いいひと
「じゃあ、どこの料理なんだ?めちゃくちゃうまい。いくらでも食べれそうだ!」
あまりにもレッドが卵サンド……多分マヨネーズ味を絶賛するものだから、子供たちが肉を食べる手を止めて注目している。
気になるよね。
15人の子供たちの目がレッドの手元に注がれる。
レッドが手に持っていたサンドイッチを大きな口に放り込んだ。
それから、子供たちの顔をちらりと見て、広げた布の上に置いてあるサンドイッチを見る。サンドイッチを一つとり、半分にちぎった。茹で卵の卵サンドは、押しつぶされて茹で卵が少し零れ落ちる。
「一人、半分ずつだ。どっちもおいしいぞ。小さな子から先に選んで喧嘩せずに食べるんだ」
レッドは半分に順にちぎって子供たちにサンドイッチを渡していく。
あれほど、褒めてくれて、いくらでも食べられそうだと言っていたのに……。
自分で全部食べずに、羨ましそうに眺めていた子供たちに分けてあげるなんて。
いい人だ。
やっぱり……。
よい筋肉はよい魂に宿る!レッドはいい人。
「好き……」
あっ。思わず口から漏れ出た言葉にハッとする。
「ん?」
私ったら、一体何を?
そ、そう。筋肉。そう、いい筋肉が好きなんだ。
「い、いえ、そんなに好きなら……気に入ってくれたなら、明日はたくさん持ってくるから!」
おいしそうに卵サンドやサラダチキンサンドを食べる子供たちに話しかける。
「そうか!明日も持ってきてくれるのか!」
待て待て、レッドに言ったんじゃないから!
そんな期待に満ちた目で見られても……くっ。
暇なの?ねぇ、ギルド長は仕事してないの?
「明日はたくさん持ってくるわ。皆が食べきれなくて根を上げるくらいね!もちろんギルド長の分は子供の3倍だから覚悟して!」
べ、別に、レッドを喜ばせたかったからじゃないからね!
今日はお詫びの品のつもりでもってきたのに、子供たちのために分けてあげちゃったから……。
まだ、お詫びの品を渡したとは言えないから。
「アリスが俺のために作ってくれた物なら、いくらでも食べる!明日の昼が楽しみだなぁ。朝食は抜こうかな」
子供みたいに満面の笑みを浮かべて喜ぶレッド。
その顔を見ていたらドキドキしてきた。
……筋肉が喜んでいる……。推し筋肉様が……!
そうだった。レッドはギルド長というよりも、私にとっては推し筋肉!
暇なの?とか言ってる場合じゃないわ。
「朝食を抜くなんてだめ!ちゃんと食べないと、筋トレには朝食が大事なんだから!寝ている間にエネルギーが消費されちゃうの!だから、朝食を食べずに筋トレしたら必要なエネルギーを得るために、体は……筋肉を分解してエネルギーに変えちゃうんだよっ!むしろ、筋トレすればするほど、筋肉がやせ細るという最悪の悪循環なんだから、絶対朝食は抜いちゃダメ。しっかりタンパク質とエネルギーになるものを食べてから筋トレする大事!それから、エネルギーになるだけじゃないのよ?朝食をとることで体温が上がり、体がスムーズに動くの。筋や関節を傷めにくくなるんだから。絶対抜いちゃダメ!しっかりカロリー取って、でも糖質は控えた方が……」
ギルド長が両手を万歳のようなかっこうをした。