前世知識で……
「足りないなら僕の分を分けてあげるよ。こんなに食べられないし」
「私も、パンを4つも食べられないから」
優しいなぁ。
嬉しくなっちゃう。
「全員、串本2本とパン4個よ。食べきれなかった物は持って帰るか、誰かにあげればいいわ。これは依頼料なので全員に平等に渡します」
私の言葉に孤児院の子が嬉しそうな顔をする。他の子も。
「持って帰っていいのか?」
「やった。じゃあ、パン1個と肉半分だけ食べて後は持って帰ろう」
……みんな優しいな。
「さぁ、じゃあ、食べながら話を聞いてね。依頼の内容なんだけど、私は光属性魔法研究者のアリスと言います」
肩書があったほうが分かりやすそうなので、自称だけど研究者って言ってみた。
「光属性魔法研究者?役立たずな魔法を研究する変わり者か?」
肉をほっぺにいっぱい入れた男の子が首を傾げた。
男の子の頭に手を置く。
「お口に食べ物をいっぱい詰め込んだままお話ししてはいけません」
「貴族みたいに上品に食べろっていうのか?」
ん?貴族みたいに?
いや違うよ。日本人としてはそういわれて育つから特別なことじゃないと思ってたけど……この世界じゃまさか、特別なの?
「ほ、ほら食べ物をうっかり落としたら悲しいでしょ?」
男の子がハッとして口元を抑えた。
ごくりと飲み込んでから口を開く。
「そうだよな。確かにそうだ!こんなうめー肉を口から落としたら大損だ」
「拾って食べるから大損じゃないだろ?」
「いえてる」
どっと笑いが起きた。うん、部屋に入った時の緊張した様子はもう見えない。
「あと、それから、もう一つ大事なこと。誰に役立たずだと言われても仕方がないないけれど、自分で役立たずなんて言わないで。光魔法は役立たずじゃないわ」
私の言葉に、子供たちがしんっとなった。もちろんいつかは誰にも役立たずなんて言わせないようにしたい。
「でも」
「でも、なあに?」
「皆、光魔法は……明るくするだけで何の役にも立たないって……」
「しかも、昼間のように明るくできてもちょっとの時間だし……あってもなくてもどっちだってかまわないって」
ふむふむ。
「っていうことは、明るくするだけじゃなければ役立たずって言われないのね?昼間のように明るくする時間を長くできれば役立たずって言われないのね?」」
まずはLEDで長く明るくすることはできるわけだから、役立たずという理由が一つ減る。
それから、もう一つは明るくするだけっていう言葉ね。
どう伝えたらいいのかなぁ。光ができることってたくさんある。灯台も夜間飛行する飛行機も車のヘッドライトも無いから言ってもだめよね。イルミネーションなんてあってもなくてもいいものだ。
もっと身近な……光で、この世界でも当たり前にあって、すでに役に立っているもの……。暗いところを照らす以外の……。月の光や太陽の光……の明るい以外の……。何があったかなぁ……。
もぐもぐとパンを食べながら考える。さっき、口に物を入れながら話をしてはいけないと言っておいてよかった。考える時間ができた。
あ。
ごくりと飲み込んだとき、思い出した!
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