★ギルド長視点
できるわけがない。
「ここは流刑地だぞ。アリスに苦労させたくはない」
頭を強くつかまれた。
「おまえなぁ、何を見てるんだ。アリスが苦労してますって顔してるか?ギルドに通ってる姿を見てる限り、生き生きと目を輝かせてるじゃないか」
確かに、キラキラどころか、ドキドキギラギラしてる。特に、ガルダを見るときの目は……。
「まだ来たばかりだから張り切ってるだけだろう。宝石もドレスも、華やかな舞踏会も、それからきらびやかな未来もここにはない」
「なんだ、幸せにしてやれないって言いたいのか?馬鹿だなぁ」
幸せにしてやりたいと思うのが何が馬鹿なんだ。
「アリスが、いつ宝石が欲しいと言った?ドレスを着たいと言った?舞踏会が好きだと聞いたか?未来がきらびやかである必要がどこにある?幸せってのは、そういうことじゃないだろう?」
確かに、アリスは何も言わない。
だけど、それは、ギルドで正体を隠しているからじゃないのか?
屋敷では……リリアリスでいるときは違うかもしれないじゃないか。
彼女は優しいから、光属性の子たちを救いたいという思いで頑張っているだけで……。
「だが……生まれてくる子供に渡せるものも何もない。むしろ、与えられるのは負債ばかりだ。家族を作ることが幸せなら……」
はぁーと、ガルダが大きなため息をつく。
「失敗したなぁ。こんなとこまで俺のまねなんてしなくていいんだ。……ああ、俺が嫁を貰って見本を見せておくべきだったんだな……」
ガルダが頭を抱えてしまった。
ガルダのせいじゃない……と、言う前にガルダが顔を上げた。
「3年だろ?3年の間に、もっと領地は良くなるさ。お前がここまで頑張ってきて街への魔物の侵入は抑えられるようになり少し余裕も出てきたんだ。火光魔法の可能性も高いだろう。領都の外に、火光魔法を設置して魔物避けのバリケードが作れれば耕作地を広げることもできるだろうし。街道の行き来も今までより安全になるはずだ」
ガルダの言葉に素直に頷く。
「ああ、耕作地を広げることはすぐに領主として会議にかけるつもりだ。街道の行き来も、ギルドが請け負う護衛依頼に光属性魔法が使える者も付けるように声をかけていく。アリスが教えていた子たちはすでに全員火光は使えるそうだから、すぐにでも依頼できるだろう」
ガルダが首を横に振った。
「だめだ。まずは最低限自分の身を守れるように鍛えてからだ」
「それは分かるが、皆がジョンのように剣が扱えるようにならないだろう」
「いや、ジョンのようになれとは言わないが、領都の、街の外へと出るのだ。覚悟がいる仕事になる。とっさに魔法が使えないでは困るからな……いや、待てよ……?火光魔法の継続時間は随分と長いよな?魔物避けのためというなら出発の時にかけてもらえば何もついていく必要はないのか?」
「移動できるのか?水とちがって光は触れないんだろう?入れ物に入れて持ち運ぶようなことはできないんじゃないのか?」
「あー、そうだった!魔物が出てからしか魔物避けとして使えないのか!やはり連れていくならある程度戦えるように鍛えないとだめだな」