剣
「えーっと、俺たちは……どうしたら……」
倉庫の整理にと置いて行かれた4人の冒険者が首を傾げた。
「アリス様!次はどうしましょう?」
サラちゃんが師匠である私に指示を仰ぐ。
「なぁ、実験って何をすればいいんだ?」
「他にも何か私たちできるようになるの?」
子供たちが期待に胸を膨らませている。
えーい!一度に話されても私は聖徳太子じゃないっ!そうなんでもかんでも聞けないしできないっ!
ああ、けど、3年の時限付き領主夫人だからね!領民のためにはできることは全部するさ!聖徳太子に負けるもんかっ!ふぬっ。
「みんな、まだ魔力は大丈夫?できれば、月光1時間と比べてどれくらいの魔力を使っているか意識しながら魔法を使うようにしてね。今日の実験は、皆が月光と日光以外の魔法も使えるようになるのかっていうことだから、長時間ともす必要はないからね?」
子供たちが頷いた。
「サラ、次はLEDを教えてあげてくれる?」
サラちゃんがうんと頷いた。
「カイ、倉庫の整理について分かる者がいないかギルド職員に聞いてきて」
カイが倉庫を出ていく。
「じゃ、まぁとりあえず倉庫の整理始めますか。何があるのか場所と数の確認は必要でしょう。じゃ、入り口に近いところから確認していきましょう」
倉庫の整理に詳しい人をカイが連れてくるまでにできることはやっておく。
数の確認や仕分けなんてのは基本中の基本。あると思ってい」たものがなかったとかではいざというときに困る。
ギルド側でも帳簿なりなんなりあるんだろうけど。棚卸したら数が合わないことなんて現代日本でもよくある話。
4人の冒険者を従え入り口付近の樽の数を数える。樽の数は20。空の樽に、無造作に剣がさしてあるのだ。
「一つの樽に、何本ずつ剣が刺さっているのかしら?何らかの基準で樽ごとに分けてあるのかしら?」
1つの樽に少なくとも20本、多い樽にはその3倍ほどの剣が刺さっているように見える。
なんていうか……。詰め放題の人参を頑張って袋から飛び出す状態でも無理やる詰め込んであるような感じ……。
「この入り口付近の剣は、汎用品です。だからどれも品質に差はないはず。価値がある剣は別の場所に置いてあるはずです」
冒険者の一人が説明してくれた。
「へぇ、詳しいの?」
「いえ。前にも倉庫整理を手伝ったことがあっただけで」
「じゃあ、頼りになるわね。あなたがリーダーで。」
「え?お、おいらが?リ、リーダー?おいらなんか頭も悪いし戦闘でも役に立たないような人間が……リーダーなんて……」
ぽんっと肩を叩く。
「倉庫整理のこの場においては、あなたが一番知識があるのだから。自信を持ちなさい。頭がいいだけで何も知らない人間より、現場のことをよく知っている人のほうが何百倍も役に立つわ」
「でも、おいら……」
他の3人の冒険者の顔色をうかがっているようだ。
「ときに、知識や情報が強さよりも戦況をひっくり返すことなんてよくあることよ。知っているというのは”強味”よ。さて、じゃあ教えて頂戴。樽ごとに何か理由があって分けてあるの?」
「いえ。入り口に近いほどさしやすいからさしているだけだと……」
あー、なるほどね。言われてみれば奥の方はすかすかだ。
「全く、普段からきちんと管理した方が、こうして整理するときの手間も減るというのに……。雑すぎ。1つの樽に25本ずつにしましょう。そうすれば4樽で100本と数を数えやすくもなるわ」
しゅたっと軽く手をあげて別の冒険者が言葉をはさんだ。
「雑というより、その……普段は、入り口付近は見えるけど、奥の方はよく見えないから」
ん?