幸せに包まれて
僕の意識は今どこにあるのだろう。
わからないし、実態があるのかも怪しい。
けれどほわほわした白い僕の心が温かく包まれていく。
やがて包んでいたものは僕の心の中に入ってきて僕の心を自由に動き回る。
やがてほわほわとした白いものが内側から赤く、染め上げられていく。
僕の意思は無くっていき、やがて真っ赤になった。
もう何も考えることができない。
直接送り込まれる幸せを受け取ることだけが僕の心の役割へと変わっていく。
こんなにも僕は支配されていたのか。
あぁ、もう消える。僕というものが消えていく。
最後の最後に座り込んだ過去の自分の姿が見える。
おいで。君は今とっても幸せなんだ。
こっちで僕と一緒に幸せになろう。
手を握り、こちらに引っ張っていくと目の前で少しずつ消えていった。
あぁ、あの頃の僕を消していく。
トラウマとかそんなものも全て消えていく。
これで完全に僕の心はみゆきさんに全て捧げた。
満足していると白かった何かが急速に上に上がっていき、体にすっと入る。
その瞬間僕は目が覚めた。
「ゆうくん、、、」
「みゆきさん、、」
みゆきさんと目が合い、そっと抱きつく。
幸せの正体にたどり着いた。
「ゆうくん、、これ持てるかな?」
みさきさんの手にはみさきさんがよく朝ご飯を作るときに使っていた包丁が。
僕は何も言わずに受け取った。
「これでずっと一緒だね」
みゆきさんの手にはもう一本の包丁が。
あぁ、今から僕達は死ぬんだ。
「ゆうくん大好きだよ。ずっと一緒にいようね」
「みゆきさん大好きです。ずっとずっと一緒にいましょう」
そっと僕のお腹に冷たいものが当たる。
みゆきさんと一緒なら永遠に幸せになれる。
「ゆうくん。わかるよね?」
「はい」
僕とみゆきさんは向かい合いながら横に寝ていた。
そっとみゆきさんのお腹に包丁を当てる。
「ありがとうゆうくん」
その言葉と同時にみゆきさんと抱き合いお互いの包丁がお腹に刺さった。
「ありがとうみゆきさん」
最後まで言えたかな。
これで僕は永遠になった。
「もう、ゆうくんたら最後まで甘いんだから」
力不足でみゆきはまだ死ねていなかった。
再び抱き締めてゆうの手に添える。
「今行くからね」
そう言ってゆうの手を押し込み程なくしてみゆきも永遠になった。
流れていく血が二人を中心に広がっていきもはやどちらの血液かもわからない。
二人は幸せに包まれ永遠になった。
1週間後。同僚が警察にみゆきが来ないことを相談し部屋に入ったところ、二人の死体を発見した。
悲鳴がマンションを駆け抜け慌てた警察官が二人の息を確認し無いことがわかると肩を落とした。
二人の幸せそうな死に顔に誰一人気付くことなかった。
ありがとうございました




