他国の王族まで、こぞってミリアムを欲しがるかもしれないと言う。

 自分は何なんだろう。次男で、特別な才能もなく、誰も期待していない。


 ミリアムが輝けば輝くほど、自分はどんどん家族から見えなくなっていく。家族の輪の外側で、ただ立ち尽くすしかない存在。誰も振り向いてくれない、影のような存在。


「……なあ、ランディー。お前、ひょっとして、ミリアムを妃に迎えるつもりか?」

 唐突な質問に、ランディーはプハッと吹き出した。


「あははっ!ううん、僕はそういうつもりは全くないよ。……っていうか、僕、兄弟間の王位継承戦争いに疲れ果てて、ここに逃げてきた身なんだよね。王位継承争いとか、もううんざり。妃候補にすら興味ないし、ましてや政略結婚なんてごめんだ。」


 クリスティアンは、ほっとしたように肩の力を抜いた。胸の奥で張り詰めていた何かが、ゆっくりと解けていく。

「……そっか。良かった。」


「ん?良かったって、何が?」

「お前がミリアムに興味がないみたいだからさ。」

「僕を妹さんに取られると思った?」

 そう言って笑うランディー。


「べ、別にそんなんじゃねえよ!ただ……なんか、嫌だなって……。」

 ランディーはくすくす笑いながら、クリスティアンの肩を軽く叩いた。


「素直じゃないね。」

「うるせえ!」

 そうして2人はまた、顔を見合わせて笑い合った。


 さっきまでの重い空気が、温かな春の陽気に溶けていくようだった。湖面の波紋が広がり、陽光がきらきらと反射する。

 自分の未来が初めて明るい気がしたクリスティアンだった。


 ──その頃、ローゼンハイデン公爵家の別荘では。テラスに面した広い居間に、家族が自然と集まっていた。


 まだ少し肌寒い為、暖炉の火がパチパチと小さな音を立てている。

 テーブルの上には、先ほどミリアムがアンナソフィアと共に焼いた、少し焦げたクッキーが、愛らしく山盛りになっていた。


 アンナソフィアが手ずからお茶を淹れた後で、静かに口を開いた。

「ミリアム、大切な話があるの。」

「なんでしょうか?お母さま。」


「6歳になったら……第三王子フィリップ殿下の婚約者を選ぶパーティーに、あなたも呼ばれることになるわ。」


 クッキーに手を伸ばしたミリアムの手が、籠の上でピタリと止まった。

「少し心配していたけれど、最近のあなたの様子を見る限り、だいじようぶそうだから早めに話しておこうと思って。」


「……え?」

「癇癪持ちだという評判があっても、筆頭公爵令嬢という立場は、王子の後ろ盾としては強いもの。ほとんど強制参加に近いわね。」


 アンナソフィアがため息をつきつつ言う。

「……王宮からの招待状は、形式上はお願いの形だけれど、実質的には来いという命令に等しいわ。」


 ミリアムはスカートをギュッと握りしめた。指先が白くなるほどに力を込めて。

「断ることは出来ないのですか?」


「──嫌なの?」

 アンナソフィアが、様子のおかしいミリアムを心配げに見つめつつ言う。


「絶対に……嫌です。フィリップ殿下とは結婚したくありません。……ずっと、お母さまと、お父さまと、お兄さまたちと、家族と一緒にいたいんです。」


 その言葉に、ローゼンハイデン公爵が満面の笑みを浮かべた。普段の厳格な表情はどこへやら、まるで少年のように目を細める。


「ははは!そうかそうか!ミリアムはまだ結婚なんて早い!そうだな、まだまだお父さまの膝の上でご飯を食べていたい年頃だものな!お父さまは一生うちにいてくれても構わないぞ!」




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