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温もりの中で

やめて!やめて!

僕の声を打ち消すように振るわれる拳。

痛い。痛い。

僕を殴る手が振り上げられる度に恐怖が増していく。

お母さんはとっくに逃げ出した。

なんの為に殴られているかわからない。

愛情とはかけ離れた父親の行為を僕はただ受けるしかなかった。


「やめて、、、、やめて、、、」

「ゆうくん、、、?」

「!?」


ここは?そうだお姉さんの家にお邪魔させてもらっていたんだ。

ってすごい柔らかい感触だけど、、


「ごめんねびっくりした?ゆうくん寝ちゃってたから布団に移そうとしたんだけどちょうど起きちゃって」

「あ、ごめんなさい」

「いいのいいの。それよりお腹減ってるでしょ?カレー作ったから良かったら食べて」

「すみませんありがとうございます」


なぜお姉さんは僕なんかにここまでしてくれるのだろう。ほんとに良いのだろうか。

わからないが今は台所からするカレーの匂いに僕の頭は奪われた。


「ゆうくん今持って行くからテーブルで待っててね」

「はい、すごくいい匂いです」

「やめてよー。それでまずかったら恥ずかしいから」


いや。味なんか関係ない。

ただ、いつも近所からするカレーの匂いに僕は憧れていた。

僕にとってはその匂いは幸せな家族の象徴だった。


「いただきます」

「はーい。どうぞ~」


僕は緊張しながらゆっくりと口へと運ぶ。


「お、おいしい」

「よかった~」


美味しい。

誰かが作ったインスタントじゃなくて。

お姉さんが切ってくれた野菜一つ一つを噛み締めて僕は幸せを感じる。


「もうゆうくん。泣かないでいいのに」

「え、、?」


気が付いたたら僕は涙を流していた。

なんて幸せな時間なんだろう。

僕は涙を拭って一心不乱にカレーを食べた。

けど、少し怖かった。幸せを知ってしまうのが。

だけど。だけどきっと今だけは僕に与えられたご褒美なのだろう。

とろりと甘いカレーをすぐに食べ終わった。


「ごちそう様でした」

「よかった。ゆうくん美味しそうに食べてくれるから作ってよかった」

「ほんとに。ビックリするくらい美味しかったです」

「うん。ありがと!」

「あ、片付けは僕が!」

「いいのいいの。ゆうくんは休んでて」


お姉さんは慣れた手つきでお皿を片付けてくれた。初めてのことが多すぎて僕の頭は追いつかなくなった。

お姉さんは片付けを終わらせ奥の部屋から布団を取り出してくれた。


「これ来客用に買ったんだけど使ってなくてさ。これで一緒に寝よ」

「いっ、一緒にですか!?」

「そうほらいいからこいっ!」


強引に腕を引っ張られ布団に引き込まれた。


「これは駄目じゃないんですか?!」

「いいのいいの!ほらぎゅー!」

「んー!!!!」


お姉さんに抱きしめられて息ができない!

離そうとしても僕の力じゃ到底敵わない。


「ごめんごめん。でもほら。私の胸で寝ていいからさ」

「え、でも」

「ええい!また抱きしめるぞ?」

「、、はい」


諦めて僕はお姉さんに引っ付いた。

なんて安心するんだろう。再び僕は眠りについた。


「ゆうくん、、、怖い夢見ないようにお姉さんが守るからね」







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