火光の球と、ファイアーボール
「大丈夫ですか!すぐに治療をっ」
カイが顔を真っ青にしている。
「大丈夫。ちょっと水で冷やしてくるから、サラちゃん、カイ、二人でお願い」
心配してついてこようとするサラちゃんに頷いて見せる。
階段を上がっていき、水を少し貰って指を浸す。
触ったわけじゃなくて近づけただけだから、やけどはしてなさそうだ。
すぐに痛みもなく元通り。まぁ、念のためコップの水に指を突っ込み続ける。……本当は流水の方がいいのだろうけども。水くださいといったらコップに入った水を渡された。飲むと思ったのかな?
ギルドの片隅で椅子を借りて座る。
昼ごはんが終わった後の時間は人が少ないみたいだ。
「おー、話は聞いたぞ。倉庫の整理に人がいるんだろう?」
こ、この声は!
筋肉神様っ!私の最推し筋肉を持つ、ガルダ様の声!
振り返ると。
あ、ヤバイ。あまりの神々しさに、失神しそうだ。だって、ほとばしる汗!シャツに汗がしみ込んで筋肉がぁぁ!ああああ!
「お前なぁ、俺以外の筋肉にときめいてるんじゃねぇよ」
目隠しされた。
「ちょっと、レッド、暇なの?ねぇ、もうっ、暇なの?」
手を振りほどいてレッドを睨みつける。
「あははは、楽しい嫁を貰ったなレッド。で、手が必要なんだろ?今日は訓練はここまでにして倉庫整理の手伝いだ。行くぞ」
タオルで汗を拭きながら、ガルダ様が冒険者たち5人引き連れて階段を下りて行った。うん。訓練が必要そうなしょぼ筋肉。あ、一人、上半身立派筋肉の……前に下半身の鍛え方が足りないと指摘した人が混じっている。下半身鍛えてるのかな。
「うわー!なんだ!」
すぐに悲鳴が上がる。
え?悲鳴?何があったの?
慌てて階段を駆け下りると、奥の方にオレンジ色の光が見える。
「おお、もう成功したんだ」
まるで大きな焚火をしているかのように天井が真っ赤だ。
火光が成功したのね。
すごい、みんな優秀じゃない?サラちゃんの教え方も上手なのかな?
「水属性魔法を連れて来い!火だ!燃えてる!」
慌ててガルダ様が入り口に向かって叫んだ。
「何だって?」
レッドが奥を見て顔色を変える。
って、誤解、誤解を解かなくちゃ。
天井がオレンジ色に染まっているのを見て、火事だと思われたんだっ!
「ま、待って、大丈夫、あれは火じゃないから!」
「火じゃないなら、何だって言うんだ?」
「【火光】」
ぽんっと、火の光の玉を出す。
「ほら、これ」
「火球か?!」
ガルダ様が私の手元を見た。
「いえ、これは光魔法で光の球です。月光や日光だけが光じゃないですよね?火をともした時に光るでしょう。それを再現したものです」
ガルダ様が私の手に手を伸ばした。
って、違った。私の手の平の上の火光球に手を伸ばした。