調子にのって楽しんでみる
「汎用品の剣は、訓練に使ったり、まだ自分の武器を手に入れられない初心者に貸し出したりしているものです。あとは武器を持たない者たちがいざというときに使うための」
ごくりと喉がなる。
腑抜けていたのは私だ。
魔物の脅威というのがいまいちピンときていない。
私も、孤児院の子どもも、魔物が責めてきたら守られるだけの人間ではいられないのだろう。剣を取って戦わかねれば生き残れない。
「おい、見てみろ。この剣さび付いているぞ」
「こっちは欠けている。少しの衝撃で折れてしまうかもしれない」
「これは柄との接続部分が甘くなってるようだな」
なんだか張り切りだした冒険者3人が奥の樽の中の剣をさやから抜いて確認を始めた。
「……明るくなければ気が付かなかったかもしれないな……」
「そうですね。暗い中では錆びも欠けも見逃していたでしょうね」
「せっかくこれだけ明るくしてもらっているのだから、徹底的に整頓しよう」
やる気にみちた冒険者たち。
「問題ない剣はこちらに入れておこう」
「さび付いたものはこっちだ。手入れすれば使えそうなものと、どうにもならないものも分けておこう」
「手入れが必要なものはギルドの職員に伝えればいいか」
それからは、剣以外の武器や防具も数を数えたり、取り出しやすいように並べたりといったこと以外に、一つずつ状態をチェックしていきながら整頓した。
「明るいのは大事だな……」
「ああ。見えるだけじゃ足りないことがあるんだ。よく見える必要があることが……」
冒険者たちが頷いている。
と、冒険者たちと倉庫の整頓を続けていくうちに、どんどん倉庫の中が明るくなってきた。
「あ……」
奥でたくさんのLEDが灯っている。
もう、使えるようになったんだ。子供たちすごい!教えてるサラちゃんもすごい!
「アリス様!全員LED使えるようになりました!」
サラちゃんが嬉しそうに報告に来てくれた。
「うん。みんな頑張ったね!サラちゃんもありがとう!」
整頓の手を止めて子供たちのところへと向かった。
「くっ、まぶしい!」
いったいいくつのLEDがあるのか!日光とは違って熱くはないけども。
「消してくれる?」
「え?消せるの?」
ん?オン、オフはできるよね?……って、もしかして日光や月光って出したら出しっぱなし?まぁ、必要な時間分しか出さないならオフにする必要はないか。
それとも、私はスイッチを押してつけたり消したりするイメージがあるけれど、この世界では消すイメージがない?
「水魔法も、出しっぱなしにならないよね?」
「あ!そうか!消えろ!」
男の子がLEDの光球の一つを指さすと、ぱっと消えた。
「おお!消えた!出すだけじゃなくて好きなように消せるのか!」
他の子たちもLEDを消していく。
「じゃあ、次はこれを練習してみましょう。【LED1】【LED2】……」
光量の調整だ。一番明るいものが日光レベル。一番暗いものが月光レベル。
子供たちはおもちゃを与えられたように、光魔法の練習を始めた。そして、すぐにできるようになった。
「うふふ、じゃ、こんなこともできちゃう?」
調子にのって、小さなLED1とたくさん並べて出して、丸を書いた。その中に顔を光で書き出す。
にこちゃんマークの花火のような……というか、消えないし綺麗に整列させられるからドローンを使った光のお絵かきに近いか。
横道にはそれてないです。主人公は横道にそれてますが、話の本筋に必要です。無駄話ではないですよ~。