光魔法ってなぁに?
「何か食べられそうですか?食事をお運びいたします。いくら回復魔法で怪我は治ったといえ、3日間寝ていらっしゃったのですから。軽い物をお持ちいたしますね」
そうだよね。3日も絶食してたら、重湯からか。
米はこの世界で見たことないし。パンで作るミルクがゆからかな?
侍女が食事を取りに部屋に出て行った。
ふわふわな布団に沈みこみ、見慣れない天井を見つめる。
……死にそうな大怪我していたと思うんだけど、回復魔法でここまで良くなったんだ。
たった、3日寝込んでいただけで……。体力はないけど、怪我はほぼ完治。
聖属性魔法って本当にすごい。
魔物を倒せる火属性魔法もすごいし。
攻撃できるほどの魔力がなくたって、水魔法が使えたら生きていくのに必要な安全な水がいつでも手に入るのもすごい。
そう考えたら、確かに光魔法って、役立たずって言われても仕方がないといえば仕方がないのかなぁ……?
「でも、暗いの怖いし。暗い所にいるだけで気持ちが沈むし……っていうか、実際信号弾?照明弾?それで私は助かったんだから、まったく役に立たないわけじないよね……」
ふと、さっき光魔法で出した丸い光を見つめる。
「シーリングライトと違って、天井に張り付いているわけではなく天井近くに浮いているし、全方向に光を放っているから天井もしっかり明るいのね……というか、明るすぎて影が濃いなぁ」
部屋の4隅にも小さな光の玉を出す。ライトボールとでもいうのかな?小さめの玉。
あの光の玉はいつまで光っているんだろう?魔力で魔法が使えると思うんだけど、どれくらいの魔力が必要?
大きな光の玉と小さな光の玉、消費魔力は一緒なのかな?消費魔力で継続時間も違うとか?
それとも……。
「消えろ」
4隅の一つに念じてみた。
消えた。消すときに魔力は消費するのかな?
全然分からない。困った。
リリアリスの記憶しかない時は深く考えもしなかったけど、前世の記憶が戻ってからは気になってしまう。
本を読みたいな。いやその前に侍女に魔法のことを聞いてみようか。
常識的に皆が知っている話だったとしたら、不審がられちゃうかな。
侯爵令嬢なのに、なぜ知らないのか!と……。
それは、まずい。偽物じゃないかと疑われて追い出されても行く場所もない。魔物が出る森なんかに捨てられたら今度こそ死んじゃう。
やっぱり本だ。本を読んで勉強しなくちゃ。
「お待たせいたしました。お代わりは遠慮なくお申し付けくださいね」
侍女が持ってきてくれたのは、ミルクがゆと、甘くとろりと煮た桃のような果物だった。
ああ、おいしぃー!
そうだよねぇ。風邪を引いたら桃の缶詰!っていう位だから、体力なくても消化できるよね、きっと。
ポロリと、涙がこぼれた。
病気をしたときの、優しい記憶だ。もう、どれだけ望んでも手に入らなかった優しさが、ここにはある。
「大丈夫ですか?奥様っ!」
「う、うん、大丈夫よ。その、ほっとしたから……」
侍女は涙をこぼした私をすぐに心配して声をかけてくれた。
侯爵家の使用人とは違う。きっと大丈夫……。
「さぞ、恐ろしかったでしょう。魔の森の谷底といえば、魔物が沸きやすい場所ですし……」
そうだったんだ。
魔物に襲われなかったのは運がよかったのかな。