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010 強い魔物を魔王軍に勧誘しよう⑤

「さあ、尻尾と左足も無くなったぞ。後ろの両足が消えたら、次は身体だけど・・どこまで生きれるかな〜?」


高貴を取り戻す、その方法が分からずに焦る大狼たいろうエヴェリーナ。

何故なら、心から憎悪が際限なく湧き出してくるからだ。娘の欠損への後悔に加え、憎悪する怨敵が眼の前で娘の欠損状況を解説しているのだ。

・・・高貴に・・憎い・・私のせいで・・殺す・・高貴に・・憎い・・殺す・・憎い殺す憎い殺す憎い殺す憎い殺す!

だめだ、どうしても憎悪を払いきれない。一体どうすれば・・あいつを殺せるのだろうか・・いや、そうじゃない!娘を・・殺すんだ・・いや・・みんな殺すんだ!

徐々に憎悪に取り込まれていく、大狼たいろうエヴェリーナ。ついに精神の限界を迎えてそのまま意識を失う。

ついに憎悪に陥落するのか!?そんな危機的状況に、神からの神託が心に届く。


『エヴェリーナ、大神おおかみとは、どんな苦しい時にも気高く対応するものなのです』

『だが・・娘が!あいつが憎い!』

『なら、想像しなさい。大神おおかみとして、娘を救い、怨敵アスカを討伐する、その道筋を』

『おおっ!?そんなことが!?』

『憎悪を払うことが前提ですが、まず娘を救うためには神聖属性は絶対必要です・・そして、高貴さと娘の救助、両方一気に解決されて驚く怨敵、その一瞬の隙に、大神おおかみ、神の一撃を与えるのです!』

その言葉を聞くと、何故か脳内にその道筋がしっかりとイメージされた。ははは、あいつの驚く顔は最高ですね。もう一度、いや実際に見てみたいものです。

『ふふふ、希望を掴み取りましたね。では、闇を払いしご褒美に神罰【罪業雷】を与えましょう。さあ、怨敵に神罰を!』


「・・・神罰を!!!」ガバっと起き上がる大神おおかみエヴェリーナ、どうやら意識を失っていたようだ。

「世話が焼ける・・では復唱せよ!『大神おおかみとは、どんな苦しい時にも気高く対応する』・・ほら!」

「はい!大神おおかみとは、どんな苦しい時にも気高く対応する・・・え!?ま・・まさか!?」

「そんなことはどうでもいい!お前が一番に救うべきものは!?」

「娘です!」「よし!行け!」


バリバリと大神おおかみエヴェリーナが纏っていた雷がいつの間にか気高く高貴に白光している。そのまま突き進みスライムを消し飛ばし、娘を救出する。

だが、どうやって再生すれば・・・あれ?想像ではどうしていただろうか?

「お前、しっかり見てなかったな!」アスカからゲンコツを落とされる。

「お前の『助けたい』という想いを雷に乗せて娘に流すんだ・・ほら、徐々に再生していくだろ?」

「おおっ!・・おおっ!・・耳が・・尻尾が・・足が・・元に!」

滂沱の涙を流しながら喜ぶ、大神おおかみエヴェリーナ。その二人を慈愛に満ちた顔で見つめるアスカ。

・・・え!?お前誰だよ!?ナレーション担当たる私が、思わず見惚れてしまったのは内緒だ。


方や・・・久しぶりの慈愛モードに心の中で赤面するアスカ。

神たるもの、畏怖と自愛は必要であるが、両方備えたものなど存在しない。しかし、過去に例がない和御魂にぎみたま荒御魂あらみたま両方を極めた人物が最高神アスカである。

溢れる狂気の戦闘訓練の端々に、慈悲の心が垣間見れるのが、アスカの訓練の特徴でもある・・よほど注視しないと気づかないが。

だが、基本粗暴で人族の殻を拭いきれないアスカにとって和御魂にぎみたまを使うことはとても恥ずかしいし、慣れないことなので精神的に疲労もする。ツンデレ・・と言ったら後で殺されそうだ。

あまり使いたくない。出来れば無心に暴れまわりたい!だが、強者を育てるためには使えるものはすべてを使うことをためらわない。それが他人でも自分でも、だ。

そしてさり気なく、迷惑を掛けた娘のヘリヤにも何やら力を与えている細やかな気配り。

それが仲間たちが、他者に側近の地位を絶対に譲らない程に敬愛されるアスカの本性であるのだ。


「母上!ものすごく優しい女神様が遊んでくれて、もふもふ?してくれて、お菓子?も甘く美味しくて・・そうだ!見てください!翼も授かったのですよ!」

誇らしげに母親に成果を報告するヘリヤ。そして、すべての状況を把握したエヴェリーナが、感謝の視線をアスカに向けるが・・目を合わせず、知らん顔だ。


「そんなことはどうでもいい!ほら、お前達の成果を見せてみろ!」

「「はい!」」

ふふふ・・分かりづらい優しさだが、これこそ私の主にふさわしい!かもな。

大神おおかみエヴェリーナ、ツンデレ女神に取り込まれたようだ。


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