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018 ダニイル・ルカ共和国は政情不安のようです

ゲートを潜ると、そこは豪華な応接室・・ではなく研究室という名の汚部屋だった。そこに5賢人の残り二人も待機していた。


「「「「「さあ!【覇道回廊はどうかいろう】をあれほど早く開いたコツを!!!」」」」」

魔法馬鹿め・・・くくく、交渉相手に交渉前からそんな弱みをみせてもいいのかな?高位の者達らしいので上手く使えそうだ。

「お前ら、教えを請うその態度。もてなしの心もないのか?お・も・て・な・し・だ。情報の対価をきちんと提示してくれないと」

さっさと和平交渉を決めようとしたその瞬間、外から大量の執事と侍女達がドタドタと入ってきて、部屋の掃除の傍らで5賢人とやらを縛り上げ、その口を封じた。

そして、ササッと高価だが汚いテーブルを磨き上げ、着席を促され、美味しいお茶と甘味を用意してくれた。使用人は優秀だな。

美味しいお茶を堪能していると、苦労がまざまざと顔に出ている若い男女が入室してきて、自己紹介を始めた。


「貴方が魔王の参謀ですね。私はダニイル・ルカ共和国の臨時代表のフロリタ・ダニイル・アマラと申します・・5賢人のことはお忘れを」

オレンジの髪と瞳の十代男性だ。イケメン臭の漂う・・私の敵だ!

「お初に、私はダニイル・ルカ共和国の臨時代表のアラセリ・ルカ・アンへリナと申します・・交渉はここからでお願いします」

こいつはエルフの血を引いている事が分かった。先祖返りかな?耳は普通だけどエルフ特有の気配があり、容姿も緑髪で瞳も緑だ。亜人の血を引くものが代表か。これは切り札に使えそうだ。

うむうむ、二人の容姿を確認すると疲労が蓄積されているが、どちらも凛とした気品がある。

ダニイル・ルカ共和国は2つの国が合併したものらしいので、こいつらはそれぞれの元王族だろう。

しかし、元とはいえ臨時代表である二人の王族に護衛がいないのは・・まあ、5賢人だっけ?アイツラにも護衛はいなかったし、平和な国なのだろうか。


「私は魔王軍参謀、アスカと申します。今回はダニイル・ルカ共和国との友好を結びに来ました。ですが疑念は当然、まずは、『世界樹の名にかけて嘘偽りが無い』ことを宣言します!」

この言葉に王族の二人はあきらかにほっとした表情を見せた。魔族が世界樹の忠実な守り手であることは有名だからだ・・だが、為政者としてはまだまだ未熟のようだ。

正直、私は世界樹に忠誠を誓われる側だから、口約束など破り放題。それを除いても魔王軍内部に世界樹とは関連のない外部招集者が居ることも想定しないとダメだ。

今回は友好のためなのでその辺りの危険性を二人に教え「これに反応しない者たちとは交渉しないように」と、世界樹の小枝も渡す。小枝ついては「この波動・・本物です」アンへリナが認めた。


「さて、相手を尊ぶことを知らないコイツラにも言いましたが、こちらの手土産は魔法技術です。で・・貴方達は最高権力者らしいコイツラの暴走を止められる存在なのですか?そうでなければ交渉など出来ませんし、コイツラはこちらの言う事を100%聞き入れそうですから、国を滅ぼす危険性がありますよね?」

こいつらの弱点は致命的だ。言葉は丁寧ながらゲシゲシと頭を踏みつけるように、無礼な言葉を叩きつける。

スキだらけの相手に対しアスカには似合わない手ぬるい対応。

アスカはまだ気づいていないが、エルフの先祖返りアラセリ・ルカ・アンへリナをひと目で気に入ったので、庇護する気満々になっている、だから助言をしているのだ。


「貴方達の魔法技術は、私からしたら10年は遅れているようですし。それを教えるならもちろん、それなりの代価を期待しておりますよ・・国民総奴隷とか?いやいや和平の使者ですので、これは冗談です、ふふふふ」

5賢人の危うさを示すため、そう煽ってやると、二人は頬をひくつかせていた。

だが二人の登場が遅れていたら・・あの5賢人なら間違いなく受け入れていただろう。

ここで、別の空気の読めない者たちが

「「それは素晴らしい!全てはアスカ様のものです!」」

私の付き人聖女共が叫びだしたので、実力行使で沈黙させる。


「失礼しました・・ですが魔王軍とは有象無象の集まり。こういう輩も居るのです。そうですね、いい機会ですので政治と魔法を分離をしたらいかがですか?」

「・・・分離・・・ですか?」

あの、魔法にしか興味のない5賢人に国の指導など無理だろう。今までは国内事情で済んだが、これからは魔王を含めた他国との交流も必須である。

「そう、5賢人は雑事なく魔法を極める国の象徴。国の運営は新たに複数の代表者を決めて、その代表者達が国政を行う。でないと、これからの動乱についていけませんよ?」

「そうですね、例えばダニイル州で20名、ルカ州で20名の政治的な智者を集めて賢人議会を作ります。そこで年間予算と国政、そして国の未来を決める。というのはいかがですか?」

「出来れば、数年毎に国民による賢人選抜選挙を行い、数多の候補の中から国民が推薦する賢人を決める。そうすることで国民自体が率先して政治に参加、その意識付けの下地になるでしょう」

思いつきを話すと、この国の実情を突いたようで「「その思案!素晴らしいです!」」号泣しながら感動されてしまった。

泣き崩れる二人が話す内容は、前代の3賢人時代までは「賢者」の名にふさわしく、魔法の先駆者でありながら国の指導者であり続けたらしいが、今の5賢人はただの魔法バカらしい。

その5賢人が地位について5年、国民達も「こいつらやばくね?」と気づき始めて、国内が情勢不安に陥っている最中であり『国民参加の政治』というフレーズがそれを打開するきっかけとして心に響いたようだ。

魔王誕生に加えて、隣国のグレニール王国の動向も怪しく、まさに四面楚歌の状態だったそうで・・てか、私にそこまで話して良いの?

「あの・・アスカ様には従ったほうが良い、と声が聞こえるのです」「声?」

何の声なのか?聞こうとしたところ、聖女達の邪魔が入る。


「素晴らしい!アスカ様は教会の最重要人物なのですよ」

「最高神を信仰しても問題は解決しませんが、健全には生きられるのです」

「「さあ!あなた達も最高神教会に入信しましょう!」」


そんな最中に聖女共が最高神教会への勧誘を始めた・・お前らの暑苦しい教会なんて誰も興味ないだろwww

「えっ!?最高神教会の方なのですか!?ようやく我が国に・・ようやく訪れて頂けました!是非に我らも信徒に!」

聖女達の言葉に過剰に反応する二人・・なんであんな狂信者教会の信徒になりたいんだ?全く分からん。




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