肉!筋肉!
「熱くない」
「はい。光だけなので、燃えません」
だから、攻撃にも使えません。
ガルダ様が、ぎゅっと私の手の平でこぶしを作った。火光球を握りつぶすようなしぐさだけれど、光は握りつぶすことはできない。
光が、ガルダ様の手を照らす。
ガルダ様がはじけたようにぱっと振り返ると、奥へと進んでいく。
天井は真っ赤になっているのに、熱く感じない。もし、これだけ天井を赤く染めるだけの火が燃えていれば熱くて近づくことはできないだろう。
「はっ、はは……何だこれは……」
ガルダ様が立ち止まる。その横にレッドが立つ。
ちょっと二人とも足が速いよぅ。もう、レディーファーストどこ行った。筋肉親子め!
何とか追いつき、二人の間に割り込む、
「うわー、すごい!綺麗ね!あれみたい。えーっと、何て言ったかな、ランタンを飛ばす祭り……なんか、そういうの」
無数の火光球が浮かんでいた。
「すごい、綺麗ね」
「あ、リ……アリス様!おかえりなさい!アルフレッド様もいらしたんですか?」
アルフレッド様?え?どこに?どんな顔してるの?くるりと振り向きあたりをきょろきょろ。
ガルン様が連れてきた冒険者5人が立っている。このうちの誰かが私の旦那様?
首をかしげる。
「あ、見間違いだろ?な、サラ。ほら、よく見て見ろ。ギルド長のレッド様と前ギルド長のガルダ様だぞ?」
カイが慌ててサラの肩を叩く。
「はぁうっ、そ、そうでした。見間違いで……あ、あの、そのぉ、見てくださいアリス様!もう皆火光球を出すことができるようになったんですよ!」
「全員が?すごいわね」
サラのところに歩いて子供たちを見る。
「本当、皆すごいですよね」
サラが嬉しそうにうんうんと頷いている。
「この子たちもすごいけれど、サラもすごいわよ。サラの教え方が上手だったのでしょう」
だって、子供って10人以上いるんだよ!この短時間で全員ができるように説明するのって大変じゃない?
うん。明日からもサラちゃんにはギルドに同行してもらおうかな。
「サラがいてくれて助かるわ。これからも助けてね」
にこりと笑いかけると、サラちゃんがプルプルと小さく震える。くっ。兎属性だったわ。サラちゃんかわいい!
「アリス様……」
ガルダ様がサラちゃんと子供たちを見た。
「君がこの子たちに魔法を教えたというのか?それは今か?すぐにできるようになったのか?」
ものすごい勢いでガルダ様がサラに尋ねる。
「はい。師匠であるアリス様に、この子たちの指導を一番弟子である私が任されましたので!」
どや顔をみせるサラちゃん。サラちゃんの言葉にガルダ様が私を振り返り、レッドの頭を大きな手でポンっと撫でた。
なんで、私の頭じゃなくてレッドを撫でるの?私もガルダ様に撫でられたい!
「アリスが教えたというのか……お前の嫁は規格外だな」
レッドの頭を乱暴に撫で繰り回すガルダ様。推しに頭を撫でられるなんて、うらやましすぎてむしろ憎い!レッドめ!
ぎっとレッドを睨みつける。っていうか、嫁じゃないしっ!
でも、レッドの嫁と言われるポジションでガルダ様に話しかけてもらえるって可能性を考えると……いや、でも否定しなきゃ!
駄目駄目!欲望にまみれて正しき道を失うところだった!あぶない!




