007 強い魔物を魔王軍に勧誘しよう②
「さあ、ゴーレムよ熱いバトルを楽しもう!」「おう」
偉そうに異空間の入口をくぐった緑ゴーレム。
「お前もは」バタン!そのまま入口を閉じた。ここは私でないと開錠は不可能だ。
「くくく、私がオスだと言った罰。後回しでボコボコの刑だ」
戦わない、という選択肢はないようだ。
それより、じっとり視線が気になる。だけど神格がないので神眼は使用不可。なら発氣の応用技【打診】を使ってみようか。
コウモリの超音波の応用で発氣を周囲に放ち、反射して戻ってきた発氣にこびりつくエネルギーをチェックして相手・・おわっ!
少し油断していたけど、死角から大きな狼が襲いかかってきて、お腹にがっちり食いつかれた。
「スキだらけだったぞ。あまりうまそうではないが、喰い殺してやる!」
だが、私は呆れていた。こいつは戦士ではない、と。
君ねえ、そういうのは腹を喰い破って瀕死にしてから言うんだよ。ピンピンしている相手に余裕を与えすぎ。口の中にある右手に、地属性魔法で作った特大釣り針を握り、こいつの舌にぶっ刺してやった。
「ぎゃ!?」痛みで噛みつきが緩んだのでさっさと脱出する。釣り針、かえし付きだから外すの大変だぞ。
「き、貴様〜!どこからこんなものを?噛みちぎってやる」・・ガリ、ゴリ、バキ!
あれ?結構魔力を圧縮したんだけど、予想以上に弱体化しているな。体のほうは痛みはあったけど牙でも無傷だ・・そういえば痛みって久しぶりかも。いいね、刺激があって楽しいな。
「フェンリル・・ではないな?ただの狼の長命種か?」
体長は5m程か。ルビーのような赤い毛並みと同じ色の瞳が非常に美しい狼だ。魔王ヘートヴィヒも赤、魔王シルヴァーナは・・ピンクだけど赤系だ。火属性の魔物が多いのかな?
それにメスみたいだから仲間に勧誘してみようか。毛並みもいいのでこいつは抱き枕にいいかも?
しかし、向こうは相当にお怒りだ。特に『ただの狼の長命種』という言葉が気に入らなかったようだ。
「ただの狼!?無礼な!それとフェンリルなどという神殺しと一緒にするな!我は大狼、いずれ大神に至る存在よ。早く強くなって、ゆくゆくは最高神の側に侍る予定だ」
うーん、こいつは大狼の幼体だな。大狼としては最下層だ。鑑定眼レベルの権能は残ってるので確認出来た。
でも、自ら私の側に侍りたいって言ってるし、きれいでもふもふ・・やっぱり抱き枕に決定だね。
「よし、まだ弱いけど望み通り、お前は私の配下にしてやろう」
「な!?なんで貴様に下ることになる!?それに弱いだと?・・・なら、私の攻撃を受けて死ね」
戦闘に移行したようで、私の周りを時計回りに回りだす。うむ、脚力はなかなかだ。
様子を見ていると、急に反転したと思ったら、すぐ側転して、後方から私に牙の攻撃だ、私は避けられずにその身に受けることになる。
その後も、トリッキーな動きに身体の反応が追いつかず、数撃の攻撃を受けた・・身体の反応も予想以上に悪いな。
「どうだ!・・・って、何か元気そうだな?」
「うーん、攻撃が温くて。そうだ!この左手を噛みちぎってみてよ」
そう言って左手を前に出すと「な!?」と驚かれたが「後悔するなよ!」と素直に左手を飲み、その肩口付近に噛みついた。
「はみひぎって・・はれ?」
はあ、子供は素直だねえ。足から順次ひねりを加えながら、その力を増幅・流動しながら最終的に右拳へ(【流天翔】という技能だ)。その蓄積した爆発的な力を右フックで狼の側頭部に叩きつけた!
「はぐあ!?」
うーん、狼はふらふらしているが、左手は咥えたままだ。基本スペックでは威力はいまいちだね。
「それなら、あと何発で倒れるか検証しようか?」
「ひ!・・はら?ひげられらい!?」そりゃ、君の奥歯をがっちり掴んでいるからね。
「さあ、最低でも50発は耐えてね?顔、変形しちゃうかも?」と言ったら
「あわわわ・・ほへんがさーい!」と泣き出してしまった・・やはり幼体、こんなものか。
「・・・で、お前は子供の敵討ちをするのか?」
幼体の大狼を親のもとに放り投げる。
油断したのはもちろんだけど、幼体に噛みつかれたのはこいつの親のヤバそうな視線を注視していたからだ。
私の言葉を受けて、森の中から出てきたのは幼体より少し大きい7m程のサイズ・・肉の引き締まり方が段違いな銀色の大狼。しかも、きっかけがあればいつでも大神に進化出来る存在だった。
「娘がご無礼を。私はあなたを【世界樹の守護者】の元に送る指名を受けているだけです」
・・・よく言うよ。娘をけしかけて、あわよくば私と戦う大義名分が得られると思っていたくせに。
上手くいかなっかたので内心でイライラしている。その証拠に横たわる娘の顔を踏んづけてる。
「は、母上!?」娘の顔をグリグリしている大狼母。
「なら、お前と戦って満足できたら守護者に会ってやろう」「・・・へ?」
「どうだ?受『受けます!仕方がないですね!貴方の希望ですものね!喰い殺してもいいですよね!!!ね!!!』・・ああ、いいぞ」