じたじた
少し短めです
「おい、すぐに覚えろ。できるか?」
ガルダ様が振り返って倉庫の整頓に連れてきた男たちに声をかけた。
男たちの中から一人の男が……上半身筋肉が一歩前に出た。
「月の光でもなく日の光でもない……火の光……」
ああ、この人、光属性魔法使いだったのか。攻撃魔法が使えないから役立たずなんて言われたんだろうか。役立たずから脱するために、必死に体を鍛えて……。これだけの上半身の筋肉を手に入れたのだとしたら。
私、ちょっと失礼なこと言っちゃったかもね。人よりも立派な見せるための筋肉。これが、彼の自尊心を保つための手段だったのかもしれない。……やばい。いろいろ物語を脳内に展開して泣けてきた。
光属性魔法、頑張って無能だとか役立たずだとか言われないようになる世の中にするから。もう、そんな無駄な筋肉に頼らなくてもいいような世の中にするから。
実用的でめちゃくちゃ素敵な筋肉でいられるような世の中にきっとしてみせる!
「【火光】」
集中していた上半身筋肉が火光の球を出した。
「よし、次はもっと大きなサイズだ。複数出せるか?」
ガルダ様の指示に、すぐに上半身筋肉が対応した。
「【火光】【火光】【火光】【火光】【火光】」
焚火サイズを続けて5つ出す。
「魔力は?まだ問題なさそうか?」
ガルダ様が頷く上半身筋肉を見て口元に笑みを浮かべた。イケオジの意味ありげな口元の笑みぃぃぃ!興奮して上気してる筋肉ぅ。やばい。眼福。
「予定変更だ。実験に付き合ってもらおう。来い!」
顎をくいっと動かして上半身筋肉に指示を出す。
すたすたと大股で歩いていくガルダ様のあとに、思わず私もついていこうとして、首根っこを掴まれる。
「お前はここで実験するんだろ?」
レッド、放してくれ!ここは一番弟子のサラちゃんに任せて、私はガルダ様の実験のお手伝いをしなければならないのだ!
じたばたじたばた。
くっそ、一歩も前に進めない。
ガルダ様が振り返った。
「おい、レッド」
流石ガルダ様。アリスを放してやれと言ってくださるのですね!
「夫婦でいちゃついてないでお前も来い!」
ぬっ!夫婦じゃないし、いちゃついてないし!
っていうか、レッド、お前だけ呼ばれるとか……羨ましさを通り越して憎いっ(2回目)。
次回から視点変わります。
そのため切れ目で更新したら短めになった。切り方失敗した……。
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