悪循環
やっぱり、明かりをともすだけの仕事じゃ、十分な収入増加にはつながらないなぁ。っていうか、貧しい公爵領で経済回そうっていったって、回る経済も貧しいんだよね。
外貨、外貨を稼がないと!
何を売る?売れるもの……。
何が売れるのだ!
ううっ。考えすぎて疲れちゃった。なんか甘いもの……食べたい。
砂糖は高級品って言ってたなぁ。砂糖を作れば売れる!領地が富む!んだろうけど……。
サトウキビって南国の食べ物だしなぁ。公爵領は冬が厳しいんだよね。沖縄じゃなく北海道みたいな感じかな?
そうだ、北の方といえばカナダ。カナダといえばメープルシロップ!サトウカエデの木が生えてれば、メープルシュガーで領地が富むのでは?
森の様子を思い出す。針葉樹林だったかな?カエデとかありそうだったなか?カナダの国旗がカエデの葉っぱの形だよね。あんな葉っぱの木……。
森の様子って……思い出そうとして多い浮かんだのは、馬車が転落した谷底の森……。
木のことなんて覚えてないって!死にかけてたのに「うわーカエデの木だぁ」とか「針葉樹だぁ」とか思う……ん?
クリスマスツリーによさそうと思った記憶が……?これはいつの記憶?
それに……そもそも魔物がわんさと出る森にサトウカエデが生えていても危険すぎて無理じゃない?
ああ!
そうか。冬は雪に閉ざされるとか、作物が育ちにくいとか、それだけが領地が貧しい原因じゃないんだ。
せっかく森があっても、山の幸というわけにはいかないんだ。山菜、木の実、鹿や熊などの肉、川魚、きのこ……森の恵みを魔物が出るために活用できないんだ。
こりゃ、もう根深いね。流刑地なんて言われるのも仕方がないのかな。八方ふさがり。
鉱山とかないのかな。いや、魔物の脅威があるから、鉱山を探すことすら困難なのか。もしくは過去に探したけれど見つからなかったか。
領地が豊かになれば、騎士や冒険者を増やして魔物が退治できる。魔物が退治できれば安全な土地が増えて新しい産業を産むこともできる。新しい産業が生まれれば領地が豊かになる。領地が豊かになれば……っていうループができなくてつんでるんだよね。
街の中には、ボロボロの服で痩せた人の姿が目に映る。
いや、珍しわけじゃない。そもそも太っている人がいない。
細いか痩せてるかガリガリか……。
生まれたときからここにいる人はこれが普通なのだろう。けれど、王都にいた私からすると……。侯爵家で不遇な扱いを受け痩せている私でさえ、この中では普通だ。
光魔法は役立たずだ。
何もしてあげられない。
ほらね、やっぱり役立たずって言われるのは当たり前なんだよ……。ああ、もうっ!そんな風に、思ったりしないってば!リリアリスに駆けられた呪いのような言葉が心を浸食しそうになる。
悔しい。悔しい。
公爵夫人なのに。この領地の母なのに。何もしてあげられないなんて!