旅の合間に
こんにちは
ミディア寝子です
こちらの小説はシリーズにさせていただいてます
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モコモコの綿の中に、一人で忍び込んだ。
今日の夜は寒さの心配なんてない。これで一晩、温かいところで朝を待てる。きっと、明日は良いことがあるはず。悲鳴のような祈りをぽつりとこぼして、瞼の重さに瞳を閉じた。
どしんどしんと、大きな音に目を覚ます。朝の市場がもうすぐ始まるからだろうか、足音や話し声があたりに響き始めてる。綿の中からそろそろ出たほうがいいのかもしれない。
そう思い、そっと綿の中から抜け出した。いい日だな青空を眺めながらそう思った。
柔らかい寝床で練れたのは、いつぶりだろうか。ウキウキと歩き出す。
いつも旅をしてばかり。右も左もわからないところで、少しずつ前に進んでいる。
親の顔はもう覚えていない。もしかしたら、時々会う仲間の中に親がいるのかも…?
小さなときに独り立ちした僕は、もうとっくのとうにお兄さんになった。きっと、親と出会っても親が僕をわからないんじゃないかな。
少し寂しいけれど…それでも、別に悲しくはない。そう思いながら飛んでいた。
そのとき、突然羽が重くなる。もうすぐ雨が降りそうだ。羽が雫にやられない様に…。そう思って小さな木の陰に入った。
そのとき…どこかで聞いた、温かい声が聞こえる。あれは…母さん…?
「まあ!!ぼうや…?ぼうやよね」
そう話しかけてくる雌鳥はまさしく母だった。なんでわかったのだろうか…?僕の事なんてわからないと思っていたのに。
そんな思いが伝わったのだろうか。母さんは微笑みながら、こう言った。
「私の子供のですもの。分かるに決まってるわ。大きくなったようね、母さん嬉しいわ」
母はそういうと、少しだけれど頭を撫でてくれた。
昔、兄弟たちと狭い綿にいたころの様に…。
雨が止んだ。僕はまた母の下から旅立っていく。
けれどももう、母のことを忘れたりなんてしない。もう、寂しくはない。
綺麗な虹のかかる空に、僕は飛び立った。
と…僕はそんな夢を見た。一人暮らしを始めて数年。
僕はまだ、親元が恋しいのだろうか…。