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意地悪ばあさんのレベルがあがりました。9

クリアな青い色のアーチをくぐりダンジョン内に侵入すると、2体のヘルウルフと、巨大な蛇のような魔獣【ヴェノムサーペント(Lv.25)】が現れた。


「くそっ、じん、援護しろ! 」

「【弱点解析】! ヘルウルフはやはり右足です!ヴェノムサーペントは額の色が違うところが弱点です!」

陣内は叫びながら石を投げ、ヘルウルフたちの注意を引きつけた。チエは鎌を使い、ヴェノムサーペントの額を二度三度斬りつける。


【弱点ヒット!ヴェノムサーペントに200ダメージ! HP:250/450】


ヴェノムサーペントが毒の霧を吐き、チエがダメージを受ける。

チエのステータスボードの色が、紫に変化した。


【チエ:毒状態! 毎ターン10ダメージ! HP:190/200】


「ちっ、毒か! じん、解毒剤持ってるか!?」

「解毒剤なんて、あるわけないじゃないですか!スーパーで買った粗塩しかないですよ」

「とりあえず粗塩でもいいから、こっちに撒け!」


陣内は粗塩をチエに向かって撒いた。チエのステータスボードの色がもとに戻る。


【状態異常解除!】


「ナイス、じん! これでいける!」

「えぇ……こんなんでいいの?ただのスーパーで安売りの粗塩だよ……」

「毒さえ消えれば、なんだっていいだろ!――ほら、ぼーっとするなっ」


チエは再び鎌を使いでヴェノムサーペントを攻撃。陣内は虫取り網を振り回しヘルウルフを牽制しつつ、チエが蛇を仕留めた。


【ヴェノムサーペント撃破! 経験値+300!】


だが、ヘルウルフ2体が陣内に襲いかかる。陣内は虫取り網で応戦するが、HPが削られる。


【陣内:HP 60/100】


「じん、下がれ! 【威圧オーラ】!」

チエが叫び、ヘルウルフの攻撃力を再び下げる。鎌を振り回し、2体を同時に攻撃。


【連撃ヒット! ヘルウルフAに120ダメージ! ヘルウルフBに120ダメージ!】

【ヘルウルフA、B撃破! 経験値+400!】

【チエ:レベルアップ! Lv.18 → Lv.19】

【陣内:レベルアップ! Lv.7→ Lv.9】

【新しいスキル:緊急回避(1ターンに1回、攻撃を50%の確率で回避)】


息を切らしながら、チエはダンジョンの奥をを睨んだ。とりあえず、直ぐには他の魔獣はやってこないようだ


「レベル差ですぐにレベルがあがるな……。レベリングには最適だが。」

「山沢さん、何かドロップしてます! 【蛇身の皮】だって! 鎌にまた合成して強くします?」

「あー……いや、じんの武器をどうにかしようか。私の鎌だけじゃ手が足りなすぎる」

「俺の武器って、今持ってるのはこの虫取り網だけだけど……」

「【アイテム合成】したら武器になりそうじゃないか?」

「えぇ……山沢さんがいいなら、やるだけやってみます―――【アイテム合成】」


陣内がスキルを発動させると、【蛇身の皮】が虫取り網に浸透していく。最後に赤い光がパッと散ると、虫取り網は柄も網も蛇柄になっていた。


【封印網】

効果:魔獣を捕獲時、50%の確率で魔力を吸収し弱体化。

説明:【蛇身の皮】を編み込んだ特殊な網。魔獣対策に最適。


「山沢さん、めっちゃカッコいい網できた! これで魔獣、ガッチリ捕まえますよ!」


陣内が封印網を振り回した。

チエは鎌を手に、ニヤリと笑った。


「いいね、じん。この調子魔獣だろうが、センニンだろうがまとめてぶっ飛ばしてやるぜ!」



チエと陣内はダンジョンのさらに奥に足を踏み入れた。

奥には色の違う石のアーチがあった。赤い色をしたアーチの内側には揺らめく光の膜がうねって見えた。他に道は見当たらず、その石のアーチをくぐると周囲は一変する。

薄暗い洞窟に変わり、壁には不気味な青い苔が光を放ち、足元には冷たい霧が漂っている。遠くから低いうなり声が響き、魔獣の気配が濃厚だ。


チエは鎌を握り、陣内は虫取り網とスマホを手に周囲を警戒した。


「じん、気ぃ抜くなよ。さっきよりヤバい魔獣の気配がする……」

「了解です、山沢さん! でも、この霧…なんか変な感じしますね……。【鑑定】かけますか?」


陣内が【鑑定】を発動しようとした瞬間、霧が渦を巻き、目の前に人影が現れた。チエの動きがピタリと止まる。


「…美咲?」


そこに立っていたのは、チエの末娘・美咲だった。白いワンピースをまとい、長い髪が霧の中で揺れている。中学生のあの時のままの姿。しかし、彼女の目は虚ろで、顔は青白く、まるで幽霊のようだった。


「母さん……なんで……なんで私を助けてくれなかったの?」


美咲の声は冷たく、チエの心を突き刺した。チエの鎌がガタリと地面に落ち、彼女は膝をついた。


「美咲……お前……生きて……? いや、違う、死んだはずだ……!」

「この人は……? 山沢さん、どうしたんですか!? えぇっ、動いて下さい!」


陣内が慌てて叫ぶ。

だが、チエは動けない。美咲が一歩近づき、責めるような口調で続ける。


「母さんのせいだよ。いじめられてるって言ったのに、母さんは助けてくれなかった……私を見てくれなかった。母さんの無力さのせいで、私は死んだんだ!」


チエの目から涙がこぼれ、ステータスウィンドウに異常が表示された。


【チエ:状態異常・心の呪縛(行動不能、毎ターンHP10減少)】


【HP:180/200】


「山沢さん……! 駄目だ、俺の声が聞こえていないみたいだ……」


陣内はチエの肩を何度も揺するが、チエは項垂れたままだ。目の前の見知らぬ少女は、チエを見つめており、陣内のことなどみえていないようだ。


「くそ……。俺に出来ることは……」


陣内は美咲の幻に【鑑定】を発動した。


【幻影:美咲(Lv.15)】

HP:無限(破壊不能)

攻撃力:0

防御力:0

特技:心の呪縛(対象のトラウマを呼び起こし、行動を封じる)

備考:ダンジョンの闇より生成された幻。実体を持たない。


「山沢さん、【鑑定】しました!こいつは幻です! 本物の美咲さんじゃない!」


陣内が叫ぶが、チエは震えながらうつむいたまま動けない。美咲の幻がさらに近づき、冷たい手でチエの頬に触れる。


「母さん、私を蘇らせてよ。ダンジョンの扉を開いて、魔素がこの地に溢れたらたら私を生き返らせられる。センニン様がそう言ったよ。ね、私を生き返らせて!」

「山沢さん、しっかりしてください! 美咲さんが生き返るなんて、センニンの嘘に決まってます! 俺らに扉を開けさせようとしているだけです!」

「……嘘……? ダンジョンの、扉……」

「ダンジョンの扉が開いて、異世界の魔素に溢れたら、山沢さんの家が魔獣に壊されちゃいますよ!」

「私の、家が……」

「山沢さんの、家族の思い出の、ある家です。」

「私の、家族の家……」


チエの目がわずかに動き、鎌を握る手に力が戻る。だが、美咲の幻が再び囁く。


「母さん、私を置いてくの? また見捨てるの?」


チエの心が揺らぎ、【心の呪縛】が強化され、HPがさらに減少。【HP:160/200】


陣内は虫取り網を振り、霧を払おうとするが、幻には効果がない。


「母さん、私を蘇らせてよ。ダンジョンの扉を開いてよ!」


その時、奥から新たな魔獣が現れた。巨大な蜘蛛のような魔獣【シャドウスパイダー(Lv.22)】が、糸を吐きながら迫ってくる。


【魔獣:シャドウスパイダー(Lv.22)】

HP:350/350

攻撃力:90

防御力:60

特技:毒糸(対象を拘束+毒状態)


陣内はチエを庇うように立ち、【緊急回避】を発動。蜘蛛の糸を辛うじて避けるが、チエは動けないまま。


「山沢さん、頼むから立ち上がって! 幻の言うこと信じちゃダメです! 美咲さん、こんなこと望んでないはず!魔獣が溢れたら山沢さんの家も壊れますよ!美咲さんにとっても、大切なお家なんですよね?」


「そうだ、扉は開けちゃ、駄目なんだ……」


チエの目が再び動き、陣内の声が彼女の心に届き始めた。チエは震える手で鎌を握り直し、立ち上がる。


「……美咲、ごめんな。母さんが……弱かった。でも、てめえ! 娘の死を利用するなんて、許さねえ!」


【心の呪縛解除! チエ:HP150/200】


チエは【威圧オーラ】を発動し、シャドウスパイダーの攻撃力を下げる。続けて鎌を連続で蜘蛛の脚を斬りつける。


【連撃ヒット! シャドウスパイダーに180ダメージ! HP:170/350】


陣内は【封印網】で蜘蛛の目を狙い、動きを鈍らせた。チエがさらに鎌を振り、蜘蛛の胴を切り裂く。


【クリティカルヒット! シャドウスパイダーに150ダメージ! 撃破! 経験値+350】


【チエ:レベルアップ! Lv.19 → Lv.20】

【異常状態耐性】


【陣内:レベルアップ! Lv.9→ Lv.12】

【新しいスキル:解析強化(【鑑定】【弱点解析】の精度と速度が向上)】


チエは息を整え、美咲の幻を睨む。


「幻なんぞ、もう効かねえ。美咲は私の心の中で生きてる。蘇らせる必要なんざねえ!」


チエがさけぶと、美咲の幻が揺らぎ、消滅した。

肩で息をして呼吸を整えているチエに、陣内はリュックにあった水を渡す。

ゆっくりと水を飲み干すと、チエは陣内に頭を下げた。


「じん、助かった。こんな姿みせて、すまないな……」

「そんな……そんなことないです……。」

「美咲は、私の末の娘なんだ。中学生のときに亡くなった……」

「自殺、だったんですね」

「そうだ。いじめだった……。学校側も加害者側も認めてはいないが……。色々抗議したり裁判をしたりしたが、なにも変わらなかった。私は美咲の無念を晴らせないままでいるんだ。」

「山沢さん……」

「そんな弱い心に付け込まれるとはな。くそ、ダンジョンめ……」


チエは鎌を肩に担ぎ、陣内に目配せした。


「扉はあけさせない。じん、どーせセンニンの野郎、最深部で待ってるはずだ。ぶっ飛ばして、このクソッタレな企みを終わらせる!」

「了解です、山沢さん! 先に進みましょう!」

「よし、じん、援護しろ! 行くぞ!」

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