言い方!
「そうだ、この間叩いちゃったお詫びに軽食を作ってきたの。お昼はもう食べた?」
「ん?何て言った?」
「お昼は、もう食べた?」
「いや、その前だ」
「この間叩いたお詫び?」
「いや、アリスが作ったって……」
レッドが驚いた顔をしている。
失礼ね。私って、そんなに料理しなさそう?
「まぁ、大したものじゃないけど。まだならどうぞ。お昼がもう済んでるなら、手に持って食べやすいものだから、仕事の合間におやつ代わりに食べてもいいわよ?」
バスケットから、布に包んだサンドイッチを手渡す。
どれくらい食べるか分からなかったから少し多め。コンビニサンドイッチ5袋分くらいの量がある。
「あ、ありがとう……アリスが、俺のために作ってくれたのか……。ここで食べていいか?」
「もちろん、どうぞ」
ギルドの建物の1室を借りているんだ。当然ギルド長がいても問題はない。
座って、レッドは布を広げた。
「パンに何か挟んであるな。なるほど、こうすれば一度にパンも肉も食べられるのか」
「そう、パンも肉も野菜も一度に取れるわ」
レッドがサラダチキンサンドを手に取って口に運ぶ。
「うん、うまい。アリスが俺のために作ってくれたと思うと、なおさらうまい」
「いや、残念だけど、そのおいしさの8割は料理長……料理のうまい人が作ったハーブ塩のおかげよ。私は切ってちぎって挟んだだけだもん」
「十分だよ。普段料理をしないんだろう?もしかして、アリスの初めてを俺は食べてるんじゃないのか?」
ぶほっ。
噴き出すわ。
言い方!誤解されるわ!
「特別料理が好きじゃないけれど、これでも普段からそこそこ料理はしてました。私が作った料理は家族も食べてました」
前世で自炊もしてたし。侯爵家では料理の手伝いもさせられてたし。ん?でも前世はノーカウントとしても、侯爵家で作ったといっても手伝いだから……。
「ああ、全部私が一人で作った料理をはじめに食べたのって、料理長……そのハーブ塩をくれた人かな?」
レッドがむっとした顔をする。
「……アリスの初めてを奪うとは……」
言い方!
「とはいえ、味見してもらっただけで、ちゃんと料理を出して食べてもらうのは、レッドが初めてかも?こっちの卵サンド口に合うといいんだけど」
俺が、初めての相手……とかまたおかしな言い方をしながら、レッドが卵サンドを食べた。
マヨネーズが受け入れられるか。
一口目で動きが止まる。
「うんまいな。これ、王都の料理か?」
「え?王都の料理?ち、違うけど……」
まって、私が王都から公爵に嫁いできたことなんて言ってないよね?カイも話してないよね?公爵夫人だっていうのは……知られてないよね?知ってたら、公爵と対立しちゃいかねないようなこと言うわけないもん。もし、夫がいなければなんて。公爵がいなければなんて物騒なこと言うわけない。
ど、どういうこと?