表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

6/134

案外幸せ

「護衛の姿はなく……いまだに見つかっておりませんし」

 いや、それは初めからいなかったんだけどね?

「馬車と一緒に転落したはずの馬や御者も……すでに魔物に食われてしまって跡形もなかったとか」

 え?

 御者は亡くなったの?魔物に食われるとか、怖っ!

 それとも、もともと転落はしていなかったとか……?魔物と遭遇して私を置いて逃げたのではなかろうかねぇ……。侯爵家の使用人ならやりそうだわ。

 ……っていうか、馬車をわざと転落させたなんてことはないよね?さすがにそこまではしないか。

「申し訳ありません。怖がらせるようなことを……」

「いいえ、大丈夫です。少し驚いただけで……その……」

「やはり、本当のことだったのですね」

 侍女が小さく頭を横に振った。

 本当?何が?

「王都も侯爵領も魔物はほとんど出ないと……。このあたりでは魔物は年中いたるところで見ますし、会話の中に魔物の話はしょっちゅう出てきます。ですが、奥様は魔物の姿を見たこともない、魔物の話などすることもないだろうから、怖がらせないようにと……」

 え?そんな風に言われてたのか。

 そりゃ確かに、あんな環境……8歳まではかわいがられて恐ろしいことからは遠ざけられ、8歳こえたら自由に歩き回ることも人と話をすることも禁止されていたんだし、魔物のことを知ることもなかったよ。ああ、でも時々魔物が出たという噂を使用人がしてたかな。すぐに騎士たちが退治してくれたとか。年に数回あるかないか。

「大丈夫ですよ。お屋敷の中にいれば安全ですから」

 侍女が安心させるように笑った。それから、食器の中が空になったのを確認する。

「お代わりは必要ですか?食べても吐き気などしませんか?」

 質問に首を振ってこたえる。

「でしたら、明日の朝はもう少しちゃんとしたお食事をお持ちいたします」

「ありがとう。あの、名前は?」

 侍女が手を止めて私を見た。

「申し訳ありません、自己紹介もまだでした……私は奥様のお世話をさせていただくマーサと申します」

 少しふっくらとした優しそうに笑う女性だ。私の世話係がマーサでよかった。

「ではごゆっくりお休みください」

 マーサが出て行った後、ベッドに寝転がる。

「そうか、私、死にそうになったけど、生きてるんだ」

 ふっと笑いがこみあげる。

 屋根裏部屋より立派な部屋。

 濁りのない水に、腐っていない食べ物。

 痛めつけることもなく微笑んでくれる使用人。

 なんか、私にとっては良いことしかない!

 しかも、前世の記憶を思い出してからは、ワクワクが増えた。

 この世界は魔法がある。

 光魔法だって、日本じゃ考えられない話だよ?

 ハズレ属性だから何?

 クリスマスツリーとか電飾つけ放題じゃない?

 ふふ。楽しみ。ここは冬は雪深いっていうし。

 そういえば道中見かけた森の木は途中から針葉樹だった気がする。

 モミの木だ、モミの木!違う種類でもモミの木ってことで構わない。

 雪が降ったら。クリスマスツリーを作ろう。一番大きな木に。たくさんの電飾を飾って。

 電飾たっぷりの巨大クリスマスツリー。恋人たちの聖地になったりして。こういうのも異世界知識チートか?

「ああ、楽しみだなぁ……」

 あとは、推しが見つかるといいなぁ……。

 この先のことを考えてニマニマしながら、いつの間にか眠ってしまった。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
「研ぎ師ミチェは頑丈です~転生幼女の大冒険~」 こちらの作品もよろしくお願いします。てとてと歩いてぽてっと転びすぴぴと寝ます。
― 新着の感想 ―
光魔法いいじゃん? 今回の事故のように照明弾な役割もできる。 目潰しも出来るのよ?スタングレネード あと、光線(レーザー)銃 スターウォーズに出るレーザーの剣もある。 平和的利用法なら、間接照明で精…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ