異世界転生鉄板
「料理長、卵を茹でるわ」
「はい、こちらに」
鍋に水を入れて卵を茹でる。いくつあればいいかな……。そうだ、子供たちの分も持っていこう。
「卵はたくさん使っても大丈夫?」
「ええ、それはもちろん。毎日大量に産みますから」
そっか。じゃあ、遠慮なく。子供たちように30個。それからレッド用に2個……いや、3個。
茹でてる間に、パンを貰って1センチほどの厚みに切っていく。手の平に乗るくらいの丸いパンを4枚にする。表面を少し焼いてかりっとさせる。あまり柔らかくないパンなのでかりっとした方がかみちぎりやすくなるのだ。フランスパンよりラスクの方が食べやすいみたいなもので。
それから……。
目の前の油を前に両手を組む。
「どうしようかな……」
筋肉を育てるために油はいらないんだけど。でも、それってボディビルダーみたいな本当に筋肉だけのための人の食事なんだよねぇ。
ギルド長として魔物退治をする実践的な筋肉のためには、栄養のバランスも大事。体脂肪率を落としすぎたら、逆に冬が越せなくて危ないよね。冬場も魔物討伐とかあるんだろうし。
よし。決めた。サラダチキンはシンプルにするけど、茹で卵の方は躊躇せず、やっちゃいますよ!
「……なんでしょうか、これ……?」
出来上がったものを見て、料理長が首を傾げた。
「こっちが、サラダチキンサンド」
茹でたチキンを指で裂いて、葉物野菜と一緒に挟んだ品。料理長オリジナルハーブ塩味。なかなかすっきりしておいしいのだ。
「それから、こっちが茹で卵の卵サンド」
茹で卵をつぶして塩とマヨネーズとあえてパンにはさんだもの。
そう、よくある漫画や小説の異世界転生ネタ。マヨネーズ様でございます。……私の読書した物語通りであれば、マヨネーズは受け入れられるはず……。
「味見お願いします」
サラダチキンサンドを食べた料理長。
「これは、食べやすくていいですね。パンを薄く切っておかずを挟むのですか……」
「パンは軽く焼いてね」
うんと料理長が頷いた。これからは時々サンドイッチが食卓に並びそうかな?
次に卵サンドを口に運んだ。
「むむっ」
無言で料理長は卵サンドを食べた。
「素晴らしい味でした。あのように大量の油を使っていたというのに……もっと食べたくなるおいしさ」
ほっ。この世界でもマヨネーズは正義だった。
サンドイッチ2種類をレッドへの差し入れ用。それから茹で卵は子供たち用。バスケットに入れ終わった頃にちょうどカイが来た。
「おい、作り方を見ていたか?忘れないうちに作るぞ!」
料理長が料理人たちに指示している。
「なぁ、手つきを見たか?とても慣れた手つきだったぞ、奥様の料理する手つき」
「ああそうだな。どういうことだ?王都に済む侯爵令嬢だろう?着飾ってお茶会や舞踏会ばかりしているんじゃないのか?貴族は料理なんてしないよな?」
「そうだ。屋敷の中でも刺繍やレース編みや読書をするって聞いたぞ?掃除も料理も使用人の仕事だから」
なるほど。貴族令嬢のイメージ……って、そんな感じよね。実際お母様も妹もそういう生活してた。あとね、屋敷の中でまだすることあるのよ?商人を呼んでドレス選びに宝石選び、それから使用人の仕事ぶりの監視とクレーム付け。あ、違う、一応女主人使用は人の管理をするのは仕事の一つだったわ。別に嫌がらせのために監視して文句を言っているわけじゃない……よ。たぶん。