029 エルフ王国は大混乱です(前編)
ここの場所はエルフ王国。実際にはこの国に正式な名はない。代々のハイエルフの王様の名前になるのが通例だ。
だが、次代のハイエルフ王は10歳の幼女ただ一人。通常であればエルフの子供から10名に1名はハイエルフになっていたのだが、現在は皆無。国家存亡の危機に陥っている。
魔王が生まれた当時は慌てたが、予想より弱小であり安堵していたのだが・・つい先程感知した北の魔王アマンディーヌの披露した力は、以前に見た時とは別人だった。
その想定外の事案発生に、円卓の会議室には国の重鎮5名の者が集っている。
首座には、ハイエルフの次期国王である、銀髪、銀瞳のエマ・アナベル・フレシィティ・イザベル(10歳)が疲れ切った顔で座っており、末席の存在に声を掛ける。
「魔王同士で殺し合い・・していないのですよね。つまりは四陣、4名の魔王がそれぞれ強くなった可能性があるのですね?」
「はい、四陣の主のような存在が現れてから、いきなり強く・・また、主のような存在には諜報の度に我らの存在を把握され、何故か私の名前まで・・以降は諜報を控えております」
末席に控えて、恥ずかしげに項垂れているのは諜報部隊ダーシーの長。レイラ・ダーシー。黒髪黒瞳で闇魔法を使えるダークエルフだ。
「なんと!あなた方の影魔法が把握されているのですか!?・・諜報を控えたのは正解ですね」
次期国王の右側に着座している、先々代のハイエルフ王から仕え続ける重鎮、宰相アルフレッド・コナルだ。平均300年のエルフの寿命を遥かに凌駕する1000年の時を生きる。何故か巻うんこのように髪を頭に盛っている。白髪の老人だ。
「そんなもの!我らが魔法部隊が切り刻んでくれようぞ!なあ勇者殿!」
勇ましく吠えるのが、緑の髪がキラキラ輝く、緑瞳の魔法軍大将のカニンガム・クリスピンだ。魔法に絶大な自身を持っており、彼の「ツイントルネードクラッシャー」にかなうものは皆無だ。
「・・・いや、私はエマを守るもの。あの魔王は危険です。次期国王に危険の可能性があるならば、許可出来ません。
慎重な発言をするのは勇者、金髪、緑瞳の12歳の少年だ。名はダリル・クロフォード。闇以外の7属性を使い、剣の才能も素晴らしいが・・伸び悩んでいる。
意見が出揃ったところで、エマ・アナベル・フレシィティ・イザベルが自信の希望を口にする。
「魔王は和平を求めているのですから、私は交渉の席に着きたいと思っています」
「な!?」「それは駄目です!」
私の発言から、不穏な空気が流れる中で「・・ひ!?」と怯えた声が上がる。皆でそちらを見ると・・・
「弱いんだからさ、和平しちゃいなよ?レイラちゃんもそう思うでしょ?エマちゃんも、我慢は体に悪いよ?」
諜報部隊の長、レイラ・ダーシーの後ろで、その両肩をしっかりと掴む女性が、いつの間にかそこに居た。
金髪金瞳で女神様と思えるほどの美貌、胸はちょっと残念なスレンダーな少女だった。
「「何者だ!?」」と声は出るが、誰も体が動かない。「爺さん、ここは大人しくしておけ・・バラすぞ?」
唯一動けていた宰相アルフレッド・コナルはこの言葉にビクッと反応して、その後の動きを封じられる。
「報告では・・アスカでしたか?魔王の配下が何用ですか?」
次期国王であるエマは、恐怖に心を塗りつぶされそうだが、震える体を押さえつけ、なんとか我慢して気丈に声を出すと・・いつの間にはアスカに抱かれていた。
「おおっ〜!恐怖にかられながらも気丈に・・なんてかわいい生き物なんだ〜!」
頬をスリスリされて・・思わずぽかーーんとしてしまう。
そして魔王の配下は、次期国王を抱きながら爆弾発言をするのだ。
「よし決めた!お前ら全員鍛えてやろう。魔王に対抗する自信を。そして国を守るための力を!」
えっ!?魔王の配下が・・魔王と対抗するために私達を鍛えてくれる!?あ・・あの、意味が?分かりません!エマは正直に話した。
「あー、そうだよね。なら、敵とは言えど私に頼るしか無い。逆らえば死、という力を見せてあげる。この結界の操作が出来ない時点でエルフ国は存亡の危機だし。じゃあ早速仕込んでくるね〜」
そういうことではないのですが・・一方的に話して、いつの間にか消えていた。両手には美味しそうなお菓子がいっぱいで。いや、それよりも・・・
「あの方、どうやって結界を抜けたのでしょうか?」
「「「「あ!」」」」「純粋なエルフしか通行出来ないはずなんですが・・あの方は、もしやエルフ?」
「「「「絶対に違います!」」」」
一体何を何処から整理したものやら・・それには甘味が必要ですね。我慢できずにアスカからのお土産に手を伸ばす次期国王様でした。




