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悪女の針仕事〜そのほころび、見逃しません!〜  作者: 陰陽@4作品商業化(コミカライズ・書籍・有料連載)


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第13話 アンナソフィアへのプレゼント

 まるで、別人のようだ。

 ……これは、何かの罠じゃないか?

 ミリアムが何か企んで、家族を操っているんじゃないか?そんな妄想が頭をよぎる。


 それとも、自分だけが気づいていない秘密があるのだろうか?そんな疑念が、クリスティアンの心を蝕む。


 幼い頃から、次男として微妙な立場にいたクリスティアンは、家族に甘えることが苦手だった。


 それに加えてこの変化が、家族の輪に完全に溶け込めていない感覚を常にクリスティアンに与えていた。


 アレクシスは長男として期待され、ミリアムは末っ子として甘やかされる。自分は、ただの長男の予備。


 特別扱いされず、忘れられやすい存在。今まではミリアムが虐げられていたから、それでもそのことがあまり気にならなかった。


 それが今や、ミリアムを中心に家族が結束しているように見える。羨ましい。悔しい。……取り残される気がして不安だ。


 誰も自分のことを必要としない。今までそれはミリアムの役目であり、立場だった筈なのに。今度は自分がそうなるのではないか? 


 そんな恐怖が胸の奥でざわめく。過去のループでは、クリスティアンはミリアムをからかい、見下し、遠ざけていた。


 でも今は違う。急激に変わった家族の輪に、自分だけが取り残されることを恐れている。だからミリアムの変化を認めたくなくて、必死に疑念を盾にしているのだろう。


 だが気になる気持ちを押さえられずに、こうしてミリアムを監視しているのだ。ミリアムはくすりと笑いそうになるのを堪え、わざとらしいほど自然な声で呼びかけた。


「クリスティアン兄さま?どうしたんですか?そんなところで隠れて……もしかして、私と遊びたいんですか?」


 ビクッと肩を震わせたクリスティアンが、茂みから勢いよく飛び出す。頬を真っ赤に染め、腕を組んで強がるように言った。


「ち、違わあ!ただ……お前が最近変すぎるから、監視してただけだ!父上もアレクシス兄さまも、お前にデレデレで……絶対なんかおかしいって!俺はそいつの謎を見抜くために、監視してるんだよ!」


 けれど、瞳の奥にどこか不安で、どこか羨ましげな色を浮かべていた。

 ミリアムは優しく微笑んだ。

「だったら、そんな遠くからじゃなくて、もっと近くで観察なさったらどうですか?」


「ふ、ふん! その手に乗るか!」

 クリスティアンはそう吐き捨てると、踵を返してスタスタと歩き去っていった。


 アリアドネがくすくす笑う。

「素直じゃないッピね〜。」

「そうね。でも、きっとそのうち……」


 ミリアムは小さく笑って、侍女が用意してくれた紅茶を飲んだ。少し冷めていてぬるかった。


 その日の夕方。ミリアムは母の私室の前で、胸の前で小さな包を抱え、緊張から何度も部屋の前で深呼吸を繰り返していた。


 今日は珍しくアンナソフィアの帰宅が早かったのだ。こんな機会を逃すわけにはいかない。だが、なかなか勇気が出なかった。


 過去のループでは、母親はいつも疲れ果て、自分の仕事の足を引っ張る娘の悪評を信じて冷たく突き放すばかりだった。


 でも今は違う。だが今はローゼンハイデン公爵の体調が回復し、アレクシスが笑顔を見せるようになり、家族の時間が少しずつ増えている。この機会を逃したくない。


 アンナソフィアとも、仲良くなりたい。家族をやりなおしたい。

 小さな拳で、そっと扉をノックする。


「……誰?見てきてちょうだい。」

 扉越しに聞こえる母親の声は、疲れからか少しかすれていた。


「お母さま、私です。ミリアムです。」

「……ミリアムお嬢さま?」

 アンナソフィアの専属侍女の声がした。その後しばらく沈黙が続き、扉が静かに開かれ、ミリアムは緊張しながら中へ通された。 


 ソファーに腰掛けたアンナソフィアは、立ち上がることなく娘を見上げた。赤みがかった茶色の髪は乱れ、青い瞳には深い疲労の色が宿っている。


 かつて「アンバスター王国の薔薇」と讃えられた美貌は、今は遠い記憶のようだった。

「……何か用かしら。」


 声は冷たくはないが、母親らしい温かみも感じられない。幼い娘が母親に会いにきた時にかける言葉ではない。


 前世の自分は、こんな母親の疲れに気づけなかった。いっぱいいっぱいで、自分のことしか見えていなかった。ミリアムは胸が締めつけられる思いだった。


「お母さま、いつもお疲れさまです。これ……私から、プレゼントです。お母さまに少しでも元気になっていただきたいと願って、刺繍を施しました。」


「ミリアムが……刺繍を?」

 アンナソフィアの声に、わずかな驚きが混じる。その声に力はなかったが、拒絶をしているというふうでもなかった。





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