理解がある女だが、理解力はない。
ギルドに到着し、受付のお姉さんに挨拶してからカイと昨日の部屋へと向かう。
「ん?増えてる?」
15人に増えてる。
「この子たちもいいですか?」
どうやら、昨日孤児院の冒険者登録していない子も同じように受け入れたことで、他の子も連れてきたようだ。
「もちろん。光魔法が使えれば問題ないわよ。じゃあ、ご飯にしましょう!」
15人。茹で卵30個持ってきてよかった~。
「昨日と同じ。肉串2本とパン4個、それから今日は茹で卵2個。食べきれなかったら持って帰ってね。じゃあ、まずはご飯を食べましょう」
席について食事を始める。カイが買ってきてくれた料理は、ちゃんと15人分と、私とカイの分があった。人数を確認してから買いに行ってくれたのだろう。
「カイ、サラちゃんは?」
「うん、まだ依頼で回っている。場所も分かってるし大丈夫だ」
そうか。私は右も左もわからないけど、サラちゃんは街のこと知ってるもんね。
「おい、話がある」
ひぃっ。
おいしくみんなでご飯を食べていたら、いつの間に来たのか入り口から声をかけられた。
振り向かなくても分かる。この声は……。
「ギルド長!」
逃げ出したい。でも謝らなくちゃ。
バスケットを手に、入り口に立つレッドの元へと歩いていく。
「お前は、俺の顔なんて見たくないかもしれないが……」
「顔が見たくないなんてそんなこと思ってないです。顔より筋肉が見たいだけで!……あ、違う……そうじゃなくて……」
ぷっと、レッドが笑った。
「俺のこと嫌いなんだろう?」
「ごめんなさい、なんかいろいろ誤解してて、今日は謝ろうと思って……その……昨日はたたいたりしてごめんなさいっ!」
頭を下げる。何か言葉を待っているのに、何も言わない。
「俺の方こそ悪かった。ちょっと浮かれすぎて変なこと言っちまった……お前が俺みたいな男好きになるわけないのにな……」
「はい。好きになりません」
「即答されるとショックなんだが……」
「だって、夫がいるし……既婚者ならそういうものでしょ?」
レッドが首をすくめる。
「じゃあ、もしだ。もしも……俺が、お前の夫だとしたら好きになってくれるか?」
はい?
「レッドが私の夫……?」
不思議なことを聞く。
夫がいなければどうだ?というききかたじゃなく、レッドが夫だったら?首をかしげる。
「レッドが好きなら結婚するけど、レッドが好きじゃなかったら結婚しないから、もし、夫だとしたら、それは好きで結婚したってことになると思うけど?」
貴族なら政略結婚で好きじゃない相手と結婚しなければならないだろうけど。ギルド長なら……。
「あ、いや……そうじゃなくて……あー、なんて言えばいいかなっ」
レッドががりがりと頭をかいた。
「冒険者なら恋愛結婚でしょう?親に言われて好きでもない人と結婚することがあるの?断れるなら断った方がいいわ。やっぱり好きな人との愛を貫いた方がいいと思うの」
私は、カイとの恋愛応援してるよ!の気持ちを込めて、ぐっと親指を立てる。
何か言いたそうだけど、言えないといった表情を見せるレッド。そりゃ言えないよねぇ。男が好きっていうの。別にいいじゃない?って思う人間ばかりじゃないだろうから。
ここは私が話をそらして上げるべきよね。