少し温かい
お姉さんの手をしっかり握る。
離されないように。
「君の名前を教えてくれるかな?」
「ゆう。漢字はわからない」
「そっか!素敵な名前だね!私は美雪。お姉さんでも好きな方でよんでね!」
「よろしくお願いします」
まだ恥ずかしいのでお姉さんでいこう。
しかし、雨の中お姉さんの傘一つで帰っているからどうしても大人のお姉さんが僕の為に濡れてくれているのがわかる。
「お姉さん。僕は濡れているので大丈夫ですよ」
「だめだよー。これ以上は風邪引いちゃうかもよっ、、、、はくしょん!」
「えーと、、、」
お姉さんは恥ずかしそうに頬を赤らめる。
やっぱり僕のせいで寒いんじゃないだろうか。
「気にしないで!ちょっと花粉症かな?うん。そうだよ!」
「そうですね」
お姉さんは一体どこまで優しいのだろう。
自分が寒い思いをしてまで僕なんかを助けてくれるのだろう。
なんで人の為にそこまでできるかわからない。
自分が一番大切なはずなのに。
「おっ雨弱くなってきたね。まあ私の家そこまから今更だけどね」
「お姉さんほんとに僕家に行ってもいいんですか?」
「なに?おいでって言ってるでしょ。ほら着いたよ」
お姉さんの家はアパートの三階だった。
オートロックを解除してエントランスからエレベーターに乗り、出てすぐだった。
「ゆうくんもほら上がって。どうしたの玄関に立って」
「あの僕濡れてます」
「うん。だから早く上がって?」
「いや、その、、お姉さんの家が汚れちゃいます」
「なに?そんなの気にしてたの?いいからほら」
「あわわわ」
両脇に手を差し込まれ強引にお風呂場まで連れて行かれた。
「ゆうくんさ。どれだけご飯食べてないの?」
「わからないです、、」
お姉さんはゆっくり上から下まで僕の体を見て
「私そんなに力ある方じゃないのにゆうくん軽かったから。お風呂終わったらご飯作るからね」
「ありがとうございます」
お姉さんは着替えとバスタオルを置いてくれた。
シャワーなんて久しぶりだし、お湯が出るのにもビックリした。
お姉さんも濡れてるのに先に入れてくれて申し訳ない気持ちだ。
「すみません。上がりました」
「おっ似合ってるじゃーん」
お姉さんのシャツだからブカブカだけど、安心する。匂いかなって思ったけど口が裂けてもそんなことお姉さんに言えない。
「じゃあちょっと私も浴びてくるからテレビでも見てて」
「はい」
お姉さんはお風呂場へ行ってしまったが僕はどこに座ればいいのだろうか。ソファは絶対駄目だしカーペットも汚れちゃうかもしれないから。
そっと僕は部屋の端のほうに座った。
お姉さんが付けて行ってくれたテレビの音が聞こえるから充分だろう。
お姉さんの部屋はとても綺麗に片付いていた。
こんな所に僕がいていいのか不安になるけどお姉さんの匂いがするシャツを嗅ぐと安心する。
駄目だ。今日は疲れた。お姉さんが上がるまで待たないといけないのに僕は気が付くと眠っていた。