少し戻って
ゆうくんは手錠で繋いで動けないようにしたまま。私はうるさく鳴る心臓を抑えてバレないようにトイレに駆け込む。
「くっ、、、どうして、、」
あぁ。どうしてもアイツがチラつく。
記憶の片隅から常に私の邪魔をする。
一般的に父親と呼ばれるヤツは私を幼いことから凌辱していた。
お母さんがいない時はいつも。
バレないように殴るのは見えない所を。
とても耐えられたものじゃなかった。
私の尊厳も
青春も
家族も
全て奪った。
私を汚すだけ汚した。
好きな人が出来た時そういう雰囲気になることは何度もあった。
でも、、、でも!!
私にとってその行為は苦痛でしかない。
アイツの顔がチラつくんだ。
見つけ出して殺す。そんな目的で生きていた私が出会えたのはゆうくんだった。
ゆうくんは何も知らなかった。
だから決意した。
私がゆうくんの全てを肯定する。
ゆうくんは私が守る。
決して私の二の舞にはしない。
だけど私は気が付いたらゆうくんの下腹部に手を伸ばしていた。
アイツがチラついた。
そして重ねてしまった。今の自分がしていることはアイツと同じじゃないかと。
でも違う。違うの。
私はゆうくんに幸せを教えてる為に。穢れた欲望と一緒なわけがない。
「ふぅ~」
深呼吸で整える。
これ以上はきっとキリがないし考えが纏まって少し落ち着いてきた。
ゆうくんが心配しちゃうし戻ろう。
「あ、お姉さん!見て!見てください!」
「うん?どうしたの?」
凄く嬉しそうなゆうくんを見て安心する。
ゆうくんが指差す場所を見ると、
「さっきお姉さんが噛んでくれたところ!凄い綺麗に跡になってます!」
「ほんとね」
「はい!僕とっても嬉しいです!」
「どうして?」
「え?だってお姉さんが僕をギュッてしてくれた証ですもん!見るだけで思い出しちゃいます〜」
「ゆうくん、、、」
ゆうくんにとって。私にとっても。
あざは憎しみの対象だったはずなのに。
ゆうくんは笑って喜んでいる。
そして私も胸が高鳴るのを感じていた。
「ゆうくんはずーと私のものだから」
「はい!」
そうだ。私は間違っていない。
こんなにも笑ってくれているのだから。
この先もゆうくんを愛していいんだ。
ちょっとしたトラウマもゆうくんとなら全部笑顔に変えていける。
私は間違っていない。