そばに
「聞いたところによると、昨日は廊下で5時間近くたっているだけだったらしいな」
はっ!
廊下に立っていなさい!という往年の学校での罰を思い出した。体罰が厳しく禁じられ、伝説になったあれだと思われた?
体罰じゃないよぉ。私も一緒に廊下にいたし……。
「本当に実験していたのか?もしかして……」
あ、そっちか。同情して施すつもりで実験すると嘘ついた依頼だと思われた?
「あのね、昨日はね、皆がどれくらい魔力があるのか実験してたの!」
「そう、そのおかげで俺は実は日光を4時間も使えるってことが分かったんだ」
子供たちがニコニコして昨日のことを報告してくれる。
「今日から本格的にテストを始めるけれど、その前に各自の能力を把握しないと詳細なデータが取れないでしょう?」
まぁ、データが詳細化どうかは微妙だけども。こう、ステータスをオープンしてMPとか数値で見ることができたら楽なんだけどね。
「ああ、なるほど。実力もないのにいきなり実践に出すわけにはいかないからな……。そうか。確かに……ギルドでは冒険者にどの程度の魔法が使えるかとか武器はどの程度扱えるかと簡単な試験を行うが……」
え?試験なんてなかったよ?
「光属性魔法の試験は行っていなかったな……」
役立たずの試験なんてしても仕方がないと、そんな理由が頭に浮かんだ。
レッドが立ち上がって深く頭を下げた。
「すまない。ギルド長である俺の手落ちだ。どれくらいの魔法が使えるのか知らないで依頼を受けて不便をさせてしまった」
……きっとずっと慣習的に行われていたのだろう。初めは光属性魔法を差別していたからかもしれない。でも、単にレッドは気がつかなかっただけだとすぐに分かった。
「しょうがないわよ」
ぽんっとレッドの肩を叩いた。
「基準がないのだもの。測りようがないでしょう?でも、これからは大丈夫よ。ここにいる子たちみんなが知ってる。どれくらいの明るさの日光を出して測定すればいいか。新しく入ってきた子がいたらこの子たちの誰かに頼めばいいわ」
レッドの顔を見てにこりと笑う。
レッドがそうだなと小さくつぶやいて、私の両手を取った。
「アリス……お前が俺には……必要だ。頼む……ずっとそばにいてほしい……」
は、い?
「だから、私じゃなくても、この子たちがいれば検査できるわよ?そうだ、基準は作っておいたの」
紙を取り出す。
「同じ明るさで全部の魔力をつぎ込んで日光魔法を使ったときの継続時間で、魔力を、小、中、大、特大と、取り合えず分けてみたわ。ここにいる子たちはこんな感じ。成長していくうえで魔力が増えていくこともあるみたいだから、数年に1度は測定しなおした方がいいかもしれないわ」
レッドが紙を受け取ってみた。
「そういう意味じゃなくて……さ。その……何て言うか……」
そういう意味じゃない?