筋肉様
ああ、背表紙が日焼けしちゃった本を売ってる本屋を思い出してもにょる。……当てちゃ駄目!日光危険!
「あ、私の消えちゃったわ……」
1時間で一つ目が消えた。
「日光で1時間も持つなら充分よ!」
女の子はただの慰めの言葉だと思ったのか、複雑な表情を見せた。LEDなら丸っと1日余裕だよ!
それから2時間立たないうちに、次々と消えて行った。
「あー、僕のも消えたぁ。これじゃあ2時間日光の依頼は受けられないなぁ」
とちょっとがっかりした顔をする。
3時間がたち、残りが4つになった。
私が出したものは、明るさの見本だっただけなので、もう消えている。
「え?オイラ、日光4時間も使えたんだ。魔力が増えたのかな……」
自分の出した日光が思ったより長持ちしてびっくりしている子もいる。
ふむ。やはり、魔力は使ってるうちに増えるものなのか。
会議室の中を皆で覗き込み続けること5時間。まだ2つ残っていた。
一つは計算の得意な女の子。もう一つは8歳の男の子。
「はい。今日の実験はここまでにしましょう。みんなありがとう。ギルドに依頼料もらって帰ってね。明日も実験に付き合ってもらいたいから他の依頼は受けずにお昼前に集合してもらっていい?」
「「「はいっ」」」
残しておいたパンや肉を持って、子供たちは嬉しそうに帰って行った。
明日からの依頼も受付のおねぇさんに出しておかないとね。
「子供たち、笑顔で帰って行ったわありがとう」
受付のお姉さんいお礼を言われた。
「お礼を言うのはこちらですよ?依頼をこなしてくれたんだもん。5時間もよ、付き合ってもらったの」
そう5時間で大銅貨1枚と食事だよ。時給にしたら200円とか……。申し訳ないよ。笑顔でよかった……。明日からはもう少し……いや。だめ。施しをするなとレッドも言っていた。同情は駄目。ちゃんと私、今貰っている依頼料を元に算出した。
これ以上は明らかに違う。やっぱりお恵みになってしまう。
働いてお金を得ている。彼らの自尊心を傷つけるようなことはだめ。
今は時給200円だけど……きっと、これからもっともっと稼げるようにして見せる。
これからもっと働けるようにしてあげて、仕事を増やすのが私の仕事だ。
「カイ、帰ろう」
振り返るとカイの姿がない。
「今帰りか?」
「レッド……暇なの?」
レッドが眉根を寄せる。
「暇じゃない。今日はたまたま時間に余裕があるだけだ」
本当かなぁ……と、疑いのまなざしを顔に一瞬だけ向け、視線を下へと移動させる。
また、会えましたね、筋肉様。ふぉぉ、幸福感。
「おい、そんなに俺の体が好きだからって、そっちばっか見るなよ」
レッドが私の顎を指でくいっと上に上げた。
ぶほっ。
これ、伝説の、顎くいなのでは?まさかリアルに体験する日が来るとは。