リリアリス
「あー、いえ、その、ギルド長とアルフレッド様がもし……戦ったらって……そんなこと、か、考えたこともなくて……」
しどろもどろになるカイ。
額には汗が浮かんでるよ。
あ、そういうこと。レッドの方が確実に強いわね。これは。
でも、公爵……雇い主の方が弱いとは言えない顔だ。うん。そうに違いない。
っていうかさ、もしかして……。
騎士団の訓練を思い出す。騎士団長とか。そこそこ強そうだったよ。
本当にアルフレッド様が優勝したのかな?接待優勝だったりして。公爵様に花を持たせるための。……あり得る。
それか、誰も王都に行きたくなくて手を抜いていたか。
もしくは大会当日に、魔物が現れ大会参加者がヘリ不戦勝とかね……。
そうか。了解!
「もう聞かないわ。それより、その大会で優勝したら賞金とか何か出るの?」
私の旦那様が、推せるような筋肉の持ち主ではなさそうなことにがっかりしたけど。どうせ一生を共にする相手じゃないんだから。3年で離婚決定なんだから。むしろ推しと引き離されるよりは、初めから推せないタイプの方が幸せなのかも?と気持ちを切り替える。
「えーっと、王都での大会は知りませんが、賞金はないですが、メダルが授与されます」
メダル?服にジャラジャラとぶら下げるやつかな?
練習している子供たちを見る。
コンテストで優勝してメダルをもらったって……売ってお金になるものならいいけど、日本だって、トロフィーなんて飾っておくもので売ったって二束三文。価値があるわけじゃないしなぁ。それに売りにくいしな。
この子たちにとって価値のあるものは何だろう?やっぱり食べ物?……賞金はなんか違う気がするし……。
サラが手持無沙汰で立っている。
「サラもコンテストに参加してもいいのよ?」
「はひっ、わ、私……その……。絵心がないので……」
サラちゃんがわたわたとしている。
「別に絵じゃなくてもいいのよ。えーっと、ギルドのマークとか公爵家の家紋とか……そうねぇ文字でメッセージを書いてもいいわよ【LED】【LED……」
いくつか小さな光の玉を出してサラと名前を書いた。
「100数える間にでどれだけの言葉を伝えられるかチャレンジしてもいいかも」
私の言葉を聞いて、サラちゃんがうんと頷いた。
「やってみます!」
サラちゃんが私の名前をLEDの光の玉を並べて書いていく。って、待って待って、リリアリスはだめぇ!って、誰も見てない、見てないよね!っていうか、変に反応しなければ公爵夫人の名前を書いただけって分かるか。うん、私がリリアリスなんて誰も思わないよね。
心臓に悪い。
「カイ、ちょっと買い物に行こうと思うから、ついてきてもらえる?皆は練習してね。あと2時間したらコンテストを始めましょう!」
カイを連れて、コンテストの賞品を買いに街に出る。何を買おうかな……。あまり高価なものは買えないけど、何か貰って嬉しいもの……なんだろうか。