1話
俺には忘れられない人がいる。
大学2回生の時に人生で初めて付き合った彼女。
黒髪のロングヘアーがよく似合う凛とした女の子だった。
一目惚れして、自分から告白して付き合った。
2人で色んな所に行ったし、色んな経験をした。
でも、就活の時にすれ違って、別れてしまった。
その時は自分もいっぱいいっぱいで喧嘩する事が多くなっていった。
それから5年後、社会人5年目になった。
ある日、スマホのバックアップを整理している時に別れてから一回も連絡を取っていない元カノとの会話を何気なく見ていた。そこには未送信のままのメッセージが1件残っていた。
"もう一度会って、話がしたい"と書かれていた。
我ながら今でも未練タラタラだなと思いながら、でも会う理由もないため、スマホメッセージを消そうとしたが、誤って再送信のボタンを押してしまった。
慌てて消そうと思ったが、メッセージはもう送ってしまったのでどうしようもなかった。
しばらくすると、元カノからメッセージが届いた。
"じゃあ、会おうよ"と、、、
俺のことを嫌いになってないかなと思いつつ、会いたいと思ったため、会う約束をした。
数日後、駅前で待ち合わせして、再開した元カノは5年前よりも大人っぽくなって、相変わらず綺麗なままだった。
"元気だった?変わらないのね"
と彼女が言った。
"そうかな、少しくらい変わったと思うけど"
何気ない会話のやり取りだったが、たまらなく嬉しく感じた。
普通に会話して、ショッピングなどを楽しんだ。
その後夕飯を食べ終えた所で、彼女からメッセージの件について、問われた。
"あのメッセージの件について、聞かせてくれる?"
聞かれた瞬間、なんて言おうか戸惑った。
でも、喧嘩した日から、もう元カノには嘘をつきたくなくて、本音で話し合いたいと思っていた。
"あのメッセージは実は誤送信なんだ…"
"そう…あなたのことだからそんなことだろうと思ったわ"
"それじゃあ、今日はこれで解散しましょう"
彼女がそう言いかけた時、
"ちょっと待って、言いたい事がある"
今までの想いと、過去のこともきちんと話そうと思った。
"ちゃんと伝えたい事がある"
"聞くわ"と彼女は言ってくれた。
"実は俺、別れてからずっと君のことが忘れられなかった。
今日会おうと思ったのも、きっかけは誤送信だったけど、ちゃんと会ってあの時のことを謝りたいと思っていた。
あの時は、本当にごめんなさい。
就活の中で、君は早くに内定が決まったのに自分は決まってないこと、親や友人からどうするのかって言われて、焦ってた。
だから、君にはきつく当たって、自分勝手に君を傷つけた。
本当にごめんなさい、そして本当に大好きでした。
今でも忘れられないくらいには君のことが好きです"
言いたいことは全部言った。
これでもう終わりと思っていた。
しかし、彼女は涙を流していた。
"私だって今も忘れないわ!
喧嘩をして別れた時から、ずっと後悔してた!
私がもうちょっと寄り添ってあげれたら、頑張れ!じゃなくて、大丈夫?って言ってあげれたら、こんなことにはならないんじゃないかと何度も思った。
でも、連絡取る勇気もなくて、あなたから会いたいという連絡が来た時、夢かと思った。
まぁ、あなたのことだから、誤送信だとは思ったけど、
でも、会えるチャンスだと思ったから、会いましょうって言ったの。
今までは私がプレッシャーをかけてたんじゃないかなと思うと、怖くて会えなかったの。
でも、今あなたの口から、ずっと後悔していて、私の事を今でも好きっていう事がわかった。
嬉しい。私もずっとあなたのことが忘れることができなくて、あなたのことが今でも好きです。"
"だから私達やり直さない?"
そう言われて、俺も涙が出そうになった。
でも、せっかく勇気を振り絞ってくれたのに、俺だけ泣いてたらカッコつかないから、俺からも言うことにする。
"やり直そう"
こうして俺たちはぽっかり空いた5年間を埋めるように愛し合った。