006 強い魔物を魔王軍に勧誘しよう①
「さて・・・何やら悪寒がするので、問題は早めに片付けようと思う」
「いや、もう姐さんが大魔王として平定したほうが早いだろう?・・ぶへ!?」
はい、魔王ヘートヴィヒ君!後ろ向きな発言は鉄拳制裁です!そして聖痕を期待している魔王モーヴ(バイコーン)よ。
「お前の場合は不始末の度に私との距離を1mずつ伸ばす。分かったな?」
「そ、そんな!?」情けない顔をしている魔王達を並べて、今後の方針を説明する。
「まずは、私も協力はするけど、率先して戦うことはしない。何故ならお前たちが受けた仕事だからだ!主役は君達ね」
「それは・・・」「でも魔王なのにこれだぜ?」「流石にこんな弱いとは・・ねえ?」
まあ、それはもう仕方がないだろう。ただ、魔王なのでポテンシャルはあるはずなのだ。ならば自分の努力でもっと強くなればいいのだ!
「そんなお前たちを、優しーい教官として私が指導してあげるよ」
その瞬間、脱兎のごとく魔王アマンディーヌ(ダークエルフ)が逃げ出した。さすが元部下、いい判断だ、私の親切指導を知っているお前なら、そう動くよな。
それを先回りして、発氣を溜め込んだ右ストレートを魔王アマンディーヌの丹田に叩き込む。
「ぐふ!?うんぎゃーーー!!!これ・・二度目だけど・・やだー!!!!」
これが、猿でも覚える発氣(強制)開放の儀式だ。
相手の丹田に発氣を大量に流し込み、強引に丹田の道をこじ開ける。レディースチームと最高神教会の神徒メンバーは全員これを受けている。
この一撃だけで発氣のエネルギーが解放されるのだから簡単だろ?・・・ただし、コントロール出来るまでは体中を引き裂くような激痛に苛まれて苦しむけどね。
「さあて、次は誰かな〜?」
で、ワクワクしている魔王モーヴと逃げ回る他二人に発氣を叩き込んだところ、魔王モーヴ(バイコーン)は微塵も苦痛を感じていないようで、ピンピンしている。
「女神様みずからの御手からほとばしる御力が、我が体内に。そして私の生命力と混ぜ合わさり・・ああっ!し・あ・わ・せ!」
・・・ほんと、こいつは気持ち悪い表現をするな。でも発氣の素養はピカイチだ。
「お前はその発氣を体中に循環、肉体強化しながら全力で走り回れ!目標は1時間維持だ」
「女神様のご指示通りに!そして反復します!」
さて、普通なら10分持たずに氣を使い切るけど、あいつはどうかな?初回なら30分持てば御の字だ。
「残りの3名は、まず氣を丹田周囲に留めるところからだな。それを安定出来たら痛みが無くなるぞ」
「「「は・・はい」」」
「これから私は強い魔物の勧誘に行ってくる・・戻るまでに習得しないと、勧誘してきた強大な魔物達に下剋上・・食い殺されるぞ」
「「「ひ〜!!!」」」
強い魔物は世界樹の森の最深部に居る。何故なら魔物には『人族から世界樹を守る』という重要任務があるのだ。あいつら増え過ぎると、必ず神や力の塊である世界樹にちょっかいを出すからだ。
浅い場所には弱い魔物、中間部にはそこそこの強さの魔物、魔王達の実力はここだ。そして最深部には数は少ないが本来魔王になるべき魔物たちが居るのだ。
さて、弱い魔物に攻撃されるのは面倒なので、暗黒の発氣を使って移動をする。
「発氣、陰氣【宵闇】」
魔力が少なめなので、発氣に暗黒属性の魔力を混ぜた属性氣功を発動する。今回は瘴気の森を進むので発氣に暗黒属性を付加した。
中〜弱の魔物達は瘴気と区別出来ずに私には気づかないし、見つけても今なら仲間だと思うはず。だが、強者ならその違いに気付くだろう。腐敗の瘴気と生命力溢れる陰氣の違いに。
そして、森の最奥に高速で突き進むこと5時間。ようやくお目当ての存在が現れた。
「おい、違和感の正体よ、お前何者だ?」
お!?緑のウッドゴーレムだ。森属性とかか?即座に足の周りの発氣を外氣として出し、竜巻のように回転させると、こっそりと忍び寄ってきたツタをザクザクと切り刻む。
「脳筋ゴーレムかと思ったけど、知能は高そうだね」
「世界樹様の安寧を乱すわけにはいかんからな、本来なら草木一本失いたくないのだが」
うーん、相手してあげたいけど、じっとりとした視線を感じるんだよね。横槍があると面倒だ、ならば・・・
かつて作った異空間の扉を開ける、開けるだけなら魔力は極小で済む。一から作るのは今だと魔力の4割は持っていかれるからな・・魔力消費を気にして戦うのはなんか新鮮だ。
「おい、ゴーレム。異空間の中で戦闘しようよ。ここなら周辺に影響はないよ」
「オガガガガ・・人族のオスよ!お前話が分かるな」
「・・・は?」
美麗な私が、気持ち悪い男に見えるのか!?・・こいつには目の交換が必要だな。
数少ない逆鱗に触れられ、怒りに震えるアスカ。これはゴーレムくんに同情、いやいや、アスカは弱体化してるんだから勝てるぞゴーレム!