どうも。人妻です。
「えーっと、奥様というのは?」
侍女が申し訳なさそうに首を横に振った。
「まだ目を覚まさないというのに、アルフレッド様は時間がないと……神父様を呼んで、その……」
なんだって?
まさかと思うけど……。
「結婚式が、終わっているのね?」
寝てる間に結婚式終わってたとかって、どういうことだ!
私のサインはどうした!
誓いの言葉はどうした!
指輪の交換はどうした!
誓いのキス……あ、ああ、まさか、私のファーストキスは意識のない間に終わっていたって?
……なんてことだ!
この世界の結婚のことが分からないから、実際は何をどうしたのか知らないけど、全然実感ないけど……。
目が覚めたら既婚者でした……って!
「アルフレッド様を責めないでくださいっ。魔物の討伐を終えてやっとのことで屋敷まで戻ったというのに、すぐに別の魔物に町が襲われていると聞いて……」
なるほど。魔物がよく出るとは聞いていたけれど。そんなに頻繁に出るんだ。
って、それはそうとして……。
「公爵であるアルフレッド様が自ら魔物討伐に出ていらっしゃるの?」
領主が動くなんて聞いたことがない。
私は騎士たちが見つけてくれたって言っていたから、騎士とか戦闘職の者はいるんだよね?
うー、まずいぞ。分からないことだらけだ。
前世の私が知らないだけじゃない。侯爵令嬢として育った私も知らないことが多すぎる。貴族としての教育が始まるころには屋根裏部屋生活だったし。
文字の読み書きができるから本を読んで知識を補うか?
「はい。アルフレッド様は、領内一の強さですから。強力な火魔法を扱い、魔物をあっという間に倒してくださいます」
「へー」
火魔法はどんなものなんだろう。侯爵家では攻撃魔法を目にすることはなかったからなぁ。
前世でいろいろと見たアニメやゲームの映像を思い浮かべる。
やっぱり初級はファイヤーボールとかだろうか?それとも剣に炎をまとわせてスパーンと一刀両断する系だろうか?
見てみたいなぁ。結婚して夫婦になったんなら、見せてとお願いしたら見せてもらえるかな?
「あの、それでアルフレッド様は、領内を忙しく飛び回っていらっしゃって……せっかく奥様をお迎えしたというのに……」
ん?
侍女が申し訳なさそうな顔をする。
「もしかして、次はいつ屋敷に帰って来るか分からないってことかしら?」
図星のようだ。侍女がもごもごと口を動かしている。
「あの、早ければ3日もすれば……ですが今はちょっと魔物が活性化する時期で……」
そっか。
「会えないのね……」
せっかく火魔法を見せてもらおうかと思ったけれど。まぁ、楽しみは取っておいてもいいか。どんな顔してるのかな。
王弟ってことは陛下に似てる?陛下は絵姿しか見たことないけど、妹と親しい第一王子も陛下も、見事な金髪に、青い瞳だ。
かなりの美男子だ。
アルフレッド様も美形なのかな?20歳の美男子かぁ……。私、どっちか言うと脳筋系が好きなんだよなぁ。
熊みたいな見た目なのに、めちゃくちゃ優しいみたいなギャップとか最高よね。この国ってさ、戦いの中心は魔法なものだから、脳筋系のムキムキ男子が少ないんだよ!残念すぎる!